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5つ星のうち 4.0
原発は巨大な石油製品である。--良い本だが、もう少し定量的記述が欲しかった。,
2015/10/26
原子力発電の是非について議論が行なはれる時、原発支持派が非常にしばしば挙げて来た原発支持の理由は、「二酸化炭素による地球温暖化」であった。
即ち、人類は、石油や石炭を燃やし過ぎた。その結果、放出された二酸化炭素が、温室効果によって地球を温暖化して居る。その結果、南極や北極の氷が溶け出して、世界の多くの場所が水没する危険に直面して居る。だから、原子力発電を推進して、二酸化炭素の放出を減らさなければならない、と言ふ話である。
しかし、この話には問題が有る。それは、原子力発電は、ウランの採掘から、ウラン濃縮、原発の建設、そして使用済み核燃料の管理、原発の解体などに石油や石炭を大量に消費する。従って、仮に「二酸化炭素による地球温暖化」が本当だとしても、原発推進が、二酸化炭素抑制にどれだけ有効か?と言ふ問題に、原発支持派が十分答えて居ない事である。
こうした問題を(原子力発電の)エネルギー収支問題と言ふが、これは古くて新しい問題である。そして、チェルノブイリ原発事故や福島第一原発事故の様な大規模な原発事故が起きた場合、事故後の処理にどれだけ石油や石炭が必要に成るかと言ふ問題も有るのである。
本書は、こうした視点から、原子力発電が「地球温暖化」に有効だとする主張に批判を加えた本である。
良い本である。原発が「地球温暖化」対策に成ると思って居る人は、是非、この本を読んで欲しいと思ふ。
しかし、この本の内容は不十分である。先ず、何と言っても不十分なのは、「大気中の二酸化炭素が増えた。その結果、地球が温暖化して居る」と言ふ主張に対して、著者の西尾氏が十分検証を加えて居ない事である。この議論の前提について、或る専門家は、次の様に述べて居る。
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二酸化炭素の濃度が現在の10倍くらいになれば、極地の氷が完全に溶けることもあるかもしれませんが、大気中のわずか0.04%でしかない二酸化炭素が年間1~1.4ppm程度の増加率で、この安定ゾーンを超えるのは無理でしょう。人為的に排出される二酸化炭素の量では到底「足りない」のです。そして、現在のように、地表に氷床があるかぎり、気温はほぼこの「安定ゾーン」以上は上がらないのです。
(丸山 茂徳「『地球温暖化』論に騙されるな!』(講談社・2008年)36ページ)
丸山茂徳(まるやましげのり)1949年徳島県生まれ。徳島大学卒業後、金沢大学、名古屋大学で学び、米スタンフォード大学などを経て89年に東京大学助教授。93年より東京工業大学理学部教授に。地質学者で専攻は地球惑星科学。地球のマントル全体の動き(対流運動)に関する新理論を打ち立てて学界に衝撃を与え、日本地質学賞、紫綬褒章を受章。主な著書には『46億年、地球は何をしてきたか』(岩波書店)、『生命と地球の歴史』(岩波新書)、『ココロにのこる科学のおはなし』(数研出版)などがある。(本書巻末の著者略歴)
http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E5%9C%B0%E7%90%83%E6%B8%A9%E6%9A%96%E5%8C%96%E3%80%8D%E8%AB%96%E3%81%AB%E9%A8%99%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%AA-%E4%B8%B8%E5%B1%B1-%E8%8C%82%E5%BE%B3/dp/4062147211/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1445923031&sr=1-1&keywords=%E3%80%8C%E5%9C%B0%E7%90%83%E6%B8%A9%E6%9A%96%E5%8C%96%E3%80%8D%E8%AB%96%E3%81%AB%E9%A8%99%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%AA%21
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又、この専門家(丸山茂徳氏)は、世界的な「地球温暖化」キャンペーンに次の様な裏が有る事を語る。
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「地球温暖化=二酸化炭素犯人説」をおかしいと思っている科学者は、国内だけでなく世界中にたくさんいます。私が知っているだけでも数十人はいる。しかし、彼らの多くは、「その疑問は私もわかるのだが、公式には内緒にしてくれ」というのです。研究者の世界というのは、おそらくみなさんが思うよりもずっと閉鎖的です。みんな、「温暖化」という流れに逆らうのが怖いのです。
2006年にアメリカで学術会議が開催され、私も日本から招待されました。そこで、あるドイツ人の学者と話す機会がありました。その方は過去6億年間の気象データをもとに研究をしている方で、「地球温暖化=二酸化炭素犯人説」がまったくナンセンスな議論だと断定していました。
私も別の視点から議論をして、お互いに意見を同じくし、固く握手を交わしたものです。その方は、私に「君は気をつけなさい、こういうことをいって科学の世界で生き延びるのは困難ですよ」というのです。彼は大学を定年退職となり、故国ドイツを離れてカナダに移住し、悠々自適の生活を送っていました。「おれはもう関係ないが、君はまだ若いから大変だ」というわけです。
(丸山 茂徳「『地球温暖化』論に騙されるな!』(講談社・2008年)79~80ページ)
http://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E5%9C%B0%E7%90%83%E6%B8%A9%E6%9A%96%E5%8C%96%E3%80%8D%E8%AB%96%E3%81%AB%E9%A8%99%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%AA-%E4%B8%B8%E5%B1%B1-%E8%8C%82%E5%BE%B3/dp/4062147211/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1445923031&sr=1-1&keywords=%E3%80%8C%E5%9C%B0%E7%90%83%E6%B8%A9%E6%9A%96%E5%8C%96%E3%80%8D%E8%AB%96%E3%81%AB%E9%A8%99%E3%81%95%E3%82%8C%E3%82%8B%E3%81%AA%21
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西尾莫氏がこの本を書かれた事は高く評価するし、学ばされた事も有るのだが、そもそも「二酸化炭素による地球温暖化」と言ふ話が本当なのか?についての検証が不十分な事は、この本の弱点であり、残念な事である。
次に、その原子力発電のエネルギー収支についてであるが、西尾氏は、例えば、次の様な事を指摘する。
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原発の建物や機器は鉄とセメントのかたまりですから、鉄やセメントをつくったり運んだりするのに、かなりのCO2を出します。電力中央研究所が2000年3月にまとめた報告書「ライフサイクルCO2排出量による発電技術の評価」によれば、100万キロワット級原発1基の建設に要する鉄鋼は8.7万トン、コンクリートは106万トン(港湾施設なども含む)で、CO2排泄量はそれぞれ13万トン、12万トンとされていました。同じく100万キロワット級の石炭火力と比べて、鉄鋼で約2倍、コンクリートでは約3倍です。
ウランから燃料をつくるのにも、CO2を出します。
(本書15~16ページ)
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これなどは、原子力発電のエネルギー収支を検討する上で、貴重な情報である。他の本では、こうした定量的な情報が書かれて居る事が少ないので、非常に有意義な記述である。しかし、こうした定量的な情報をもっと書いてくれたら、更に良かったと、思ふ。
例えば、次の様なデータを西尾氏は書くべきであった。これは、原発の核燃料である濃縮ウランを製造する過程で、実は、大量の電力が消費される問題についての数値である。
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ガス拡散法の最大の欠点は電力消費量が大きいことである。(中略)ガス拡散プラントで消費される電力は、そのプラントで製造される濃縮ウランを使って発電される電力の約5%に及んでいる。
(東邦夫(著)『ウラン濃縮』(日刊工業新聞社・1971年)176ページ)
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%B3%E6%BF%83%E7%B8%AE-1971%E5%B9%B4-%E6%9D%B1-%E9%82%A6%E5%A4%AB/dp/B000JA2YFK/ref=sr_1_2?ie=UTF8&qid=1446001523&sr=8-2&keywords=%E3%82%A6%E3%83%A9%E3%83%B3%E6%BF%83%E7%B8%AE
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こう言ふ数字をもっと書いて欲しかった。だが、それでも、貴重な情報が色々と書かれてある。原発が「地球温暖化」対策として有効だ、と言ふ話を鵜呑みにして居る人に、一読をお薦めする。
(西岡昌紀・内科医/原子力の日(10月26日)に)
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