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川内原発が再稼働されたからといって、脱原発運動は敗北したと絶望すべきではない。川内原発は再び止められる。諦めず、長期的な視点で脱原発運動に取り組むことが重要だ。
ここでは、脱原発訴訟を主導してきた弁護士の河合弘之氏のインタビューを紹介したい。
『月刊日本』12月号
河合弘之「川内原発はまだ止められる」より
http://gekkan-nippon.com/?p=7403
<三・一一で裁判官が変わった>
―― 河合さんは弁護士として長年に亘って原発訴訟に関わってこられ、3・11以後も精力的に活動されています。改めて3・11の時にどのように感じ、その後どのような思いで戦ってこられたのか教えてください。
【河合】 私はあの地震が起きた時、自分の法律事務所にいました。凄まじい揺れに襲われたため、上から物が落ちてきても大丈夫なように、頑丈なテーブルの下に潜り込みました。しばらくしてから日比谷公園に避難し、辺りの様子を見ていました。その時ふと「原発は大丈夫だろか」という思いが頭を過ぎりました。その後、福島原発の全電源が喪失したというニュースを聞き、「ガチャッ!」と全身にスイッチが入るのを感じましたね。
―― 河合さんたちが事故前に手掛けた原発訴訟は、連敗に次ぐ連敗だったそうですね。
【河合】 正直に言うと、私はいい加減嫌になっていたんです。原告団や弁護団の中にも「もう何をやってもダメだね」という敗北感が漂っていました。私は、後は若い人たちに任せ、原発訴訟からそっと身を引くつもりでした。
しかし、福島原発事故に接し、「もうこの問題からは逃げられない」と腹を決めました。あの事故によって国民の考えは大きく変わりました。とすれば、国民の一部である裁判官の考えも変わったはずです。それまでの裁判では、いくら原発の危険性について訴えても、裁判官たちは軽蔑の視線を向けるだけでした。しかし、福島原発事故が起きた以上、裁判所の対応も変わるはずです。そこで、私は原発訴訟に携わってきた全国の弁護士に呼びかけ、もう一度裁判をやり直すことにしました。
―― 裁判官が軽蔑の視線を向けることがあるのですか。
【河合】 ありますよ。「ありもしないことを大げさに言う人たちだな」といったことを考えているのは、口ぶりや表情を見ていればわかります。しかし、3・11以降は、裁判官たちも私たちの主張を無下に軽視することはできないと考えるようになっていることがわかります。
―― 河合さんたちは今年4月に高浜原発の運転差し止め仮処分命令を勝ち取りました。これも裁判官が変わった一つの表れだと思います。
【河合】 高浜原発の仮処分は、日本の司法が初めて原発の再稼働にストップをかけたという意味で、歴史的成果と言えます。仮処分は直ちに効力を持つので、その瞬間から再稼働の動きをストップさせることができます。
もっとも、安倍政権が誕生して以来、司法では少しずつぶり返しが起こっていますね。あたかも再稼働が既成事実であるかのように言われる中で、裁判官たちはまた3・11以前と同じような対応をし始めています。
<川内原発はまだ止められる>
―― 川内原発の再稼働差し止め仮処分申請が却下されたのも、司法のぶり返しによるものだと思います。
【河合】 川内原発の再稼働によって、国民の間には「いくら反対しても結局再稼働されてしまうのか」といった無力感が広がっています。また、メディアでも、高浜原発では仮処分が出たが、川内原発で仮処分が却下されたということで、一勝一敗のチャラになったというような報道がなされています。しかし、サッカーで言うなら、高浜原発を止めたことは10点くらいの価値があります。それに対して、川内原発を止められなかったことは、1点の失点です。
―― それは何故でしょうか。
【河合】 高浜原発と川内原発とでは、事故が起きた際に生じる被害の大きさが異なるからです。もし高浜原発で事故が起これば、必ず琵琶湖が汚染されます。琵琶湖は関西に住む1500万人の人々の水瓶です。つまり、もし事故が起これば、1500万人の飲み水がなくなってしまうということです。また、関西が汚染されてしまえば、我々が愛してやまない京都や奈良に行く人はいなくなるでしょう。さらに、近畿経済圏は東京経済圏に次ぐ規模のため、日本経済全体に大きな影響を与えてしまいます。
川内原発の再稼働についても、まだ終わったわけではありません。住民たちが抗告の申し立てを行い、控訴審で争っている最中です。まだ引っくり返す可能性は残されています。その意味でも、まだまだ脱原発派が10対1で勝っているというのが実情です。(以下略)
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