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「総務省統計局 HP」より
予想したくない東京五輪後の「深刻な事態」 不動産バブル崩壊&「住宅余り」加速の懸念
http://biz-journal.jp/2015/08/post_11300.html
2015.08.29 文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト Business Journal
東京都心の不動産市場は活況である。新築マンションはもちろん、個人投資家が狙う「収益物件」と呼ばれる数億円の1棟マンションやアパートも活発に取引されている。価格も上がっており、その分、利回りは落ちている。
不動産業者たちの合言葉は「東京五輪までは上がり続けますよ」。そう言われれば、誰もが「ああ、そうかな」と思ってしまいそうな響きがある。確かに、東京五輪は地球規模の祭典である。それが5年後の東京で開催されるのだから、不動産価格が上がらないわけがない、という漠然としたイメージを抱いてしまいがちだ。
例えば、ロンドンでは五輪開催(2012年)後も一部の不動産価格が上がり続けているという。さらにさかのぼり前回1964年の東京五輪後も、日本経済は高度成長を遂げた。その結果、「地価狂乱」という不動産価格の高騰も招いてしまった。
こうした過去をみても、「五輪開催=不動産価格上昇」というのは、いかにも受け入れやすいイメージだが、本当にそうなのだろうか。
■東京五輪建設特需は、不動産業界とは無関係
東京五輪の競技場や選手村の施設建設費は、招致時点で総額4554億円とされていたが、その後、一時はメイン会場となる新国立競技場の建設費だけで3000億円を超える見通しが明らかとなり、計画は一旦白紙になることが決定したが、全体でいったいいくらかかるのか現時点でははっきりしない。施設全体で総額1兆円程度という予測も現実味を帯びる。
もし1兆円なら、建設業界にとっては特需だろう。ただ、これは3、4年に分けて配分されるので、1年だと数千億円。それでも恐ろしい額だ。
しかし、それは建設業界の話であって、不動産業界とは直接につながらない。強いていうならば、今でもひっ迫している建設業界の人手不足が顕著になって、新築マンションやオフィスビルの建築費などは現在のまま高止まりするか、さらに上昇する可能性も考えられる。もっとも、土地やオフィス、住宅の需要が五輪によって増えるわけでもない。せいぜいホテル用地の需要が高まるくらいである。
■繰り返されたバブル
不動産の価格というものは、基本的に需要と供給の関係で決まる。特に、中長期でみると、ほとんどこの原則に収斂していく。例えば、前回の東京五輪のあとは日本経済の高度成長期に当たった。工場やオフィスビル、住宅など不動産への需要は高まるばかりで、それに対して供給が追い付いていなかった。当時、大都市圏では住宅を購入する場合はほとんどが抽選だった。なかには何十回も抽選に外れる人もいた。その住宅不足を経験したのは、団塊より少し上の世代。今ではほとんどが後期高齢者に達している。
もちろん、高度成長期には不動産価格がみるみる上昇した。「土地の値段は下がらない」という「土地神話」も生まれた。しかし、そこにはきちんとした不動産への需要があった。ある意味、価格が上昇しても当然だったのである。
その「土地神話」は、1991年のバブル崩壊で潰えたが、根底には「需要を満たしきった」という需給条件の変化があったはずだ。
その後、2005年頃から「不動産ミニバブル」という、主に大都市圏での不動産ブームが起こった。このきっかけとなったのが、外国からやってきた投機マネーだったので、別名「ファンドバブル」ともいわれている。このとき、日本国内ではちょうど団塊ジュニア世代がマイホーム購入適齢期に達していた。いってみれば、かすかには需要があったのである。しかし、このミニバブルも08年のリーマンショックで一気に弾けてしまう。
■地域限定バブル
そして今、筆者が「地域限定バブル」と呼んでいる不動産ブームが起こっている。「地域限定」と名付けるのは、不動産価格が上昇しているのは極めて限られたエリアだからだ。おそらく、日本の総面積の2%未満の地域かと推定される。
その2%がどこかというと、東京の山手線とその周縁、城南、湾岸エリアと川崎市の武蔵小杉駅周辺。横浜のみなとみらい地区、そして京都市の御所近辺と仙台市。ただ、このうち仙台市は震災復興という実際の需要で価格が上昇していると思われる。
今回の地域限定バブルの特徴は、購入の大半が実需ではなく投資であるという点。そして、組織ではなく個人単位。さらにいうならば、東アジア系の外国人がそのうちの何割かを占めている、ということだろう。このバブルを支えている彼らも「五輪までは東京の不動産価格は上がり続ける」と信じているようだ。実際に、筆者のところに不動産の購入相談にみえる方のほとんどは、「五輪まで」というフレーズを口にする。
五輪は世界的な祭典で華やかこの上ないが、それによって東京の人口や世帯数が増えるわけではない。さらにいえば、五輪開催のためにつくられた東京都中央区晴海エリアの選手村は、五輪後に6000戸規模の住宅エリアとなる。人口にして2万人くらいを収容できる大きさだ。東京都中央区の人口が現在約14万人だから、5年後には一気に約14%も増えなければならないことになるが、果たしてそんなに需要があるのか。1998年に長野で冬季五輪が開催されたが、人口が増えたとか不動産価格が上がったという話は聞かない。
■東京の衰退?
実のところ、東京に限らず日本では全国的に住宅が余っている。13年の総務省調査によると、全国の空家率は13.5%。東京でも約10.9%が空家になっている。
衝撃的な数字がある。「千代田区で約36%、中央区で約28%」。これは東京都の都心における賃貸住宅の空室率である。現状でも、東京都内では住宅の「数」は十分に足りていることを如実に表している。
一方、東京都が出している予測によると、五輪が開催される20年に東京の人口はピークに達する。そのあとはじわじわ減り始めるばかりではなく、どんどん高齢化する。さらにその10年後の30年には、住宅への需要とシンクロする世帯数も減り始める。つまり、五輪を境にして、東京の住宅は供給過剰がますます顕在化するのである。
不動産価格と五輪は直接関係ない。ただ、「五輪によって東京が繁栄する」というイメージが先行しているにすぎない。もちろん、イメージはとても大切だ。株式や不動産は「将来値上がりするだろう」という読みの元に買われる。現在、地域限定でバブルが起こっているのは、そのイメージが先行しているからだと推定できる。
しかし、もしそうだと仮定すると、五輪が終わるとどうなるのだろう。あるいは東京五輪が間近に迫って、その終わりを誰もが身近に予測できる時期になったとしたら。
大切なのは、「20年に東京で五輪が開催される」ということではない。冷静に考えなければいけないのは「20年には東京で開催される五輪とパラリンピックが確実に終わる」という慄然たる事実なのである。そのあとの東京には大したイベントは何もない。ただひたすら住む人が減り、高齢化していく大都市があるだけだ。
国が移民を認めるとか、2人目の子どもを産んだら500万円、3人目には1000万円のボーナスを支給する、などという大きな政策転換でもない限り、東京の衰退は確実である。
五輪は、わずか5年後である。5年はあっという間だ。あの東日本大震災から4年。来年の3月で丸5年だ。今、東京で不動産を買っている内外の投資家たちは、いったい何年先を考えているのだろう。
(文=榊淳司/榊マンション市場研究所主宰、住宅ジャーナリスト)
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