2. 2015年8月28日 12:03:19
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原油安で欧州エネルギー企業に減配懸念 配当利回りの急騰が映す投資家の不安 2015.8.28(金) Financial Times (2015年8月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)英BPは記憶に残る限り、2度しか減配したことがない(写真:BP p.l.c.) 原油価格の暴落で欧州の大手エネルギー企業が株主への配当カットを余儀なくされるとの不安から、これらの企業の配当利回りが急騰し、株式市場全般に対してほぼ30年ぶりの高水準に達している。 中国の景気減速懸念が引き起こした市場全般の混乱のさなか、今週の原油急落によって国際的に売買されるブレント原油の価格は6年以上なかった安値に落ち込み、石油企業の財務を一段と圧迫している。 直近の原油安は、業界全体で今年行われているコスト削減と資産売却、数十億ドルの新規プロジェクト投資の延期――いずれもキャッシュフローを強化するための措置――が配当金を守るのに十分なのかどうかという疑問を投げかけた。そのために株価が急落し、配当利回りが上昇しているわけだ。 実際、懸念のレベルが極めて高いため、幅広い欧州銘柄に対し、欧州石油メジャー5社――BP、イタリア炭化水素公社(ENI)、ロイヤル・ダッチ・シェル、ノルウェーのスタットオイル、フランスのトタル――の株式を保有するために投資家が要求する追加の利回りが28年ぶりの高水準に達したと、バーンスタイン・リサーチのアナリストらは指摘する。 この大手5社グループの配当利回りは7%に達し、市場全体の利回りの2倍を超えている。 石油大手には1バレル60〜70ドルの原油価格が必要 エネルギー投資を手掛けるあるバンカーによれば、夏休みから戻ってくる石油業界幹部にとって、配当金を守ることが「ナンバーワン」の優先事項になるという。一部の業界幹部はほんの数週間前に、悪化する不況と戦うために新たな支出削減と追加の雇用削減を発表したばかりだった。 7月下旬に、ブレント原油は1バレル53ドルで取引されており、115ドルという昨年のピークから急落していた。この相場急落は、産油国のカルテルである石油輸出国機構(OPEC)が米国の供給過剰にもかかわらず生産量を減らさないことにした昨年11月の決断によるところが大きかった。 ブレント原油はその後さらに10ドル下げて1月の安値を割り込んでおり、石油大手の売り上げと利益をさらにむしばむ恐れがある。このため配当金が危うくなりかねないのだ。 匿名を希望するあるアナリストは、現在の売り上げ予想では、石油メジャーは配当金を賄うために1バレル60〜70ドルの原油価格が必要になると言う。 「現在の水準では、これは持続可能なモデルではないが、各社には利用できる手段がいくつかある」と同氏は続ける。 「来年の1月、2月になっても原油価格がまだ40ドル台前半であれば、その時が、パニック状態が始まりかねない時だ」 石油大手が支払う配当金は、ファンドマネジャーにとって重要だ。多くのファンドマネジャーがシェルやBP、トタルなどの株式を保有する主な理由が配当金なのだ。 不況期にも守られてきた配当金 モルガン・スタンレーのアナリスト、マルタイン・ラッツ氏は「配当金は極めて重要で、投資家にとって欠かせないものだ」と言う。まれな例外を除き、配当金の支払いは業界の低迷時でさえ当てにできる確かなものだ。 業界では1社、ENIが3月に配当金を減らし、原油が前回急落した2009年と同じ措置を講じた。だが、シェルは1度も配当金を減らしたことがなく、BPは記憶にある限り、2度しか減配していない。トタルが最後に配当金を減らしたのは1981年だ。では、市場の不安はどれほど正当化されるのだろうか。 バーンスタインのアナリスト、オズワルド・クリント氏は、原油価格が今年いっぱい40ドル台半ばで推移した場合に予想される配当へのストレスのレベルを評価した。これは、2015年通年の原油平均価格が1バレル50ドルをぎりぎり上回ることになるシナリオだ。 同氏の分析は、先の5社にBGグループとスペインのレプソル、ポルトガルのガルプを加えた総合石油会社8社が、6月30日までに発表された資産売却を含め、今年1320億ドルの営業キャッシュフローを生み出すことを示している。これに対して支出――設備投資、分かっている買収、配当金――は1490億ドルだ。 キャッシュだけでは配当を賄えないが・・・ 来年については、ブレント原油が50ドルで推移すると仮定し、資産売却を除く同様の現金流入が1180億ドル、流出が1340億ドルになるという。つまり、2015年も2016年も、キャッシュだけでは配当金を賄えないということだ。年間の不足額は約170億ドルに上る。 だが、これは企業が自動的に投資家への配当金支払いを削減することを意味するわけではない。 第1に、経営者はそれほど機械的に行動しない。配当金は、現在の業績と同じくらい企業が将来に対して抱く確信を反映している。 特にシェルやBPのような企業にとっては、配当を犠牲にすることは歴史的な転換となる。シェルの最高経営責任者(CEO)、ベン・ファン・ブールデン氏は、2016年に少なくとも現行の配当金を維持すると約束している。 第2に、クリント氏は各社のバランスシート上に存在する合計1100億ドル以上の現金を引き合いに出し、石油メジャーは必要とあらば、財務力と比較的低い債務水準を利用し、配当金をカバーするために借り入れを増やすと付け加える。 これらメジャーの平均ギアリング――自己資本に対する負債の比率――は19%で、前回原油が急落した6年前の22%を下回っている。1990年代後半に原油価格が急落し、目まぐるしいM&A(合併・買収)の波を引き起こした時には、負債比率が30%近くに上り、各社が使える現金は50億ドルに満たなかった。「これらの企業は現在、経営状態がずっと健全になっている」とクリント氏は言う。 だから、減配の可能性は排除しない方がいい。だが当面は、現在の原油価格の水準では、第3四半期の決算発表がある秋にさらなるコスト削減が行われる可能性の方がずっと高そうだ。 By Christopher Adams, Energy Editor http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44648 原油価格急落を受けてOPECは分裂の危機「フラジャイル・ファイブ」の反乱が招く原油市場のカオス化 2015.8.28(金) 藤 和彦 英・イラン、双方の大使館再開 4年ぶり、核合意受け OPEC第2位の原油生産国であるイランはOPECの減産を望んでいるという。イランの首都テヘランで開いた合同記者会見で握手するフィリップ・ハモンド英外相(左)とイランのモハマドジャバド・ザリフ外相(2015年8月23日撮影)。(c)AFP/BEHROUZ MEHRI〔AFPBB News〕 中国の「ブラックマンデー」で世界の株式市場が揺れている。ブラックマンデーとは1987年10月19日に米国で起こった史上最大規模の世界的な株価大暴落のことを指す。当時のダウ30種平均の下落率は22.6%だった。
中国政府の関係者からは「人民元は2016年末までに1ドル=8元に下落する」との声が出てきており(8月25日付ブルームバーグ)、「アジア通貨危機が再び起きるのでないか」との懸念が高まっている。アジア通貨危機の発端は1994年の人民元の急激な切り下げだった。 サマーズ元米財務長官は8月24日、ブルームバーグとのインタビューで1997年のアジア通貨危機や2007年のサブプライム住宅ローン危機を例に出し、「我々は非常に深刻な状況の初期段階にいる可能性がある」と指摘した。 生産目標据え置きのOPEC、歯止めがかからない原油安 混乱する金融市場の影響を受けて、24日の米WTI原油先物は一時6.7%安の1バレル=37.75ドル、北海ブレント原油先物は一時6.5%安の同42.51ドルと急落した。ブレント価格は既にリーマン・ショック直後の最安値と同水準にまで下がっている。 原油安に歯止めがかからないのは、中国の景気後退などに加え、OPEC加盟国やロシアなどの既存の産油国と米シェール企業が熾烈な生産競争を繰り広げ、世界的な供給過剰が拡大し続けているからである。 この「ガチンコ勝負」は、世界最大の原油輸出国であるサウジアラビアの体力をも蝕み始めている。サウジアラビア政府は8年ぶりに国債を発行して話題となったが、通貨リヤルは世界情勢のリスクに最もさらされている通貨の1つに数えられるようになった(8月21日付ブルームバーグ)。 OPECは昨年9月の総会で「市場シェアを維持するために生産目標を据え置く」との方針を決定した。今年6月の総会でも「原油価格引き上げのための減産は行わない」ことを改めて確認している。当時は世界的な需要増に押され原油価格は2015年末に向け上昇していくとの見方が強かった。その後、中国需要の見通しに対する懸念が台頭し、原油価格が再び下落基調になったが、サウジアラビアをはじめとする湾岸諸国は「中国は引き続き原油を輸入し在庫を積み上げていることから、世界的な需要は今後も堅調に推移し、来年は原油価格が1バレル=60ドルまで再び上昇する」との見方を変えていない。 しかし今の中国にリーマン・ショック直後のような役割を期待することはできない。8月24日、中国発展改革委員会は「中国経済は依然として多くの困難と課題に直面しており、下振れ圧力はより明確になっている」との認識を示した。中国メデイアが「中国はこれまで世界経済を安定させる上で重要な役割を担ってきたものの、その結果として中国経済はぼろぼろになった」と報じているように、中国はリーマン・ショック後の経済対策の負の遺産にもがき苦しんでいる。「中国は今年戦略石油備蓄のために原油購入を引き続き増加させる」との期待もあるが、前回のレポート(「天津大爆発でさらに強まる原油価格の下押し圧力」)で示したとおり、天津の大爆発事故で戦略石油備蓄の購入量は大きく減少するだろう。 OPECの原油生産量を見ると、8月に入り、イラクの原油輸出量が日量25万バレル減少していることから、数カ月続いた増産傾向が途切れる見通しが高まっている(8月20日付ロイター)。だが一方で、7月に突然生産量を減らしたサウジアラビアが再び増産している可能性があり、予断を許さない状況が続いている。 現在のOPECの方針は、サウジアラビアが米シェール企業の採算を圧迫させることを目的として策定されたものとされている。しかし、シェール企業の原油生産量がなかなか減少しないことから、世界的な供給過剰は縮小するどころか拡大し続けている。 シェール企業の大量倒産が間近に? 米国の状況を見ると、米石油サービス大手のベーカー・ヒューズが8月21日に発表した米原油生産のリグ数は674基となり、前週末に比べて2基増加した。こうしたこともあり、原油価格が下げ足を速める中でも、米国の原油生産はほとんど減少していない(2014年10月10日の1609基をピークに減少したが、2015年6月26日の628基を底に緩やかな上昇基調に転じている)。 生産量が減らないのはシェール企業の生産性の向上の成果とする見方があるが、最近リグ稼働数が増加している鉱区は、格段に生産コストの低い最優良の部類のものが多いとの指摘もある。原油価格の下値の目途が見えない中、虎の子の最優良油田を開発せざるを得ないシェール企業の苦しい懐事情が垣間見える。 8月21日付の日本経済新聞によれば、先行き懸念で株価が1ドルを下回るシェール企業が増加している。低格付けのシェール企業は費用を抑え資産売却に踏み切るなどして現金確保を急いでいるが、買い手が思うように見つからない。直近の株式市場の混乱で株価も下落し続けている。 ガソリン需要が2007年以来の高水準になっていることは好材料だが、9月上旬のレイバーデーの祝日後には減少する見込みである。製油所も秋から定期点検のため稼動停止するところが出てくることから、需要サイドは軟調に推移するだろう。 米国政府は条件付きでメキシコへの原油輸出を解禁したが、原油の余剰在庫が1億バレルに達していることから原油輸出の解禁への期待がますます高まっている。輸出水準を設定することを条件に原油輸出を解禁する法案が成立するとの観測も出ている(8月22日付ブルームバーグ)。法案が成立すれば、米国内の需給バランスにはプラスでも国際石油市場にとっては攪乱要因がまた1つ増えることになるかもしれない。 OPEC加盟国が指折り数えて待っている「シェール企業の大量倒産」は、来月以降、現実のものになりそうな気配だ。だが、米国の原油生産が減少する効果より、ジャンク債市場のデフォルト多発がもたらす世界の金融市場への悪影響の方が大きく、原油需要のさらなる減少につながるのではないだろうか。 政情が悪化するOPECの「フラジャイル・ファイブ」 OPECに話題を戻すと、加盟国の間で「生産能力をフル稼動してシェール企業をつぶす計画は戦略的に誤りだった」との不満が高まってきている。 アルジェリアのエネルギー相は8月上旬「OPECが原油価格の下落について協議するため、臨時総会を開催する可能性がある」と明らかにした。アルジェリアと同様に財政が火の車であるベネズエラのマドウロ大統領も、原油価格急落に対処するためにOPECに対して緊急会合の開催とロシアとの政策調整を働きかけていた。 一方、湾岸諸国の意向を支持するとされているOPEC幹部は、臨時総会の開催の可能性を即座に否定していた。 しかし、OPECが市場シェアを頑なに守ろうとする方針を続ければ、大きな代償を伴うのではないかとの危惧が出始めている。 8月18日、カナダの投資銀行であるRBCキャピタル・マーケッツ(RBC)はOPEC加盟国のうちアルジェリア・イラク・リビア・ナイジェリア・ベネズエラの5カ国を「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5カ国)」として警告を発している。 フラジャイル・ファイブとは、もともと米モルガン・スタンレーが米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和縮小に伴って下落が進みやすい新興国通貨の総称として名付けたものである。ブラジルレアル、インドルピー、インドネシアルピア、トルコリラ、南アフリカランドの5通貨(「脆弱な5通貨」)を指していた。これをRBCが、政情が悪化するリスクを抱えるOPEC加盟国に当てはめた。 原油生産のコストが高い国が多いフラジャイル・ファイブは、増産による収入増加が見込めないため、12月4日の次回の定例総会まで待っていたら「ゆでガエル」になってしまう可能性が高い。フラジャイル・ファイブの「メンバー」であるリビアやナイジェリアは具体的なアクションは起こしていないが、アルジェリアやベネズエラと同様の意向だろう(イラクはサウジアラビアと並んで増産を続けており、臨時総会の開催には後ろ向きである)。 サウジとフラジャイル諸国の相克 OPECの臨時総会を開催するためには加盟12カ国の過半数の要請が必要となる。そのため、これまで開催の目途が経っていなかったわけだが、8月23日、イランのザンギャネ石油相は、「OPECの臨時総会を開くことが原油価格の安定化に効果的な可能性がある」として臨時総会の開催を支持するとの見解を明らかにした。 2015年7月の核合意後、欧米の大手メジャーの間で原油埋蔵量世界第4位のイランにおける原油開発への関心が高まっている。8月23日、ハモンド英外相は英BPや英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルの幹部とともにイランを訪問した。今後、世界各国は次々と「イラン詣で」を行うことだろう。 2012年7月の欧米諸国の金融制裁が実施される以前は、イランはOPEC第2位の原油生産国であり、経済立て直しのためになんとしてでも原油を増産したいと考えている。しかし最大の懸念材料は、OPEC内で同国が適切な市場シェアを確保できるかということである。イランは湾岸諸国に比べて生産コストが高いので、かねてより原油価格を押し上げる減産措置に関心が高く、OPECの臨時総会の開催を求めるのは当然な動きだ。 イランという強力な味方を得たフラジャイル諸国は、残り2カ国(アンゴラとエクアドル)の同意を取り付ければ、規則上は緊急会合開催に漕ぎ着けられる。だが、サウジアラビアが支持しない限り、臨時総会が開催される可能性は低いとの見方が強い。市場関係者から注目を集めるサウジアラビアだが、3月に開始したイエメン空爆が重荷になりつつある。イランメデイアによれば、8月下旬にサウジアラビア南部でイエメンからの攻撃で軍司令官が死亡するなどイエメン紛争情勢が悪化しており、原油増産による戦費調達の必要性がますます高まっている。 しかしOPECの雄であるサウジアラビアが増産し続ければ、フラジャイル諸国との亀裂が高まることは確実である。サウジアラビアは1986年の逆オイルショック直前にスイングプロデユーサー(需給調整役)の役割を放棄した。ここに来て、今一度スイングプロデユーサーに復帰するという決定を下すことができるだろうか。可能性は低いかもしれないが、それができなければ、1960年に設立したOPECは創設以来の危機に直面するだろう。 第1次石油危機直後50%を超えていたOPECの原油生産シェアは現在30%台である。だが世界の原油市場の需給調整役としての機能を緩やかに果たしている効果は大きい。OPECが空中分解し、加盟国が我先に増産をするような事態になれば、世界の原油市場はカオス化する。価格は底なし沼に落ちるような状態に陥るだろう。 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44636
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