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http://mainichi.jp/articles/20151210/ddm/016/040/007000c
2015年12月10日 東京朝刊
高速増殖原型炉「もんじゅ」増殖のしくみ
原子力規制委員会から運営主体の交代を求められ、存廃の岐路に立つ高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)。発電しながら使った以上の燃料を生み出す「夢の原子炉」と呼ばれる。どういう仕組みなのか。実現の可能性はあるのか。改めて探った。
自然界にあるウランのうち通常の原発(軽水炉)の燃料になるウラン235は0・7%に過ぎない。99・3%を占めるウラン238は核分裂しにくいため、そのままではゴミになる。もんじゅはこれを利用しようと考え出された。
もんじゅの燃料のプルトニウム239は、核分裂するとスピードの速い中性子が3個飛び出す。これがウラン238に当たるとプルトニウム239に変わる。中性子1個を次のプルトニウム239の核分裂、残り2個をウラン238の変換に使うと、消費したより多いプルトニウム239ができる。「高速」中性子を使って燃料を「増殖」するのが、高速増殖炉の意味だ。
もんじゅの炉心は、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を、ウラン238だけでできた燃料(ブランケット燃料)が覆う構成。ブランケット燃料に生まれるプルトニウムの97%以上はプルトニウム239だ。核燃料に再利用するには十分高い濃度で、核兵器にも転用できる。
軽水炉では燃料を冷やすのに水を使うが中性子は水の中では速度が遅くなる。遅い中性子は核分裂を効率よく起こす半面、ウランをプルトニウムに変えられないため増殖に使えない。もんじゅは原子炉の冷却にナトリウムを使う。
ナトリウムは効率よく熱を奪う利点があるが、強い放射能を帯び、水や空気と触れると火災や爆発を起こす。原子炉を冷やしたナトリウム(1次系)で直接水を温めるのは非常に危険だ。もんじゅはいったんナトリウム同士で熱交換し、放射能を持たないナトリウム(2次系)で蒸気をつくって発電する。このため軽水炉に比べて設備が非常に複雑になる。もんじゅの出力は28万キロワットと原発では小型だが、設備の大きさは100万キロワット級の原発に匹敵する。
他にも、暴走しやすく原子炉の制御が難しい▽ナトリウムは不透明で原子炉内の点検が困難−−など多くの欠点がある。高速増殖炉は軽水炉よりも早く1951年に米国で世界初の原子力発電に成功したが、実用化した国はまだない。仮にもんじゅが成功したとしても、経済性を検証する実証炉、商業的に使う実用炉、高速増殖炉専用の再処理工場などさまざまな施設を造らなくてはならず、増殖の実現はまさに「夢」の世界だ。
もんじゅの構造に詳しい元京都大原子炉実験所講師の小林圭二さんは「高速増殖炉は増殖を主眼にするためさまざまな無理がある。電源としては失格だ」と話す。
【酒造唯】
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