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「被曝労災認定第1号」で見えたフクシマの真実〈週刊朝日〉
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20151029-00000001-sasahi-soci
週刊朝日 2015年11月6日号
東京電力福島第一原発の事故収束作業をめぐり、放射線被曝が原因とみられる白血病を患った元作業員の男性(41)が、初めて労災認定を受けた。
白血病の労災認定基準は年5ミリシーベルトの被曝。男性は18カ月で19.8ミリを被曝していた。ここですぐに疑問が浮かぶ──。国が、避難指示区域の見直しを進める基準に採用しているのは「年20ミリ」。労災基準より4倍も高いのだ。
福島県南相馬市在住で、「南相馬・避難20ミリ基準撤回訴訟原告団」の小澤洋一さん(59)はこう言って憤る。
「私たちは『20ミリでも安心だからそこに住め』と言われている。でも、被曝の影響で病気になっても、もちろん労災は適用されません。こんなに住民をバカにした話があるでしょうか」
県がまとめた事故後4カ月間の県民の被曝推計では、5ミリ以上の被曝者は938人。最高は25ミリだ。
同市が住民に配ったガラスバッジ(積算線量計)を集計したデータからも、3カ月間で4ミリ以上被曝した人が7人にのぼることがわかっている。福島で甲状腺がんの疑いのある子どもが137人に増えていることを考えても、住民の健康被害への不安はもっともだ。
だが、国は住民の心配に耳を傾けようとしない。
「労災とは、明らかに被曝以外で白血病を引き起こしたことが証明されない限りは広く認める制度。今回も被曝との因果関係が証明されたわけではない。科学的知見では100ミリ以下の発がんリスクは証明が困難。今回の労災認定と20ミリの避難指示解除基準は、関係のない話です」(内閣府)
住民が被曝で病気になったら、原子力損害賠償法(原賠法)に沿って東電に賠償を請求できる。だが、被曝との因果関係が証明されて初めて支払われるため、ハードルは高い。それを象徴するのが、2010年に最高裁上告棄却で結審した「長尾裁判」だ。
1970年代に福島第一原発の作業員だった長尾光明さんが70ミリの被曝をし、98年に多発性骨髄腫を発病。04年に労災認定を受けた。原賠法に基づき東電に賠償を求めたが、東電は「診断が誤っている」として、国が認めた労災を否定。東京地裁もそれに同意した。
高裁は多発性骨髄腫を認めたが、「高度な蓋然性で(被曝との)因果関係が証明されたとは言えない」とし、賠償を勝ち取れないまま長尾さんは亡くなった。
その裁判に弁護団の一員として関わった元放射線医学総合研究所主任研究官の崎山比早子さんが言う。
「東電のやり方を見ていると、原発事故が原因でがんになっても賠償を認めない可能性がある。国は『100ミリ以下の被曝には統計的有意差がないから、がんを発症しない』としているが、ここ4年ほどでそれを覆す疫学調査結果が海外でいくつも発表されている。年20ミリが安全なんて、科学者なら誰にも言えないはずなのに、政治的な配慮から誰も言うべきことを言わない」
これでは、福島の住民は救われない。
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