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東京都内で掲示される株価を見つめる投資家(2015年8月24日撮影、資料写真)。(c)AFP/Yoshikazu TSUNO〔AFPBB News〕
世界同時株安は資産バブルの「終わりの始まり」 原油暴落で「シェール革命」が崩壊する
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44642
2015.8.27 池田 信夫 JBpress
上海株価指数の暴落で始まった世界同時株安は、いったん落ち着きを取り戻したが、これはきっかけに過ぎない。1929年に起こった「暗黒の木曜日」と呼ばれる株価暴落は、その後の大恐慌の引き金だった。
本質的な問題は当時の金余りによる過剰債務であり、株価の暴落した企業の債務不履行で起こった金融システムの崩壊だった。株価は株主が損したら終わりだが、金融機関が破綻すると経済全体が大混乱に陥ることは、2009年以降われわれが経験した通りだ。
■金余りの生んだ「シェールバブル」の崩壊
リーマンショックの原因は、FRB(米連邦準備制度理事会)の低金利政策で、サブプライムローンと呼ばれる住宅ジャンク債(格付けの低い債券)が過剰に発行されたことだった。今回の株安で打撃を受けそうな産業として、多くの専門家が指摘しているのは、シェールオイル産業である。
アメリカのシェールオイルの採算分岐点は1バレル60ドル程度といわれるが、8月26日現在の原油価格は39.5ドル。この水準で採算の取れるシェール油田は、IEA(世界エネルギー機関)によれば全米の5%に満たない。
もちろんこの価格水準がずっと続くとは限らないし、石油メジャーのような大手企業なら、一時的な採算割れは耐えられる。しかしシェール油田は1基10億円ぐらいでつくれるため、自己資本の小さなベンチャー企業が多く、資金が枯渇するとたちまち経営が破綻する。
Economist誌の記事によれば、テキサス州のシェール企業はほとんど操業していないが、全米62のシェール企業の負債総額は2350億ドルと、図のように年間売り上げの5倍で、全米では5700億ドルがシェール企業に投資されている。
アメリカのシェール企業の債務残高と債務/売上比率(右軸)出所:Economist
世界最大の投資ファンドとして知られるKKRもオクラホマ州のシェール企業が破綻して50億ドルの損失を出し、伊藤忠商事も10億ドルの損失を出した。今回の世界同時株安をきっかけに、債券市場が崩れるおそれがある。
■サブプライム危機の再来か
問題はシェール企業だけではない。リーマンショック以後、FRBの続けたゼロ金利政策で、過剰流動性が発生し、昨年は3500億ドル以上のジャンク債が発行され、過去最高となった。その残高も2兆5000億ドルと、サブプライムローンのピークだった1億3000万ドルをはるかに超えている。
シェール企業はCLO(ローン担保証券)という証券化商品で資金を調達しているので、投資家はパッケージ化されたCLOに警戒を持ち始めた。その中にどれだけシェール企業という「毒」が入っているか分からないからだ。
これはサブプライムローンと同じだ。当時も投資銀行は「個々のサブプライムローンのリスクは大きいが、いろいろな証券化商品に薄く広く混ぜているのでリスクは回避できる」と説明していた。
これは多くの債務者が独立に破産する場合には正しいが、すべての住宅債券の価格が同時に暴落すると、リスクは回避できない。同じ問題がシェール企業にも生じている。個々のベンチャー企業のリスクは高いが、それをCLOで薄めればリスクも薄まるはずだった。
しかし原油価格の暴落で、すべての石油会社が赤字になると、リスクは薄まらない。投資銀行の発行する証券化商品にシェール企業の毒が混じっていることが分かると、すべてのCLOが売られるパニックが起こる。
■バブルは別の市場で同じパターンを繰り返す
このようにいま起こっている異変は、リーマンショック後の株価暴落とほとんど同じだが、市場が違う。バブルは10年に1度ぐらい繰り返すが、そのつど別の市場で、以前とはまったく違う形で、しかも同じパターンで起こるのだ。
2000年代の初めにはITバブルが起こり、その後の不況を回復するためにFRBは低金利政策を続けた。その結果、金余りで住宅バブルになり、リーマンショックが起こった。このように不況→金融緩和→金余り→バブル→崩壊というパターンが繰り返される。
住宅バブルがいったん崩壊すると、2度と同じ市場でバブルは起こらない。日本の場合も90年代にバブルを経験したため、今でも不動産業者は投資に慎重だ。バブルはまったく別の市場で「今度は違う」という錯覚で起こる、とラインハート=ロゴフはいう(『国家は破綻する』)。
そして日本で「今度は違う」と思われているのは、国債である。その残高は約900兆円だが、そのうち300兆円を日銀が保有しているので、アメリカのジャンク債と同列に論じることはできない。しかし今の0.3%前後という長期金利は「国債バブル」であり、それが崩壊したときの影響はジャンク債の比ではない。
さらに大きな問題は、今回の震源地となった中国経済がどこまで悪化しているか、分からないことだ。リーマンショックの場合は、アメリカの市場ですべて情報が公開されたので、日本も対応しやすかったが、中国の場合は株式市場よりも「シャドーバンキング」と呼ばれる投資ファンドの過剰債務問題のほうが大きいといわれている。
しかしこうした投資ファンドは半国営になっていることが多く、債務超過になっても政府が穴埋めして延命するので、危機が表面化しにくい。それが個人投資家の多い上海市場で表面化したが、ここでも中国政府が株価を買い支えているので、実態が分かりにくい。
これは1990年代の日本の不良債権問題と似ている。あのときも90年代半ばにはほとんどの銀行が債務超過だったが、「大型合併」や資本注入などと称して公的資金を投入し、結果的には純損失100兆円のうち46兆円を国費で埋めた。
しかし今回の中国の金融危機は2008年のリーマンショックの後の破綻を隠蔽することから始まったので、規模はそれより大きいだろう。そして日本の国債のリスクは、史上最大といってよい。
金余りはバブルを生み、バブルは先送りすればするほど大きくなり、そして永遠に続いたバブルは1つもない、というのが歴史の教訓である。中国のバブル崩壊は、日本も含む金余りバブルの「終わりの始まり」だろう。
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