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福島のタブーに挑む・その1 除染のやり過ぎを改める
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151228-00010001-wedge-soci
Wedge 12月28日(月)12時2分配信
2015年9月5日の福島県楢葉町の避難指示解除に合わせて開催されたキャンドルナイト KOJI SASAHARA / AP / AFLO
東京電力福島第一原子力発電所の事故から5年が経とうとしている。これまでの政策措置は、事故後のパニックが収まっていない中、冷静な情報やデータ収集とそれらに基づいた費用対効果分析をする暇もなく、その場の空気を支配した感情的な反発や突き上げにさらされて、政治的な判断で執られたものも多い。
当時の政府関係者や政治家によれば、時間が切迫する中で次々と決定された政策措置は、当面5年程度を念頭に置いていたという。5年経てば、事故の収束や放射能汚染、避難状況等について、事態を冷静に分析できる状況になっているだろうから、その時点で再検討を加えると考えていたわけだ。
図表1
つまり、2016年3月が政策措置の一つの区切りとなる。また、政府は17年3月には現行の居住制限区域や避難指示解除準備区域への避難指示を解除する方針だ。16年度は、これまでの政策の評価・反省を踏まえて、避難指示解除以降(17年度以降)の政策のあり方について抜本的な検討を行う極めて重要なタイミングとなる。
これまでの政策措置の基礎となっているのが、11年12月に原子力災害対策本部が決定した「警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方」である。5年間経過してなお年間20mSv(ミリシーベルト)を下回らないおそれのある地域(当時年間50mSv超のエリア)を帰還困難区域と定義し、少なくとも5年間は居住を制限するとした(福島復興についての方針はその後何度か更新されているが、大枠は変更されていない)。
この基本方針では、帰還困難区域に設定される地域に関しても全ての住民の帰還の可能性を排除しない書きぶりとなっている。事故直後の時点で早々と「帰還を目標としない」などと明言することは、地元との関係で政治的に困難であり、また、「もう福島には住めない」といった風評被害につながることを懸念したためだ。
一方で、当時の関係者は、事故後5年経過した後、放射能汚染の自然減衰の効果も見極めたうえで改めて冷静に議論し、帰還困難区域の取扱いを決めていくともしていた。すなわち、事故後5年の再検討の時点では、放射能汚染の状況や個々の避難住民の選択によって、帰還を断念する区域が残る可能性を排除していなかったのだ。
まさにその「事故後5年」がそろそろ経過するタイミングとなっている。
初期の政治的判断が災いして、今となってはもはやタブーになっていることや、「囚われた固定観念」が依然として存在していることは事実である。それらを打破しなければ現実的な選択肢を検討することができないことは、関係者の大半が有している共通認識ではないだろうか。タブーや固定観念を意図的に表に晒すことによって、今こそ福島の真の復興に何が必要なのか、比較衡量すべき国民負担をどのように考えるべきかについて述べてみたい。
■除染目標の見直し
除染廃棄物(福島県楢葉町) Wedge
事故直後の放射線に対する不安の中、何より安全サイドに立った目標が掲げられ、「とにかく徹底して除染をやる」ことが住民の安心をもたらした効果は大きかったし、また中長期的にも、帰還して生活を再建することの大前提として除染が今でも重要視されていることは当然だろう。問題は、除染をどこまでやればいいのかだ。
放射線リスクについて、一部まだ反原発運動の一環として「煽る」ための情報を流している人たちはいるが、むしろ福島の地元では相当理解が進んできているのが実情だ。放射線リスクを避けるには、除染という方法以外にも高線量の場所に近づかない、屋外にいる時間に注意するなど個々人の行動パターンも大きい。
ところが、いまだに「年間1mSv以下になるまで除染を行うべし」との政治的方針が残ったままになっており、これを正面から議論することは一つのタブーになっている。
当初、除染の基本方針を決めたのは、原災本部の11年8月決定「除染に関する緊急実施基本方針」だ。空間線量年間20mSv以上は国が、それ以下は市町村が実施すると役割分担するとともに、長期的目標として「追加被ばく線量を年間1mSvとする」としたうえで、年間1〜20mSvのうち比較的高線量の所を対象に面的除染が必要との考え方が提示された。これをベースに、閣議決定で除染費用として2200億円の予備費が計上されたが、当初の面的除染の対象は空間線量が年間5mSv以上の地域とされていたのだ。
これは、当時の政策担当者間において、次のような理由から除染作業は、プライオリティをつけて進めるべきだと判断されていたからである。(1)基準を年間5mSvに設定するかそれ未満に設定するかで、放射線防護上大きな差があるとは考えられていなかった。 (2)年間5mSv未満では面的除染より、ホットスポットの除染に集中し、日々の生活で無用な被ばくをしないよう行動に気をつける方が意味があると考えられていた。 (3)年間5mSv未満の地域を対象に含めると費用が激増する。
市町村担当者向けの説明会でも、市町村が実施する面的除染に対する国の支援の基準は年間5mSvとなることが示されていた(11年9月28日)。
除染目標「年間1ミリシーベルト」を政治決断した細野豪志環境相(当時) Giovanni Verlini / IAEA
ところが、福島県市長会(13市)から強い抗議が出され、政府は方針を転換。10月2日に、細野豪志環境相(当時)が佐藤雄平知事(当時)に年間5mSv未満も支援対象とすると説明してしまったのである。この短期間で除染目標が大幅に引き上げられたことからみて、科学的な裏付けや実行可能性が精査されたとは考えられず、純粋に政治的な判断だったといえよう。
しかし、目標を引き上げた結果、除染の作業負担は非現実的に大きくなり、効果も期待されたほどではなくなった。むしろ高すぎる除染目標が除染実施関係者と避難中の地元住民双方の心理的バリアとなり、一種の「呪縛」となっているのではないだろうか。
除染効果の評価を、空間線量から実際の被ばくを測定する個人線量に本格的に移行させることや、除染以外の方法による放射線リスクの軽減を併せて実施することで、帰還の可能性を再評価することが重要だ。国もそうした方針を表明はしているが、実際の除染作業との関連付けがしっかりとなされているわけではない。個人線量への移行を確実なものとするためには、個人線量の把握と除染の重点化の関連付け方法などについて、引き続き地元に十分な説明を行っていく必要がある。
いずれにせよ、もう一度出発点に立ち戻って、面的除染の基準を年間5mSvに戻すことによって呪縛から解き放ち、除染目標や作業の合理化に向き合う必要がある。仮に、それが政治的に難しいと判断される場合には、個人線量をベースとした基準値設定に切り替えたうえで、他の放射線防護措置の支援も考慮した多段階基準を採用することが一案として考えられる。
例えば、年間20〜10mSvは面的除染、年間10〜5mSvは除染と防護措置との組み合わせとして最も効果的な方法を評価したうえで実施、年間5〜1mSvについては、除染はホットスポットに限定し、他の防護措置の支援を主軸として個人線量の基準を達成するといった具体策を検討してはどうか。
■国際機関の助言
この点に関して、国際原子力機関(IAEA)は、「国際フォローアップミッション最終報告書」(14年1月)において、日本政府に対して次のような助言を行っている。
「除染を実施している状況において、1〜20mSv/年という範囲内のいかなるレベルの個人放射線量も許容しうるものであり、国際基準及び関連する国際組織、例えば、ICRP、IAEA、UNSCEAR及びWHOの勧告等に整合したものであるということについて、コミュニケーションの取組を強化することが日本の諸機関に推奨される。(中略)政府は、人々に1mSv/年の追加個人線量が長期の目標であり、例えば除染活動のみによって短期間に達成しうるものではないことを説明する更なる努力をなすべきである。段階的なアプローチがこの長期的な目標の達成に向けてとられるべきである。この戦略の便益については、生活環境の向上のために不可欠なインフラの復旧のために資源の再配分を可能としうる」
この助言はこれまで重視されていないようだが、今後の除染のあり方や区域設定を検討する際、大きな拠り所となるものである。除染の合理化によって節約される財源は、インフラ整備や雇用・福祉関連施設の建設に充当できることも重要なポイントだ。
■除染廃棄物と中間貯蔵施設
除染廃棄物仮置き場(Wedge)
除染に関する実際上の大きな悩みが、除染後の廃棄物の処理だ。仮置き場あるいは道路脇などに山積みされたフレコンバッグは、風景としても「汚染された土地だ」というイメージがつきまとい、原発事故からの復興を妨げる大きな足かせとなっている。仮置き場の地権者には期間限定で廃棄物を置かせてもらったという経緯もあり、搬出をしないということは確かにかなり難しい。しかし、一方で中間貯蔵施設の整備が遅れている中、焼却、搬出を待っていれば何年経っても問題が解決しないことが予想されるのが実態だ。
そもそも、ここ5年間の放射能の自然減衰も考慮すれば、いまや通常の廃棄物として処理できる8000ベクレル/kgの土壌も多いのではないか。
除染廃棄物は双葉町・大熊町に建設される予定の中間貯蔵施設に搬入されることになっているが、約半分の除染土壌がそうした8000ベクレル/kg以下のものだと考えられている。中間貯蔵施設は、国と地元の2町が話合いに話合いを重ねてようやく建設にこぎつけた貴重な施設である。そうした施設だからこそ、汚染度の高い除染廃棄物を優先して貯蔵していく方針を決める必要がある。
そもそも、除染作業で発生した場合(中間貯蔵施設)とそうでない場合(一般廃棄物処分場)で、同じ汚染度の廃棄物の処理方法が異なっている理由がはっきりしていない。全てを搬入すれば、焼却による減容化を経た後の量でも東京ドーム18杯分もあると考えられており、焼却処理自体も困難となれば、さらに大きな容量が必要となってしまいかねない。現在、福島県内から持ち込まれる除染廃棄物の量が予想以上に増えてきていると言われる。このままでは、地元からすれば、中間貯蔵施設の容量が本当に足りるのか、その増設を考えなければならなくなるのではないかという不安が高まるだろう。
一案として、8000ベクレル/kg以下のものは中間貯蔵施設に受け入れることをせず、通常の廃棄物として処理する方針を早急に確立すべきだ。それによって余裕ができる用地に、8000ベクレル/kgを超える土壌貯蔵施設を増設することが可能になる。
8000ベクレル/kg以下のものは一般廃棄物の処分場を活用することとし、さらに原発廃炉の際のクリアランス制度を参考に、線量をモニタリングし、人体や環境への影響がないことを確認したレベルの内容物については、再生利用や公共工事への利用など、処理方法の多様化・柔軟化を進めるべきである。
また、今後帰還困難区域内でも効果的・効率的な除染が必要になってくるが、そうした場所での除染作業に使用することができる土壌も、現状の除染廃棄物の中には相当量含まれている可能性もある。除染廃棄物に関するこれまでの固定観念や政治的な取決めを再検討することによって、廃棄物処理の現実的解決を加速化する必要がある。
■POINT 福島復興加速の6カ条
1.除染目標の基準を年間5mSvに戻し、個人線量で除染効果を評価
2.8000ベクレル/kg以下の除染土壌は中間貯蔵施設に持ち込まない
3.福島の現状や放射線リスクについて国が主導して全国に情報発信
4.損害賠償に区切りをつけ、コミュニティや生業の再生支援を強化
5.全住民帰還の旗を降ろし、市町村合併を含む広域的な復興計画に
6.復興予算に上限を設け、福島第二再稼働などタブー排した議論を
澤 昭裕 (国際環境経済研究所所長)
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