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中国政府は単なる株式バブルの破裂にもうまく対処できていないように見える〔AFPBB News〕
中国について心配することが妥当な理由 問題は中国株の下落そのものではなく、それが示唆すること
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44641
2015.8.27 Financial Times JBpress
(2015年8月26日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
筆者は、「ミスター・マーケット」――投資のグル(導師)、ベンジャミン・グレアムが考え出した躁うつ病患者*1――の行動を理解できるほど聡明ではないし、理解できていると考えるほど愚かでもない。
しかし、最近のミスター・マーケットは間違いなくうつ状態にある。その背景には中国に対する懸念があるようだ。
ミスター・マーケットが心配するのはもっともなことなのだろうか。端的に言えば、イエスだ。
心配する価値があることとないことの区別ははっきり付けなければならない。中国の株式市場の下落は後者にあたる。心配する価値があるのは、単なる株式バブルの破裂にもうまく対処できていないように見える中国政府当局が直面している難問の大きさだ。
■中国主導で調整局面に入った株式市場
株式市場は確かに、中国がリードする形で調整局面に入っている。上海総合指数は6月につけた高値から今週火曜日(8月25日)にかけて43%下落した。だが、それでも2014年初めの水準に比べれば50%高い。ここ10年で2度目となる中国株バブルの崩壊はまだ終わっていないと思われる。
中国の株式市場は普通の市場ではない。「自分よりも愚かなプレーヤー」に割高なチップを手遅れになる前に渡してしまおうと全員が願っているカジノのような面が、この世界のほとんどの市場よりも強い。そういう市場はボラティリティー(変動性)が極端に高くなるのが常だ。だが、この気まぐれな動きは、中国経済全体についてほとんど何も物語らない。
それでも、中国市場でいま起こっていることは、関連し合う2つの点で非常に重要な意味を持っている。
*1=そう状態とうつ状態を繰り返すかのように上昇と下落を繰り返す株式市場を擬人化したもの
■中国当局の行動が意味すること
第1の点は、中国政府当局がバブル崩壊を阻止する取り組み(意外なことではないが、成功していない)にかなりの量の資源と、さらには政治の威信まで賭ける決断を下したこと。第2の点は、当局は経済が心配だったからこそそこまでやったに違いないということだ。
成功する望みのない行動に出るほど当局が心配しているのであれば、我々も心配すべきだろう。
中国当局の行動が懸念される理由はこれだけではない。8月11日に行われた人民元切り下げの決断も懸念すべき材料だ。米ドルに対する切り下げ率は今のところ2.8%に過ぎず、切り下げ自体はさして重要ではない。
しかし、この行動には重要な意味が隠されている。第1に、中国当局は、25日に行ったような金利引き下げの余地を欲しがっている。そのこと自体、当局が経済の状態を懸念していることを表している。
もう1つ考えられる意味合いは、中国当局が輸出主導の経済成長を復活させようとしている可能性がある、ということだ。もしそんなことになれば世界経済に破滅的な影響が及ぶため、筆者自身は信じがたいことだと考えているが、少なくとも、不安定性をもたらすそのような可能性について心配すること自体は妥当だろう。
考えられる最後の意味合いは、中国当局は資本逃避の容認に備えているということだ。もしその通りなら、米国は自分で仕掛けた罠にかかってしまうことになる。米国政府は以前から、中国に資本勘定の自由化を求めてきた。それゆえ、人民元の下落という短期的な不安定要因を容認せざるを得ないかもしれない。
■問題は、投資主導の経済から消費主体の経済へのシフト
最近の出来事は、より深刻な懸念という文脈で見ていかねばならない。問題は、中国を投資主導の経済から消費主体の経済にシフトするという仕事を、総需要の水準を維持しながら成し遂げる能力と意志が中国政府当局にあるか否か、である。
もしその能力があるのなら、中国経済は6〜7%の経済成長も維持するだろう。その能力がないのであれば、経済と政治が不安定化することになる。
中国の景気はすでに減速している。「新常態(ニューノーマル)」の話はこの現実を認識している。しかし、アナリストらが独自に予想した経済成長率を調査会社コンセンサス・エコノミクスが集計したところ、2015年第4四半期の予想成長率(前年比)の平均はわずか5.3%になった。
このような数字が正しいと仮定してみよう。
政府の公式統計によれば、2014年の総固定資本形成は国内総生産(GDP)の44%を占めていた。
投資に関する統計はGDP統計よりも正確である可能性が高い。
しかし、GDPの44%を投資に回していながら5%しか成長しないというのは、経済にとって理にかなった行動なのだろうか。
答えはノーだ。このデータは、投資の限界収益率がマイナスとは言わないまでもかなり低い値であることを示唆している。もしその通りであれば、投資は急減する恐れがある。
■総需要の不足への懸念は今に始まったことではないが・・・
ムダな投資が真っ先にカットされるのであれば、投資が急減しても中国の潜在成長率は低下しないかもしれない。しかし、需要は急減するだろう。中国当局がこれまでやってきていることはすべて、需要の急減こそが当局の心配の種であることを示唆している。
総需要が不足するという心配は目新しいものではない。西側諸国で金融危機が起こり、中国の輸出への需要が大幅に落ち込んだ時からずっと強く懸念されていることだ。この輸出の急減を受けて、中国は独自の、借り入れを燃料とする投資ブームに乗り出したのだ。
目覚ましいことに(そして心配なことに)、GDPに占める投資の割合は高まり、それにつれて潜在的産出量の伸び率は低下した。長期的に見れば、これは持続可能な組み合わせではなかった。
■3つの大きな頭痛の種
こうしたことから、中国政府当局は経済の面で頭の痛い課題を3つ抱えることになっている。
第1の課題は、金融危機を回避しながら、過去の金融行動の行き過ぎによる遺物を片付けること。
第2の課題は、官民の消費への依存度を高めつつ、異常な水準にある投資への依存度を低くできるように経済を作り直すことだ。
そして第3の問題は、総需要のダイナミックな拡大を持続させながらこれらの課題をすべて達成することである。
昨今の出来事が重要なのは、中国当局がこの3つの課題を解決する方法をまだ見いだせていないことを示唆しているからだ。さらに悪いことに、当局がこの7年間に講じてきた弥縫策により、状況はさらに悪化してしまっている。
ひょっとしたら、今後の情勢が厳しいこと、そして当局が実際に選ぶかもしれない方策の中には不安定さを高めるものも混じっていることを、ミスター・マーケットはすでに把握しているのかもしれない。具体的には、人民元の切り下げ、超低金利、さらには金融の量的緩和などだ。
もしこの見方が正しいのであれば、市場の心配はばかげたものではないかもしれないことになる。世界の貯蓄過剰はさらにひどくなる恐れがある。もし本当にひどくなったら、全員が影響を受けることになるだろう。
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