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(書評)青木一三(著)「原発敗戦―事故原因の分析と次世代エネルギーの展望」(工学社・2012年)
http://www.amazon.co.jp/372/dp/4777517322/ref=cm_cr-mr-title
5つ星のうち 5.0
福島第一原発事故後に出版された最も重要な本のひとつ,
2015/10/26
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これまで九電力は、原研やサイクル機構(元動燃)に多額の献金をしてきました。両組織は、統合され、独立行政法人原子力研究開発機構(原子力機構)となり、九電力から原子力機構へ年間五千万円弱の献金がなされてきました。福島第一原発事故後、個々の電力会社からではなく、電気事業連合会(電事連)が取りまとめて同額の献金を続けてきました。その額は原子力機構の年間予算の五千分の一です。割合からすればわずかです。しかしその政治的意味は明らかです。
九電力の意図は、研究や技術開発への見返りだけでなく、安全審査や安全規制にも多くの委員を出している原子力機構への暗黙の協力要請でもあります。分かりやすく言えば、九電力に都合のよい安全審査や安全規制の徹底のための「買収金」です。福島第一原発事故後も、それまでのいかがわしい行為が継続していたことに驚きました。
私は昔、原研幹部から「原研の研究費には、電力からの献金(電源開発促進対策特別会計含む)が含まれており、そのことを十分に認識した言動をしなければいけない」と諭されました。私の研究は、そのような分野でなかったため、聞き流しました。その後の言動は『桜井淳著作集」(論創社)に記したとおりです。福島第一原発事故は。九電力が作りだした政治構造のネガティブな側面が顕在化したものです。
(桜井淳 (著)「日本『原子力ムラ』行状記」(論創社・2013年)27ページ)
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福島第一原発事故(2011年3月11日)以後出版された数多くの原発を論じた本の中で、最も重要な本のひとつである。
本書の独自性は、先ず、本文の初めのこの記述に明らかであろう。
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福島原発事故に遭遇したとき、最初に脳裏に浮かんだ言葉は「原発敗戦」という言葉であった。
太平洋戦争に軍部が国民を引き連れて突入し、惨敗したことと、原子力にかかわる「政官学産」の複合体が国民を巻き込んで突入し、負けた様が相似形だったからである。
負けたのは、日本の原子力の「政官学産」複合体であるが、それだけではない。かつての敵国、大日本帝国を負かした米国も敗者なのである。これは「オペレーション・トモダチ」を見ても明らかだ。いかに重大であるかを認識した証拠である。
大日本帝国はとっくに消えてなくなったというのは表向きの姿。米国がアジアでの覇権維持のために「アトム・フォー・ピーズ」と言って、原発技術、その他、最先端の生産技術をふんだんに日本に与えて繁栄させ、日本が戦前に築いた「大日本帝国」の覇者をテコにしてアジアに君臨してきた米国も、同時に負けたのである。
日本の「政官学産」複合体は、米国に与えられた原発技術を、天から与えられた有り難い完璧な技術と盲信してきた。
原子力を大切なさずかりものと守り続けた「政官学産」複合体は、福島事故で信じていたものが崩れ去り、腰が抜けてしまった。
では勝者は誰かというと、あまり原子力にのめり込まず、古来、アジアの秩序の中心だった、中華帝国なのだ。
「敵失」で地政学的な本来の姿に戻ったということであろう。日本が、日露・日清戦争で作りだした新秩序は、脆きも崩れ去ったのである。日清戦争後の100年間は歴史的にも異常な期間だということになる。口に出して認めたくはないが、これぞ著者の深層心理に埋没していた、暗黙知だったのだ。
したがって「原発敗戦」とは、すなわち大日本帝国の遺産を利用した米国の覇権が消え去った、ということ。
米国は、もはや、北方領土、竹島、尖閣列島を守る力も気力もない、沖縄は、賢くも中国と日本を手玉にとる古来の姿に戻っている。
この地政学的変化を感知した、モスクワ、ソウル、台湾、香港、そして、北京が、自分たちの分け前を要求しだしている。
では、我々はどうするか、というのが戦後体制。相当の覚悟が必要である。政治家と官僚には、その認識も覚悟もない。
(本書10~12ページ)
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即ち、本書において、著者は、福島第一原発事故の世界史的意味を論じて居る。これは、同事故後、我が国で出版された他の書籍には無い視点ではないだろうか。
本書の著者、青木一三氏は、1938年生まれのエンジニアである。氏は、東北大学工学部応用化学科を卒業した後、千代田化工建設に入社し、1966年より20年間天然ガス、LPG,LNG関連プロジェクトのプロセス開発からプロジェクトマネジメントまで担当して来た。特に、日本初のLNG輸入基地の基本設計し、その後、海外の液化基地設計建設に参画して来た、化学プラントのエキスパートである。
そうした化学プラントのエキスパートとしての知識と経験から、氏が、福島第一原発事故と、原子力発電の過去と現在、そして未来を論じたのが本書であるが、原子力発電についての氏の予測は悲観的である。氏は、脱原発派と呼んで良いと思ふが、化学プラントのエキスパートであり、エネルギー産業の只中で、技術者として実務を重ねて来ただけに、氏が原発について語る言葉は、極めて具体的である。例えば、BWRとPWRの差異に注目して、PWRは再稼働しても良いかも知れないと論する下りなどは、批判はあろうが、二極分裂に成りがちな原発を巡る議論の中では、ひとつの見解として議論の対象に成ってしかるべきだろう。(私個人は、再稼働全てに反対である)
本書の中で、最も注目すべきは、次の指摘であろう。
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多くの自然現象、社会現象が「べき分布」に従うことが指摘されている。
地震の「マグニチュード」とその「発生確率」、「資源量分布」などが、その典型的な例である。
インターネットコマースの世界で「ファット・テール」とも呼ばれる、「平均から極端に離れた事象」の発生する確率が、「ガウス分布」から予想される確率よりも高いことが分かっている。これは、「原発事故」が「べき分布」となる可能性を示唆している。
(本書60ページ)
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この様な事を私は、全く知らなかった。こうした数学的指摘は、もっと注目され、議論されるべきである。
分量としてはコンパクトな本であるが、その密度は恐ろしく濃い。原発の存続、再稼働を支持する人も、脱原発はの人も、この本は絶対に読むべきであると思ふ。
(西岡昌紀・内科医/原子力の日(10月26日)に)
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