http://www.asyura2.com/15/hasan100/msg/164.html
Tweet |
8月25日の株価 〔PHOTO〕gettyimages
大荒れのマーケットはどう収拾するのか? 中国経済悲観論を素直に反映する局面は長くは続かない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/44939
2015年08月27日(木) 安達 誠司「講座:ビジネスに役立つ世界経済」 現代ビジネス
■現在のマーケットの混乱は何が原因か
今週のマーケットは大荒れである。株式市場だけではなく、為替市場も激しく乱高下している。
これまで下落基調で推移し何度か1ドル=125円にトライしてきたドル円相場も、瞬間的にだが、1ドル=116円台に急騰した。実態はよくわからないが、外為市場のキャリートレードで「日本円売り他国通貨買い(現在は米ドルが主流と思われる)」のポジションをとっていた投資家は大きな損失を被ったことだろう。
また、25日の日本株市場も乱高下した。JASDAQ上場の中小型株の中には、1日で10%以上下落した銘柄も少なくなかったので、「好業績銘柄」という誘い文句に乗って中小型株に投資していた投資家も大きな損失を被った可能性がある。
さて、今回のマーケットの乱高下の主な理由は、中国経済の減速だといわれている。特に、株式市場の乱調の直接的な原因は、中国の政策当局が何の前ぶれもなく、人民元レートを断続的に切り下げたことだった。
中国の場合、人民元レートの切り下げは金融緩和を意味することが多いので、通常であれば、株式市場にとってはプラスに働くはずである。だが、メディアの報道では、今回の通貨切り下げが、中国経済の実態が極めて悪いことの象徴のように捉えられ、逆に世界中の株価の下げ要因になってしまったということである。
だが、中国経済の現状についての懸念は、すでに様々なメディアを通じて喧伝されていた。たぶん、投資家の中で中国のGDP統計を信じている者は皆無であろうし、信頼できる経済統計を総合すると、すでにマイナス成長に陥っている可能性も指摘されて久しい。世界中の投資家が、ほんの3%程度の人民元の切り下げで、「目を覚ました」とは考えにくいのである。
そこで、筆者は、今回のマーケットの混乱は、欧米を中心として、「価格先導力」のある投資家(ひとまとめにするのはいかがなものかと思うが、わかりやすくいえば「有力ヘッジファンド」)の利益確定、もしくは換金売りが、彼らが取引しているブローカー等を通じて多くの投資家の間に伝播したのではないかと考えている。
9月の利上げ実施が確実視されていたが・・・ 〔PHOTO〕gettyimages
■マーケットは必ずしもコンセンサスでは動かない
例えば、欧米のヘッジファンドの決算期は5月と11月といわれている。まだ8月末なので、決算期には時間があるが、今回は、9月中旬に米国で利上げが実施される可能性が高まっていた点が重要であると考える。
米国の利上げをマーケットがどのように織り込んでいくかを見通すのはかなり難しい。通常、利上げ局面に入ると株価は調整する。そのため、米国の利上げで株価は調整すると考えるのは自然な成り行きである。だが、過去の例をみても、利上げ局面の初期段階でいきなり株価が調整することはむしろ稀である。
利上げ局面では、当初、株価は上昇を続けるが、それをみた政策当局が断続的に利上げを実施し、政策金利の上昇が累積すると突然、マーケットが崩れることがほとんどである。特に難しいのは、何回、もしくは何%利上げすれば、株価調整の「閾値」に到達するかというのは、その時々の状況によって大きく異なり、証券会社のレポートにありがちな、ありきたりの定量分析で正確に予測することはとてもできない。
特に今回は、5年以上続いたゼロ金利・量的緩和政策からの脱却という、極めて稀な利上げ局面である。もしも9月に利上げが実施された場合、マーケットにどのような影響が及ぶかは誰にもわからない。さらにいえば、FRBが7月に議会に提出した「金融政策レポート」の年末のFFレートの最適値の分布をみると、多くのFOMCメンバー、およびその関係者が年内2回以上の利上げをすべきであると考えていることが推測された。
そうであれば、利上げ実施が間近に迫る中、そこそこのパフォーマンスを上げてきたヘッジファンド等は、9月の利上げ前、できるだけ早めに利益を確定するとともに、大幅下落のリスクに備えて流動性を確保しておこうと考えたとしても不思議はない。そして、そのような行動をとるための絶好のタイミングを中国株市場が提供した、という構図ではなかったかと考える(もちろん、これは筆者の想像に過ぎないが)。
「マーケットコンセンサス」を重視する投資家は多いが、マーケットは必ずしもコンセンサスでは動かない。筆者の印象では、ごく少数の「先導者(場合によっては扇動者といってもいいかもしれない)」の仕掛けが、ブローカー(自己売買を含む)を通じてマーケットに伝播し、多くの「コピーキャット(模倣者)」が生み出された場合に、大きなうねりとなってマーケットが動くことが多いように感じる。
そして、「コピーキャット」をどれだけ多く生み出すかは、そのシナリオがどの程度、市場の不安心理を増幅させるかにかかっており、その点で、不透明な中国経済はきわめて説得力を持っていたのではないかと考える(さらにいえば、政変やテロではないかとの憶測をもたらした天津の爆発事故が、その動きに拍車をかけたのではないか)。
25日、上海総合指数はついに3000ポイントの大台を割り込んだ 〔PHOTO〕gettyimages
■今後のマーケットを動かす材料は?
中国については、様々なネガティブなニュースが流れている。現時点では、世界中のほとんどの投資家が中国経済について、現状だけではなく、先行きに対しても悲観的であろうし、その結果として、中国株にはまだまだ下げ余地があると考えているはずだ。
また、今後、中国経済が大きな下げトレンドに入るとすれば、中国を核として緊密な製造業のサプライチェーンを構築してきた東アジアの新興国(ASEAN、NIES)、および、中国を最大の商売相手としてきた資源国の経済も停滞することが必至となる。そのため、現段階で十二分に低下している資源価格や新興国通貨にもさらなる下落余地があるというのが、マーケットのコンセンサスになりつつあると想像できる。
だが、コンセンサスが形成され、しかも、それが思考の必要のない極めてわかりやすいストーリーであった場合には、すでに「織り込み済み」となり、もはやマーケットに対する影響力をなくしているケースも多々ある。
よって、中国悲観シナリオがメディア等で頻繁に流れるようになった段階で、マーケットを動かす材料は別のものに移行している可能性が高い(あくまでも例だが、悲観論一色の中で、国際商品市況や新興国通貨が逆行高となるケースなど)。
逆に、中国で何らかのさらなる政策対応が実施され、中国経済が底を打ち、回復するというストーリーが出てきた場合には、現在のような世界的な混乱が、さらに続く可能性がある。
(中国経済が通常の政策対応で回復するとは思えない理由については、7月23日付コラム『中国経済はこの先どう動く!? 日本の経済史から考えられる二つのシナリオ』、および8月13日付コラム『突然の「人民元切り下げ」は何を意図しているのか? マーケットの反応と中長期的な展望』を参照のこと)
■米国のマネタリーベースの推移に注目
もう一つ、このような資本フローを考える上での重要な要因は、米国の利上げである。今回の世界的なマーケットの混乱によって、9月利上げ説は急速に後退している。だが、単に、9月から10月に先送りされただけでは、資本フローの動きは変わらないだろう。
もし仮に、利上げが12月、もしくは年明け以降に先送りされるという見通しに確信が生じた場合には、先導的な投資家たちは次のアクションをとる可能性が高まるわけだが、それを何で確かめればいいのだろうか。
これは大変難しい問題だが、筆者は、現在、トレンドが横ばいで推移している米国のマネタリーベースが再び拡大基調に戻ることではないかと考える。いくつかの統計をみると、FRBは、本格的な利上げ局面でスムーズに政策金利を上昇させることができるよう、リバースレポ等の手段を通じて、マネタリーベース(もしくは超過準備)の吸収を実験的に実施しているようにみえる。このような「実験的な資金吸収」の動きがなくなることが、利上げ見送りを確証させるサインになるのではなかろうか。
以上をまとめると、筆者は中国経済、および、それを取り巻く新興国経済の先行きに関して悲観的であるが、マーケットがそれを素直に反映して動く局面はそう長続きせず、マーケットの動きとマクロ経済の動きが正反対となる可能性をそろそろ考えておいたほうがよいのではないか。
そして、そのきっかけとなるのは、米国の「利上げ先送り」であり、その利上げ先送りのサインはマネタリーベースの動きに出てくるということである(もっとも、来週、米国株式市場が急上昇するようなことがあれば、9月利上げ説が復活することになるが)。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 経世済民100掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。