43. 2015年10月20日 05:46:35
: 1laTubqZew
米の全袋検査では、次の4ケースが考えられる。(1) 米のキログラム当たり放射能強度の真値が基準値以下である a) 米の全袋検査におけるキログラム当たり放射能強度の測定値がスクリーニングレベル以下である この場合、検査は合格となる。 b) 米の全袋検査におけるキログラム当たり放射能強度の測定値がスクリーニングレベル超過である この場合、精密測定をし、その結果、検査は合格となる(はずだ)。 (2) 米のキログラム当たり放射能強度の真値が基準値超過である a) 米の全袋検査におけるキログラム当たり放射能強度の測定値がスクリーニングレベル以下である この場合、本来なら不合格にしなければいけないが、検査は合格となってしまう。 b) 米の全袋検査におけるキログラム当たり放射能強度の測定値がスクリーニングレベル超過である この場合、精密測定をし、その結果、検査は不合格となる(はずだ)。 以上をまとめると次表の通り。 米のキログラム当たり放射能強度(Bq/kg) ------------------------------------- 真値 全袋検査における測定値 結果 ---------- -------------------------- ------------------------------ 基準値以下 スクリーニングレベル以下 合格になる 基準値以下 スクリーニングレベル超過 精密測定で合格になる(はず) 基準値超過 スクリーニングレベル以下 誤って合格になる(※) 基準値超過 スクリーニングレベル超過 精密測定で不合格になる(はず) ---------- -------------------------- ------------------------------ 問題になるのは(※)のケースだが、これがどのくらいの確率で発生するのか考えてみる。 先ずは基本的なことから始める。 キログラム当たり放射能強度がb[Bq/kg]である質量m[kg]の試料をt[秒]の間測定した結果得られる崩壊数を確率変数Xで表すと、Xは母数b*m*tのポアソン分布に従うから X 〜 Po(b*m*t) であるが、b*m*tが大きければ正規近似でき X 〜 N(b*m*t,b*m*t) 従って X/(m*t) 〜 N(b,b/(m*t)) となる。つまり、この場合、試料のキログラム当たり放射能強度は、平均b、標準偏差√(b/(m*t))の正規分布に近似的に従う。 次にスクリーニングレベルであるが、これは スクリーニングレベル 基準値の1/2以上とすること。スクリーニングレベルにおける測定値の99%区間上限が基準値レベルで得られる測定値以下であること。 と規定されているだけで、「スクリーニングレベル」の試料と「基準値レベル」の試料の質量がわからない。更に測定時間もわからない。 そこで、ここでは、これらの試料の質量は米一袋の質量と同じであり、測定時間は全袋検査の測定時間と同じであると仮定する。この時 s+√(s/(m*t))*z ≦ 基準値レベルで得られる測定値 s: スクリーニングレベル[Bq/kg] m: 米一袋の質量[kg] t: 全袋検査の測定時間[秒] z: 標準正規分布の上側1%点(約2.32635) http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/CGI-BIN/pxg.html を参照のこと が成立する。また「基準値レベルで得られる測定値」に関しては c-√(c/(m*t))*w … @ c: 基準値[Bq/kg] m: 米一袋の質量[kg] t: 全袋検査の測定時間[秒] w: 標準正規分布の上側(100*p)%点 p: 測定値が@以下になる確率 と仮定する。(実際はこの値には実測値を用いるようだが、やむを得ない場合は回帰直線から求めてもいいらしい。) 従って s+√(s/(m*t))*z ≦ c-√(c/(m*t))*w s: スクリーニングレベル[Bq/kg] c: 基準値[Bq/kg] m: 米一袋の質量[kg] t: 全袋検査の測定時間[秒] z: 標準正規分布の上側1%点(約2.32635) w: 標準正規分布の上側(100*p)%点 p: 基準値レベルの測定値が@以下になる確率 であるから s ≦ c-√(c/(m*t))*w-√(s/(m*t))*z s ≦ c-√(c/(m*t))*(w+√(s/c)*z) となり 1/2 ≦ s/c であることから w+√(1/2)*z ≦ w+√(s/c)*z となる。 w+√(1/2)*z = w+√(s/c)*z の時が一番精度が悪い(誤って合格になる)ので、このケースについて考えてみると p = 0.01 の場合 w+√(1/2)*z = z+√(1/2)*z ≒ 2.32635*(1+√(1/2)) ≒ 3.97133 であるから -3.97133 ∫Φ(x)dx ≒ 3.57362e-05 -∽ Φ(x)は標準正規分布の密度関数 http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/CGI-BIN/gxp.html を参照のこと となる。つまり、基準値レベルで得られる測定値の下限を p = 0.01 で定めると、基準値を僅かに超過した米は、10万袋を全袋検査して3〜4袋が誤って合格になる、という程度である。 大雑把な計算だがスクリーニングには、これくらいの精度はあるから、原理的には問題にはならないと思う。 但し、運用上の問題は有り得る。例えば、スクリーニングレベル超過なのにゲルマにかけないとか…。 |