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(書評)舘野淳著 「徹底解明 東海村臨界事故 」(新日本出版社・2000年)    西岡昌紀
http://www.asyura2.com/15/genpatu44/msg/208.html
投稿者 西岡昌紀 日時 2015 年 10 月 27 日 17:15:43: of0poCGGoydL.
 

(書評)舘野淳著 「徹底解明 東海村臨界事故 」(新日本出版社・2000年)
http://www.amazon.co.jp/%E5%BE%B9%E5%BA%95%E8%A7%A3%E6%98%8E-%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E6%9D%91%E8%87%A8%E7%95%8C%E4%BA%8B%E6%95%85-%E8%88%98%E9%87%8E-%E6%B7%B3/dp/4406027254/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1445920248&sr=8-1&keywords=%E5%BE%B9%E5%BA%95%E8%A7%A3%E6%98%8E%E3%80%80%E6%9D%B1%E6%B5%B7%E6%9D%91

5つ星のうち 5.0

東海村臨界事故は多数の住民を被曝させた大事故であった。,

2015/9/30


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 また、私が信頼している人から直接聞いた話であるが、東京のがんセンターにある子供の病棟に茨城出身者が多く、東海村事故のせいとの観測が関係者の間で囁かれている。ドイツでは政府が公表し、日本では隠匿されている。今後、こうした問題は公開の場で討議されるべきである。

(西尾幹二「平和主義ではない『脱原発』」(文芸春秋・2011年) 110ページ)
http://www.amazon.co.jp/%E5%B9%B3%E5%92%8C%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%8C%E8%84%B1%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%80%8D%E2%80%95%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%82%AF%E6%96%87%E6%98%8E%E8%AB%96-%E8%A5%BF%E5%B0%BE-%E5%B9%B9%E4%BA%8C/dp/4163748903/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1445921806&sr=1-1&keywords=%E5%B9%B3%E5%92%8C%E4%B8%BB%E7%BE%A9%E3%81%A7%E3%81%AF%E3%81%AA%E3%81%84%E3%80%8C%E8%84%B1%E5%8E%9F%E7%99%BA%E3%80%8D
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1999年9月30日、茨城県東海村で起こった臨界事故は、世界を震撼させた。今日までに発表されて居る報告に依れば、同日朝、株式会社JCOにおいて、予定よりも遅れて居た作業を急いだ作業員が、中濃縮ウラン化合物の処理中に、許可条件に違反した作業を行なった結果、溶液中で核反応が起こり、その結果、複数の作業員が急性放射線障害に陥った上、周辺住民の避難を必要とする事態に至ったとされて居る。事故の原因については、事故直後に、同施設ではプルトニウムを扱って居たのではないか?と言ふ疑問の声も出されて居るが、真相は不明である。いずれにしても、中性子線が多量に放出された結果、作業員の死と言ふ悲劇を生んだこの臨界事故は、福島第一原発事故(2011年3月11日)以前に日本で起きた原子力事故の中で、最も深刻な時事故であったと言って良い。

本書は、その東海村臨界事故を、この分野の専門家である舘野淳氏、野口邦和氏、青柳長紀氏が共同執筆する形で総括した本である。

本書は、200ページ余のコンパクトな本であるが、内容は恐ろしく密度が濃い。そして、報道のみから一般の私たちが抱いて居るこの事故についてのイメージが真実と懸け離れた物である事を分かりやすい言葉で説明している。例えば、これを読んで頂きたい。

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 JCO臨界事故では多数の周辺住民が被曝したにもかかわらず、体内ナトリウム24の放射能から被曝線量が推定されている者は7名しかいない。科学技術庁は当初、住民の被爆者は7名であるかのごとき発表をしていた。新聞なども科学技術庁の発表をそのまま鵜呑みにして報道していた。そのため住民の被曝は7人であると未だに思い込んでいる人がいるが、多数の住民が被曝していることを見落としてはならない。

(本書83~84ページ)
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本書のこうした指摘を読むと、この臨界事故がいかに深刻な出来事であったかが痛感される。そして、次の様な科学的指摘にも考え込まされる。

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 JCO事故のひとつの特徴は、臨界現場から漏れ出た中性子線が周辺環境の元素の原子核と核反応を起こして、放射化生成物が新たに生成されたことである。
 原発事故でも核分裂生成物に加えてコバルト60(半減期5.27年)やマンガン54(同312.1日)などの放射化生成物が排出されることがあるが、これらの放射化生成物は、すべてが原子炉内の核反応で生成されたものである。原子力施設から漏れ出た中性子線によって周辺環境で核反応が起こり放射化生成物が生成するような事態は、わが国ではじめての経験ではないだろうか。
 よもや人間が放射化してナトリウム24が体内に生成するような事故が起ころうとは、だれも思っていなかったに違いない。国民にとって非常に衝撃的な出来事だったと思う。

(本書119ページ)
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総じて思ふ事は、原子力事故は、それぞれが独自の性格を持って居ると言ふ事である。そして、福島第一原発事故から4年半が経った今この本を読むと、1999年に起きたこの事故から、日本の原子力産業は何を学んだのか?と言ふ疑問を覚えずに居られない。

著者らは、原子力発電その物には反対しない立場と思はれる。脱原発派である私はこの点で著者らと意見を異にするが、この本から学ぶべきことは実に多い。

本書が、原子力発電に賛成する立場の人々と反対する立場の人々の双方に読まれる事を期待する。

(西岡昌紀・内科医/東海村臨界事故から16年目の日に)

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