7. 2015年10月06日 16:58:50
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Business | 2015年 10月 6日 16:38 JST 関連トピックス: トップニュース, ビジネスアングル:東電が社債再開へ準備本格化、福島リスク・再稼働課題に http://s4.reutersmedia.net/resources/r/?m=02&d=20151006&t=2&i=1084864586&w=644&fh=&fw=&ll=&pl=&sq=&r=LYNXNPEB95099 10月6日、東京電力は2016年度中の公募社債の発行再開に向け本格的な準備に着手した。都内で2009年1月撮影(2015年 ロイター) [東京 6日 ロイター] - 東京電力(9501.T)は2016年度中の公募社債の発行再開に向け本格的な準備に着手した。来年4月の持ち株会社制への移行を前提に、福島第1原発のリスクを直接抱える持ち株会社でなく、新たに発足する送配電子会社が起債する方式とし、投資家の懸念を払しょくしたい考えだ。東電はアドバイザーとなる投資銀行の選定や格付け会社への根回しに動いており、今月からは機関投資家への説明を始める。 送配電会社による起債は16年度下期を想定、3300億円の調達が目標だ。東電の社債格付けは、格付投資情報センター(R&I)では投資適格の最低等級とされる「BBB−」だが、安定収益が見込める送配電会社は「A」以上の評価を狙う。 しかし、持ち株会社制の下、送配電部門は東電の一部債務を保証する方向にあり、発行体である子会社を東電の原発リスクからどう切り離すか、投資家を納得させて狙い通りの調達ができるか、など起債実現にはなお不透明な要素が残っている。 <社債発行、国有化離脱の試金石> 社債発行の再開について、東電は「16年度の市場復帰を掲げているが、発行額は未定でスキームも検討中」(広報)としている。 4年半前に起きた原発事故で信用を失った東電は、社債市場からの退場を余儀なくされた。10年度までの10年間で4兆5000億円を社債市場で調達していた同社は「金脈」を失い経営危機に陥ったが、当時の民主党政権の判断で経営破たんを回避。12年7月に東電は1兆円の公的資本を受け入れ実質国有化された。 14年1月、自民党政権下で認定された再建計画では、16年度に「自律的運営体制」に入ったと評価されれば、原子力損害賠償・廃炉等支援機構の議決権比率が50%未満になり、実質国有化から脱却できる。カギを握るのが社債市場への復帰だ。間接金融の与信も限界に近く、社債再開が同社の至上命題になっている。 <東電の財務構造、送配電依存に> 送配電会社が社債発行を担うのは、信用度を高める選択肢が他にないためだ。持ち株はコスト上限のめどがつかない福島第1の廃炉事業を抱えており、社債を公募できる状況にはない。 傘下に入る3子会社のうち、燃料・火力は中部電力(9502.T)と提携し、既存発電所の統合を検討しており、グループから出る可能性がある。小売りは来年4月の電力小売り全面自由化で競争の最前線に立つため、信用力は未知数だ。 一方、送配電部門は、今後も地域独占が維持されるなど安定した収益構造が強み。他方で、東電の財務構造が送配電依存を強めている状況もみられる。例えば、持ち株会社制に移行する際に、送配電会社は持ち株会社の一部債務を保証する見通し。東電の有利子負債(今年6月末で約6兆7000億円)に対し、送配電が1兆円規模の債務保証をつける方向だ。 子会社が一部保証するのは、融資銀行や社債保有者など既存の債権者を保護するのが狙い。「国は電力債をデフォルトさせないと腹を括っている」とある関係者は強調する。 <リスク遮断に懐疑の声、再稼働も課題に> 投資家にとって、最大の懸念は発行体となる送配電会社の経営が福島原発のリスクから守られるかどうか、という点。 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)アナリストの柴田宏樹氏はロイターの取材で、「送配電会社が社債を発行することで持ち株会社が抱える原発のリスクからはある程度遮断されるとしているが、現時点では不透明な部分もある」と述べた。 S&Pは東電の社債を投機的級の「BB+」に格付けしている。柴田氏は、社債が福島原発のリスクから十分に切り離されていなくても、スプレッドがリスクに見合うと判断されれば投資を考える投資家も出てくるだろうと指摘した。 さらに、今後の原発再稼働が見通しにくい点も社債発行の不安材料だ。再稼働の旗を降ろせない東電は「黒字継続には柏崎刈羽の再稼働が必要」(広瀬直己社長)との説明を続けているが、地元新潟県の泉田裕彦知事は再稼働に厳しい姿勢を崩していない。 来年10月には知事選が行われる見通しで、泉田氏の出馬意欲は強いとされる。再選なら再稼働が困難な状況が続くことも予想される。送配電会社による社債発行の最終段階と重なる時期だ。 ただ、「再稼働ができなければ社債を発行できない」といった単純な構図でもない。東電はコスト削減効果で過去2年間黒字を達成し、15年度は原油安というプラス要因も加わり、原発稼働がなくても黒字との見方が根強い。 東電にとってはジレンマともいえる状況にあり、「再稼働がないと黒字を続けられない」との説明を続けるなら、社債の公募にはマイナスに働きかねない。しかし「再稼働がなくても黒字は可能」との説明に転じれば、再稼働への世論の同意が一段と難しくなることも予想される。 (浜田健太郎 編集:北松克朗) http://jp.reuters.com/article/2015/10/06/tepco-idJPKCN0S00L720151006?sp=true |