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産経から
http://www.sankei.com/west/news/151105/wst1511050007-n1.html
四国電力伊方原発3号機(愛媛県伊方町)の再稼働同意の地元判断が下った。同県の中村時広県知事が10月26日、同意の考えを表明したことで、新規制基準下での地元同意の手続きが完了。今後は四国電力が原子力規制委との間で残る認可審査などを進め、九州電力川内原発1、2号機に続き、年明け以降の再稼働を目指すことになる。
今回も同意に至る過程で反原発派の強硬な行動が目立ったが、安全を最大限重視した姿勢で慎重に進められた同意手続きの前にかき消された形だ。一方、事故時の避難について、原発のある半島先端部の住民の不安は残ったまま。「原則40年廃炉ルール」を適用すると運転期間が10年未満となる1、2号機の扱いも未定で、課題を残した状態での発進となった。
反対派の訴え力持たず
「私たちを被爆させるな」「議員はどちらを見ているのか」「(再稼働)賛成議員は選挙で落とそう」
愛媛県議会議場にシュプレヒコールが響いたのは10月9日。伊方3号機再稼働に関する決議案などの審議が行われた本議会に市民団体のメンバーが詰めかけ、傍聴席から声を挙げた。大きな混乱はなかったが、議長がマナーを守るよう呼びかける場面もあった。
これに先立つ6日、反対派は再稼働を全会一致で容認した伊方町議会でもアピール。知事が同意表明した26日も県庁前で早朝からプラカードを掲げるなどし、「知事は二度と原発を動かさないでくださ〜い」「福島第1原発の事故が収束していないのに無責任だ」とマイクで訴えた。
しかし、こうした行動はひんしゅくを買いこそすれ、結果的に大きな影響力はもたなかった。それは県などが四国電力や国に安全対策や事故時の責任を明確にすることを強く要望し、同意手続を慎重に進めたことで、再稼働を容認する“空気”が地元で醸成されたことが大きかったとみられる。
新規制基準適合への道
「原発に代わりうるコスト・出力・安定供給の3条件を満たす代替エネルギーが見つかるまでは、安全対策を施す中で向き合っていかざるを得ない」。中村知事はこう述べ、原発再稼働への同意を表明した。
伊方3号機は福島第1原発事故後の23年4月に定期検査に入り、以降は原子炉が停止している。新規制基準のもと四電は25年7月、同原発の基準適合性審査を申請。約2年間の審査で、同原発から8キロ離れた前面海域の断層群(中央構造線など)の評価を見直し、基準地震動(想定される最大の揺れ)を当初の570ガルから650ガルに引き上げた。
また、制御棒の挿入が機能しない場合でも原子炉を止める対策や冷やす対策をとり、格納容器の破損対策なども含め重大事故時の対策も施した。
一方、県はより安全性を高めるため、1千ガル対応の耐震補強など追加安全対策を四電に要請。四電は配管の支持材による補強対策など安全上重要な機能を有する計195の設備について耐震性向上工事を実施した。
地元合意へ
一方、県は7月21日、再稼働の前提として、一部の避難ルートの整備促進や避難対策への支援とともに、国が最終的な責任を負うという総理大臣の言葉など、8項目を国に要望した。
また、国や四電などの説明を受け、規制委の審査結果を検証。原発30キロ圏内の5市町では住民向けの合同説明会も開かれた。
そうした手続きを踏み、伊方町に隣接する八幡浜市は9月2日、県に避難計画などを要請した上で再稼働を了承。最終責任について中村知事が安倍首相から「責任をもって対処する」との言質を得たことに加え、伊方町議会、県議会、伊方町長が相次いで再稼働を認めたことで、「知事同意」となった。
避難計画の不安
今後は、機器や設備の詳細な設計を確認する規制委の「工事計画認可」の審査などを経て再稼働となるが、一方で課題も残った。佐田岬半島の付け根にある伊方原発の西側には住民約5000人が暮らすが、事故が起きた場合、半島先端に取り残される恐れがある。町によると、陸路が使えない場合、船で大分に向かうことになるというが、海が荒れた場合はどうするかなど、不安は残る。
今後は廃炉が焦点
一方、昭和52年に運転を開始した伊方1号機はすでに38年、2号機は33年が経過。地元では「3号機は運転を続けてもいいが、1、2号機は廃炉に」との声が強い。地元の三崎漁協の代表理事組合長、阿部吉馬さん(61)は「3号機の再稼働は条件付きの賛成だが、何十年も原子力という感覚はない」と話す。
中四国では、運転開始から40年以上経つ中国電力島根原発(松江市)1号機の廃炉が決まった。四電は、3号機の再稼働の投資負担を踏まえた上での、1、2号機の廃炉、または運転延長の選択を迫られる。
川内原発に続き、伊方原発が再稼働の地元同意手続きを完了したことで今後、全国的に再稼働の流れが加速するとの見方もあるが、審査や避難計画、廃炉を含めた運転計画など各原発ごとに抱える課題は多い。
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