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アマゾンの容赦なき労働哲学「壁を登れ!さもなくば去れ!」〜大の大人がみんなデスクで泣く
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44908
2015年08月29日(土) Jodi Kantor,David Streitfeld The New York Timesより
(文/ジョディ・カンター&デービッド・ストリートフェルド)
■壁にぶつかったら、壁を登れ!
月曜の朝は、アマゾンの新入社員達を一列に並ばせて、その独特な仕事のやり方をオリエンテーションする日だ。
ある従業員は当時を振り返り、前職で身に付けた「悪い習慣」は忘れるように言われたと話す。別の従業員は、容赦のないペースがゆえに「壁にぶつかった」場合は、「壁を登る」のが唯一の解決策だと言われた、と教えてくれた。
できる限り優秀な「アマゾニアン」になるには、同社のリーダーシップ原則に従って行動しなければならない。その原則とは、ラミネート加工のカードに刻まれた14のルールだ。数日後にそのルールについてのテストを受け、全問正解だった従業員には「I'm Peculiar(私は特別)」というバーチャルの賞を与えられる。これはアマゾン内で、職場の習慣を覆すものとして誇りをもって口にされる言葉だ。
アマゾンでは会議で互いのアイデアを酷評したり、長時間かつ深夜まで働くことが奨励される(深夜過ぎにeメールが送られてきた直後に、なぜ返信がないのかというメッセージが届く)。さらに、会社が「理不尽なほど高い」と豪語する基準を維持することを期待される。
内線番号表には、互いの上司宛に内密にフィードバックを送る方法が記されている。これは他人への妨害工作にかなり使われている、と社員たちは言う。(このツールでは、次のようなテキストがサンプルとして挙げられている。「私は、彼の融通の利かなさと、些細な仕事について公然と文句を言うことが気になりました」。)
月曜日に列に加わった新入社員の多くは、数年後にはいないかもしれない。勝者は2億5千万人の顧客に向けたイノベーションを考え出し、高騰する株でちょっとした財産を得る。敗者は去るか、または、年1度の淘汰、つまり「意図的なダーウィニズム」で解雇される、と元人事部長は言う。
ガンや流産、そのほか、個人的危機に遭った従業員の中には、回復の時間を与えられず、不公平な評価を受けたり、じわじわと追い出されたしたという人もいた。
「Amazon Dash Button」の一部/Amazonのwebサイトより
アマゾンが、ドローンによる配達や、トイレにボタンを設置し、それを押すと替えのトイレットペーパーを配達してくれるアマゾンダッシュボタン(Amazon Dash Button)を試す一方で、ホワイトカラーにどこまで無理強いできるかという許容限度の実験を行っていることはあまり知られていない。
ジェフ・ベゾスが創立し、現在も彼が経営するアマゾンは、他企業が少なくとも口先で言うような、皆に好まれる経営に関する決まり文句の多くを拒否する。代わりに拡大し続けるベゾスの野望を達成するために、社員を奮い立たせる仕組みを作った。多くの人はこれを「手の込んだ仕組み」と呼ぶ。
アマゾンの採用担当の第一人者であるスーザン・ハーカーは、「ここは、本当に大きなこと、革新的、画期的なことをやろうとしている企業であり、またそれは簡単には実現できません。ほぼ不可能だと言えるようなことを達成しようとすれば、当然ですが、仕事は非常に難しくなります。それに合わない人もいるのです」と述べた。
ボー・オルソンも、そうした内のひとりだ。彼は書籍のマーケティングを担当していたが、2年ともたなかった。振り返って思い出す光景といえば、オフィスで泣いている人を見る自分の姿だと言う。他の従業員も同じような状況を語っている。「会議室を出ると、大の男が顔を覆っている姿が目に入る。一緒に働いたほぼ全ての人がデスクで泣いていた」とオルソンは語った。
従業員から最大限のものを引き出す手腕により、アマゾンは以前にも増して強い会社になった。拡大し続ける会社の敷地が街の風景を変えてゆく。敷地を1000万平方フィートに拡大することで、何万人という新しい従業員が、あらゆるものを、あらゆる場所にいる、あらゆる人に売れるようになるのだ。
先月、アマゾンは、ウォルマートを上回り、アメリカで最も価値の高い小売業者となった。時価総額2,500億ドルで、フォーブスはベゾスを地上5番目のお金持ちとした。
■働きたくないけど、最高の職場
何千万人ものアメリカ人が、顧客の立場ではアマゾンを知っている。だが、その内情はほとんど知られていない。従業員には守秘義務があるのだ。
アマゾンでは地位の低い従業員も長い秘密保持契約に署名する。この記事のインタビューに応じる許可が下りたシニアレベルのマネージャーはごくわずかで、ベゾスと彼の側近への取材は却下された。
しかし、キンドルから食糧品の配達、最近の携帯電話の発売に至るまでのプロジェクトに携わった、経営陣のメンバー、人事担当の重役、マーケティングの責任者、小売りの専門家、エンジニアなど、100人以上の現役アマゾニアンと元アマゾニアンが、社風に合わせるためにとった方法を語ってくれた。彼らは、多くの人が「スリルに満ちた創造力」と呼ぶ力により、時に過酷な職場との折り合いをさまざまな面でつけてきたのだ。
インタビューで、自分の限界を超えるように働きかけてくれたからこそ活躍できた、と言う人もいた。入社後、すぐに退職した人の中には、短い期間にアマゾンで学んだことで、うまくキャリアをスタートすることができたという者もいる。会社から逃げた人の中には、あとになって自分がアマゾン流のやり方の中毒になっていたことに気づいた、と指摘する人も少なからずいた。
『The Amazon Way』を出版した同社元重役のジョン・ロスマンは、「アマゾンで働く従業員の多くは、この緊張感を持っています。つまり、働きたくないけど、最高の職場なのです」と述べた。
アマゾンの新規雇用者たちが、ある朝、オリエンテーションが始まるのを待っていた。そこにいた人の中には、自分たちが参加することになった実験を高く評価する人はあまりいないようだった。しかしただ1人、MBAをもつテキサス州出身のソバカス顔のトライアスロン選手キース・ケツルは、その意図するところを評価し顔を輝かせた。彼は、動きの鈍い古い体質の会社を退職し、早いペースで気骨のある会社に入った経緯を説明したあとにこう語った。
「葛藤がイノベーションを生むのです」。
ベテラン社員達はよく、アマゾンの手腕で桁外れな点とは、社員が自分から駆り立てられるように仕向ける方法を知っているところだと話す。「優れたアマゾニアンとはアマボットになることです」と指摘する。アマボットとはシステムと一体化するという意味だ。
そのプロセスは、毎年アマゾンのリクルーター軍団が求職者の中から何千人もの候補者を特定した時から始まる。候補者は、クリアすべき基準をどんどん高くする「挑戦者」により、さらにふるいにかけられる。挑戦者とは、最高の人材だけを必ず雇用する任務を担う、スター従業員とパートタイムのインタビュー担当者だ。
アマゾンでは、新規雇用者を定着させるために、入社1年以内に退職した場合は入社時の契約金の一部を、2年以内の場合は多額の赴任手当の一部を返済するよう要求する方法をとっている。父親の何人かは、上司や同僚から家族と過ごす時間を減らすようプレッシャーをかけられたので、すでに会社を辞めたか、もしくは離職を考えているという。
インタビューで、40代の男性たちは、自分よりも長時間働ける30代がいれば代わりにその人を雇うだろうと言い、30代は、会社は自分たちより多く働ける20代の方が絶対に望ましいと思っているということが分かった。
2人の幼い子どもがいるマックス・シプレーは今春に会社を退職したあと、アマゾンは「自分より責任がなく、独身で、仕事にフォーカスする時間が多くある大学生を雇うのだろうか」と考えたと言う。ちなみにシプレーは25歳だ。
■大量に人を雇う理由
アマゾン側は、離職率が高いという評判は誤解を招くものだと主張している。給与分析専門会社のペイスケールが2013年に実施した調査では、従業員の勤続期間の中央値は1年で、フォーチュン500社中最も短い会社の1つとなっている。アマゾンの役員たちは、勤続期間が短いのは急速に雇用を進めているからで、会社に5年以上いる従業員はわずか15%に過ぎないと指摘する。さらに、同社の離職率はテクノロジー業界の他社と変わらないとしているが、データの開示依頼は却下された。
従業員、人事担当重役、そしてリクルーターたちは、常時、人が退職する状況を説明している。フェイスブックのエンジニア担当部長ニムロッド・フーフィンは、「アマゾンで従業員の出入りの激しいパターンが見られるのは明らかで、常にそういう状態です。そのため、別の会社と比較し、アマゾンを辞めた求職者の方がやたら多くやって来ることになるわけです」と、最近のフェイスブックの投稿の中で語っている。かつては彼もアマゾンに勤務していた。
現役および元の従業員たちの多くは、こうした離職はシステムの失敗というより、むしろ論理的結果だと指摘する。つまり、会社は大量に新しい人材を雇い、その人たちはアマゾンの仕組みを動かした挙句に疲弊し、最も深くコミットしているアマゾニアンたちだけが後に残るわけだ。
アマゾンに7年勤務し、ここ2年はチェックアウト技術の監督をしているヴィジェイ・ラヴィンドランは次のように言う。
「アマゾンは、たくさんの人を使いながら、そこでスーパースターを見つけて、その人たちを定着させればいいわけです。会社は、信じられないほどの機会と報酬を組み合わせて、そのスターたちを繋ぎとめるのです。言ってみれば、砂金の選鉱みたいなものですよ」
アマゾンから流出した従業員たちは、その労働倫理のおかげで非常に市場価値が高い、と現地のリクルーターたちは言う。フェイスブックやリンクトインは最近シアトルに大きな事務所を開き、アマゾンから流出した人材の恩恵に浴している。
しかし、アマゾンの従業員は戦闘的になるような教育を受けているため、雇用に慎重になる企業もある、と指摘するリクルーターもいる。現地でのアマゾンの従業員に対する冷笑的なニックネームは「アムホールス」。好戦的でワーカホリックという意味だ。
■ 1兆ドル規模の企業にするために巨大化するアマゾン
彼らを何と呼ぼうと、その地位は急速に上昇している。
アマゾンは、サウス・レイク・ユニオンの敷地近くにある37階建てのオフィスタワーの建設を間もなく完了し、その隣に別のタワーを建設中だ。そのまた隣には第3のタワーの建設を計画中で、さらに2つの高層ビルを建てるスペースもある。3年後に工事が終了すれば、アマゾンは約5万人の従業員を収容するための十分なスペースを所有することになり、これは、ついこの間、2013年時点での敷地の3倍以上に当たる。
そこで働く新しい従業員は、アマゾンを小売業初の1兆ドル企業にするために励むことになる。おそらく、それは実現されるだろう。
しかし、この小売業者には急成長がもたらす重圧も見てとれる。東海岸で採用が行われるエントリーレベルの職種にでさえ、多くの従業員は「リンクトイン」での自分のコンタクト先の情報を企業リクルーターに公開・譲渡するよう求められる。シアトル本社だけでも、「大量採用」専門のアナリストを含め4,500以上の募集中のポストがあるのだ。
そんなに大量の新規雇用者を必要とする会社では、達成目標を縮小するかメッセージを控えめにするケースが見られる。
アマゾンは、そうではない。採用に使われている最近のビデオでは、若い女性が次のように警告している。
「あなたは、この会社に合うか合わないかのどちらかです。そして、会社に惚れ込むか、そうでないかのいずれかです。その中間はありません」
(翻訳/オフィス松村)
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