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2015年09月29日 (火) [NHK総合]
くらし☆解説 「原発からの避難 広がる"格差"」
早川 信夫 解説委員
岩渕キャスター)
東日本大震災から4年半あまりが過ぎました。原発事故の影響でふるさとを離れて避難した人たちは今どうしているのでしょうか。早川信夫解説委員に話を聞きます。
Q1.福島県から県外に避難している人は今どうなっているのでしょうか?
A1.およそ4万5千人にのぼります。この1年で2千人あまりが県内に戻りました。
Q2.この時間では、節目ごとに原発事故から避難した人たちのことを取り上げてきましたが、今回も早川さんは新潟県で取材してきたのですね?
A2.民間の「311被災者支援研究会」が今月初めに行った聞き取り調査に同行してきました。新潟県は、震災直後に全国で最も多くの人たちが避難し、今も東京、埼玉に続いて、全国で3番目に多い3600人あまりが避難生活を送っています。この聞き取り調査は、震災直後から新潟県を中心に行っているもので、今回が14回目です。
Q3.避難している人たちからどんな声が聞かれたのですか?
A3.避難指示を受けて避難したのか、自主的に避難したのかで傾向は大きく分かれます。避難指示区域の人たちは東京電力からの賠償金を毎月受け取っていますのでそれなりに安定した生活を送っています。ところが、避難指示を受けていない地域から自主的に避難している人は、賠償金がない分、生活費は自分でまかなわなくてはなりません。生活面での格差を訴える声が聞かれました。ただ、避難指示を受けている人たちの間にも、元住んでいた場所によって、帰れる場所となるのか、ならないのか。たとえ帰れるとしても、元のように住めるのか、住めないのかという精神的な面での“気持ちの格差”がみられました。
Q4.避難指示は次第に解除されつつあるようですね?
A4.段階的に解除される地域が広がっていて、政府は原発に近く放射線量の高い「帰還困難区域」以外の地域については、さ来年の3月までに避難指示を解除する方針を示しています。しかし、そうした地域に住んでいた50代の男性は、「本当に帰れるかどうかもわからないし、帰れると言われても、病気の母親を通わせる病院がなく心配で戻れない」と話しています。この男性は、食堂を経営し、近所の人たちに自分の釣った魚をふるまうのが楽しみだったと言います。その楽しみを奪われた今となっては「近所の人たちも戻ってこないし、釣った魚をふるまえないのに帰っても仕方がない。人生仕上げの時間を奪われて、帰る気力も起きない」と話していました。
Q5.生活の再建が大きなカギになるのですね?
A5.そうなんです。もう一つのカギは、こどもの教育です。こどものためにと賠償金をもとに避難先に家を建てたという40代の女性は、「除染や復興が進んでいない現状をみるともう戻れないのではないかと不安は増すばかりだ。こどもたちが成長しきるまでは帰らないと覚悟を決めている」と話していました。
Q6.避難指示が解除される予定のない地域の人はどうなのですか?
A6.中には、元の家に戻るのはあきらめて車で墓参りができる程度の場所に土地を買い求めて引っ越すという人もいました。また、妻と二人で避難生活を続けるという60代の男性は「まだ帰れないと決まったわけでもないのに、除染を理由にお墓をどかしてくれと言われ、がく然とした」と話し、帰れるかもしれないという希望を簡単に打ち砕くような心ない物言いに怒りをあらわにしていました。
帰れるかどうかの見通しによって、精神的な面での“気持ちの格差”が広がっているように感じます。
Q7.自主的に避難している人の状況はどうなのですか?
A7.賠償金がない分、家庭の経済力や生活力による違いがそのまま家計の格差となっています。こどもの健康への影響を心配して、福島に夫を残してお母さんとこどもで暮らしている家庭が多く、二重生活による家計の負担が重くのしかかっています。避難先で自分に見合った勤務条件の仕事を見つけるのが難しく、職場の理解を得て安定的な収入を得ている人と条件の悪い仕事を転々として思うように収入を得られない人とに分かれます。中には、福島で生活している夫やその両親から、「もうそろそろ帰ってくるように」と、仕送りをストップされたと嘆く人もいました。
Q8.私も子育て中なので、それだけでも大変なのに、こどもとお母さんだけの生活、大変じゃないですか?
A8.お母さんたちは気持ちが張りつめているので弱音を吐くことは少ないのですが、ふっとした瞬間に大変さを漏らします。避難先として借りているアパートにこどもの成長とともに一人になれる空間がなかったり、子育てについて相談したいときにそばに相談できる相手がいなかったりと目に見えない苦労をぼそっと話す人がいます。中には、こどもをしかった時「“ママはママじゃなくて、パパみたい。マパだ”と言われてショックだった。こんな時に夫がそばにいてくれたらと思う」と声を詰まらす人もいました。
Q9.自主避難の人には行政からの支援はあるのですか?
A9.住宅の無償援助がありますが、福島県は先ごろさ来年の3月までとする方針を明らかにしました。これに対しては「オリンピックには多額のお金を出せても、避難している人は支援できないのか」と批判する人もいれば、「そうなったらそうなったで、自分で何とかするしかない」と前を向かざるを得ないととらえる人もいました。中には「こどもを守るために避難しているのに、帰ってこいと言うばかりで理解してくれない夫と別れて、低所得になってでも、住宅支援を打ち切られた後も何らかの支援が受けられるようにしようと決意を固めた」と話す人もいました。
このように自身の生活力、それに夫の収入や理解の程度によって、生活基盤に大きな開きがあって、それが生活“格差”につながっています。
Q10.今後、こうした課題をどうとらえたらよいのでしょうか?
A10.新潟という限られた地域でみても、避難している人たちの状況はこれほど多様化しています。生活状況に応じた支援と自ら決断できる条件を整えることが必要です。最近、行政側から「避難者の自立」という言葉が聞かれるようになりました。自立して生きていくことは大事ですが、避難している人の間には、先行きに安心感のないままただ自立を求められているだけに感じられるという受け止め方が広がっています。自立を促すのであれば、将来の生き方を選択できるよう、一人一人の生活状況に応じた支援が必要ですし、まさに「自立的」に自ら考えて将来を設計できるように選択できる条件を整えることが急務です。
2人の子を持つ40代の男性は「地元の将来について、国や自治体は自分より上の世代の人ばかりで議論している。将来戻るか戻らないかを決めるのはこどもたち世代だ。もっとこどもたちの思いを大事にしてほしい」と話していました。こどもが将来を選択する。そうしたことも、真剣に考えるべき時が来ているように思います。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/700/228195.html
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