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原油価格は再び下げ足を速めている(写真:BP p.l.c.)
解説:総崩れしたコモディティー相場 原油、銅、アルミなどが金融危機以来の安値、中国ショックだけじゃない
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/44637
2015.8.27 Financial Times JBpress
(2015年8月24日付 英FT.com)
コモディティー(商品)価格は先の金融危機以来の安値水準まで落ち込み、少なくとも1つの指標では、今世紀の最安値を記録している。天然資源セクターは中国の成長鈍化に対する不安に巻き込まれたが、個々のコモディティーには、まだ独自の市場力学がある。何が起きているのか、以下に簡単なガイドをまとめた。
■原油■
石油の過剰供給が当面続く兆しが強まったことから、トレーダーと投資家が落ち着きを失っている。
しかし、本質的な不安を広げているのは中国だ。中国はこの10年間、他のどの国よりも石油需要の伸びに大きく貢献してきた。
このため、中国経済のいかなる減速も原油消費にとって凶報を意味する。
また、米国のシェールオイル産業は予想以上に抵抗力を示してきた。石油輸出国機構(OPEC)に加盟していない他の産油国の生産量も同様だ。一方、サウジアラビアとイラクのようなOPEC加盟国は、過去最高に近いペースで石油を産出している。
9月に差し掛かかろうとしている今、石油業界は石油精製施設のメンテナンスに目を光らせている。秋季の数カ月には、季節的な補修や改修作業が石油需要を押し下げる傾向があるからだ。
BMIリサーチのアナリストたちは、原油安に対するヘッジファンドの賭けの急増が「ここ数週間、ブレント原油とWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油の双方に大きな下落圧力をかけた」と指摘。2014年6月に始まった原油価格の暴落は「まだ続く」と話している。
需要は今年の年初から上向いたものの、これまでのところ追加供給量を吸収するまでには至っていない。アナリストらは、今年下半期の余剰生産が日量200万バレルに達すると推測している。
「この数週間、マクロ経済の状況が悪化していることから、市場はリバランス(再均衡)するために需要の改善だけに頼るわけにはいかない」
ロンドンを拠点とするコンサルティング会社エナジー・アスペクツのアナリストらはこう話す。
さらに、原油価格が反騰を演じるためには、「すべての産油国から意味のある供給反応」が示されることが必要だと付け加えた。
■銅■
中国における今年の銅需要の伸びは2〜3%程度で、多くのアナリストの当初予測より鈍い。この需要の変化を見込んで、中国のヘッジファンドは1月に銅価格を急激に押し下げた。今月、配線から電力ケーブルまで何にでも使われる銅は6年ぶりの安値を記録した。
アナリストらは、7月に精製銅の輸入が2%伸びるなど、中国における現物取引はかなり活発だと話しているが、需要全体は依然として比較的弱い。
銅の生産者であり商社でもあるグレンコアは先週、銅の在庫は過去最低水準にあり、ヘッジファンドが市場を押し下げたと主張した。「普通は在庫が少なければ価格は高いものだ」と、アイバン・グラゼンバーグ最高経営責任者(CEO)は語った。
しかし、多くのトレーダーは中国のインフラ投資の減速、特に電力産業(銅の消費量が最も多い産業の1つ)の投資減速を引き合いに出す。
銅は生産原価より低い価格で取引されており、豪マッコーリー・グループは、現在の価格では約17%の鉱山が赤字を出していると見ている。これが鉱山の減産につながり、やがては価格を押し上げる可能性がある。
長期的には、古い生産活動に取って代わる新しい大規模鉱山が少ないとアナリストらは指摘する。
銅生産で世界最大手のチリの銅公社コデルコは、現在の生産量を維持するためだけに数十億ドルの投資を行っている。
■アルミニウム■
アルミニウム価格は今年、中国からの大量の輸出に襲われ、6年ぶりの安値で取引されている。
しかし、中国のアルミニウム企業がアルミを輸出する動機がほぼ間違いなく減ったとはいえ、どの企業も減産したがらないことから、アルミニウム市場はまだ過剰供給が続いている。
アルミニウム協会によると、今年上半期に世界のアルミニウム供給は10.3%以上増加した。コンサルティング企業CRUによると、中国では、閉鎖もあったが、多くの製錬所が生産能力を高めており、西部の新疆自治区のアルミニウム生産は7月に36.5%増加したという。
アナリストらは、中国が「顧客から競争相手へ」と変貌を遂げるにつれて、拡大する中国の生産量が西側の生産者を廃業に追い込むと予想している。
「中国で建設された(そして今も建設されてる)莫大な過剰生産能力を考えると、アルミニウムの行く手は非常に辛い道のりになると感じている」。英金融企業インベステックはこう語る。「中国の新しいアルミニウム製錬所は最先端を行っており、生産原価が非常に低い。だから、これが今後数年で、『西側』の生産設備の大規模廃業につながると見ている」
■鉄鉱石■
鉄鉱石価格はこの2カ月、ベースメタル(卑金属)より健闘しており、7月初旬に最安値を記録してから約25%反騰した。
1トン当たり56ドルまで価格が回復したのは、ブラジルとオーストラリアからの輸出が減少したためだ。だが、データ提供企業スチール・インデックスによると、供給が引き続き需要を上回っていることから、鉄鉱石価格はまだ年初より22%安いという。
中国で売買されている鉄鉱石の先物は8月24日に4%下落した。取引所のルールで定められた1日の値幅制限いっぱいの下げだ。
総体的にコストが高い鉱山はプレッシャーを感じているが、世界最大級の鉱業会社は生産を減らす兆しを見せていない。鉱業大手リオ・ティントは今年、中国向けの鉄鉱石販売を昨年比で2割増やす計画だと先週述べた。
■金■
金は今月、米連邦準備理事会(FRB)が9月の利上げを見送るとの期待感の高まりから恩恵を受けた。さらに、世界の株式市場が総崩れとなる中、現金の避難先を探す投資家にも後押しされ、金は今月、6%上昇している。
しかし金は24日、一定の圧力にさらされた。一部の投資家が他の市場でのマージンコール(証拠金請求)に応じるために保有している金を現金化したからだ。
「コモディティー全般が大幅安に見舞われたにもかかわらず、金はかなり持ち堪えている」とコメルツ銀行のアナリストらは言う。
「とはいえ、リスク回避の急激な高まりと顕著なドル安にもかかわらず、金はそれ以上上昇することができなかった」
アナリストらの話では、金の買い手は主に西側、米国で、伝統的に金需要の中心地であるインドや中国ではない。これは金の価格が米ドルと、FRBから発せられるサインに大きく左右される可能性が高いことを意味している。
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