3. 2015年8月31日 12:07:20
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東芝現役社員が録音していた「無間地獄」本誌に持ち込まれた10時間超の音声データを誌上で再現 2015年8月31日(月)林 英樹 組織ぐるみで長期間に渡って繰り返されてきた東芝の不正な会計処理。その裏には、実現不可能な業務目標を社員に強要する「チャレンジ」が存在していた。「日経ビジネス」8月31日号の特集「東芝 腐食の原点〜社員が本誌に決死の告発」では、壮絶な現場の状況、不正が生まれるに至った経緯を詳報した。 特集誌面では6人の東芝社員が本誌に打ち明けた「告白」を掲載した(グループ社員やOBも含む)。中でも、調達部門で働く課長(50代前半)の話には胸が揺さぶられた。 絶えることのない極限の苦しみに苛まれ続けることを、仏教では「無間地獄」と呼ぶ。そう表現するしかないような壮絶な日々が、東芝社内で繰り広げられていたのだ。 「ぜひ会って話がしたい」 8月上旬、調達部門で働く課長(50代前半)から、社内で横行するパワハラの実態を告発したいと連絡が入った。指定された場所に出向くと、人目をはばかるようにICレコーダーを手渡された。その課長は、日常的に上司からチャレンジを強要されていた様子をICレコーダーに録音していた。そこには、日本を代表する名門企業で行われていたとは信じられないような、生々しい罵詈雑言が残っていた。録音データを基にその一部を再現する。 東芝現役社員が本誌に提供したICレコーダーには、会議の生々しいやり取りが10時間以上に渡って記録されていた(イラスト:3rdeye) 〜〜以下は録音データを再現〜〜
静まりかえった会議室。資材の調達部門で行われた会議の模様が録音されている。 課長が報告しているのは、調達のコスト削減目標に関する進捗状況だ。期初にカンパニー社長が出席する会議で目標を掲げる。だが、その目標額は課長が考える現実的な数字に、上司から強要された「チャレンジ分」を上積みしたものだ。達成の見込みはほとんどない。そこで課長は、当初より目標額を低く再設定した計画を作り直し、会議の場で報告していた。 突然、課長の報告を聞いていた上司が苛立った声を上げた。 上司:「すぐにそういう風に話をすり替えるから困るんだよ。だましているんでしょ」 課長:「(当初目標の達成が)できないということでやり直しました」 課長は焦りから上ずった声で答える。 上司:「できないから変えたんでしょ。そんなこと誰がオッケー出したの」 課長:「7000万(円)できないので・・・」 上司:「それじゃあ、全然宿題の答えになっていない。話になんないよ」 課長:「……」 上司:「黙ってたら分からない。“施策”として、少なくともあれとあれを出してくるという話でしょ。出てないことはどう説明するんですか。数字がなきゃ、計画だけどうこういうのは、はっきり言って時間の無駄です」 「施策」に次ぐ「施策」の無限ループ 「施策」とは、チャレンジで掲げた数値目標を達成するための事業計画を意味する、東芝の社内用語だ。チャレンジ目標を達成するために、「何度も新たな施策を出すことを求められた」とこの課長は証言する。 ただ、調達部門の場合、相手企業との交渉が必要なため、施策を実現できるかどうかはすぐには分からない。計画通りに進まなければ、上司から別の施策を出すように強く求められる。「この無限ループで、頭がおかしくなりそうだ」。この課長はため息交じりにこう語った。 録音データには、次第に激昂していく上司の様子が残されていた。 上司:「何をやっているんですか。いい加減にしてくださいよ。何ですかこれ」 スピーカーからの音声がひび割れるほどの大声で罵倒する上司。怒鳴り声の合間には、ドンドンと激しく資料で机を叩く音も録音されている。 上司:「全然話になってないって。何人(部下を)出して、いくら稼いでいくらになる。残りの7000万はこうやって出します。そういうのを出してこいよ。それが施策でしょ。(カンパニー社長が出席する)会議でテーマ(施策)はあります、(チャレンジ目標の達成は)できますと言ったでしょ」 課長:「やりますとまでは言っていません」 上司:「ダメです。そんな言い訳は通用しない。あの場でできますと言ったぞ。ああいう資料を作ってできませんってことなのか」 「がんばります」は「やります」と同じ 課長:「がんばります、とは言いましたが…」 上司:「あの場(会議)で『がんばります』って言ったことはイコール『やります』という意味ですよ。そうなってるじゃない。じゃないとあの会議は何のためにあるんだ。そんな話は通用しない!数字を落とす(達成できない)のはあり得ない!」 課長:「実力不足でできなかったんです」 上司:「やるって言ったのに今さらナニ言ってるの。結果は結果。あんたが自分で(カンパニー)社長に対して、数字を落としたと説明してこいよ」 〜〜録音データはここまで〜〜 突き放すかのような上司の言葉で、この日の会議は幕を閉じた――。 今年7月、東芝が委託して第三者委員会がまとめた調査報告書には、「社長月例」と呼ばれる会議について触れられていた。 佐々木則夫氏が社長を務めていた期間、現場に無理を強いるチャレンジがより苛烈になってきたと言われている(写真:陶山勉) 2012年9月の社内会議。佐々木則夫・元社長は現場に3日間で120億円の営業利益の改善を強く求めた。常識的に考えれば、実現が不可能な指示であるのは間違いない。だが、社長月例で決まったチャレンジ目標は、カンパニー、部、課へと落とし込まれ、それが必達目標として、個人にのしかかることになった。
先の課長は「チャレンジはかつて『可能ならがんばろう』という意味合いだった」と証言する。それが必達目標へと変貌し始めたのは、2008〜09年ごろだった。 辞任した田中前社長の出身母体である調達部門でもチャレンジは横行していた(写真:新関雅士) 「私はチャレンジという言葉を使った覚えはない」
第三者委員会の報告書公表に合わせた会見で、田中久雄・前社長はこう強調してみせた。だが、録音データは、田中氏の出身母体である調達部門で、田中氏がまさに社長を務めていた時期に行われていたパワハラ会議の模様だ。 この課長は「値下げ交渉が難航すると思っていても上司に『この施策にコミットするんだな』と詰め寄られれば、『がんばります』としか言えなかった」と唇をかむ。 その結果、調達する部品の検収時期を翌月以降にずらすことで、コストとして計上する時期を先送りする「検収シフト」という手口を多用した。だが、それは足元のチャレンジ目標を達成したように見せかけるためだけの弥縫策に過ぎない。 どこもかしこも地獄だらけ 10時間以上に及ぶ録音データの中には、特定の社員を嘲笑するかのような発言も残されていた。他の社員への見せしめのため、成績が悪い社員の席を空いている会議室へ強制的に移動させるような措置が取られることもあったという。 「あと少しで異動になるので、それまでは耐え忍びたい。けれど、別の部や課もここと同じような状態。東芝社内はどこもかしこも地獄だらけですから」 この課長はそう言うと、寂しそうに笑った。 情報をお寄せください。東芝関係者以外からも広く求めています。 東芝では通常の方法では達成不可能な目標を強制することが半ば常態化していました。あなたが所属する組織でも似たようなことが起きていないでしょうか。まだ明らかになっていない問題について、日経ビジネスは広く情報を求めています。 アクセス先 http://nkbp.jp/nb831 取材源の秘匿は報道の鉄則です。そのため所属機関のパソコンおよび支給された携帯電話などからアクセスするのはおやめください。 郵送でも情報をお受けします。 〒108-8646 東京都港区白金1-17-3 日経BP社「日経ビジネス」編集部「東芝問題取材班」 ※送られた資料は返却しません。あらかじめご了承ください。 このコラムについて 社員が本誌に決死の告発 東芝 腐食の原点
組織ぐるみで実行した不正な会計操作を「不適切会計」と言い換え、直接の指示を否定しつつも、歴代3人の社長が辞任した。第三者委員会は核心に切り込まず、お手盛りの報告書でお茶を濁す。そして辞任した3社長は、不思議なことに今なお出社を続けている。東芝は根本原因に蓋をしたまま、問題の幕を引こうとしている。果たしてそれで許されるのか。試されているのは日本の正義だ。まずは現場から噴出する悲鳴に耳を傾けよう。腐食の原点はそこにある。 http://business.nikkeibp.co.jp/atcl/report/15/082700031/082800003/
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