http://www.asyura2.com/15/genpatu43/msg/776.html
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http://blogs.yahoo.co.jp/taked4700/13281366.html
1960年代の首都圏の放射性降下物は一万倍程度あったという話のトリック
2011年3月の福島第一原発事故で首都圏に降り注いだ放射性物質よりも、核実験が世界中で行われていた1960年代の方が、日本での被曝量が多かったというものです。ほぼ同様なことを、事故直後のテレビ番組でも東大などの教授・専門家の方が言われていて、相当に広く信じられていることだと思います。
具体的には、例えば次の記事です。
【完全版】 「あなたが子供だった時東京の放射能は1万倍!」週刊新潮2011.4.14号( http://blogs.yahoo.co.jp/…/39037968.%EF%BD%88%EF%BD%94%EF%B… )
しかし、この主張は明確なトリックであるのです。以下、そう考える根拠です。かなり長い記事です。時間がない方は、トリックであることの一番の根拠が7.に書かれているのでそこを読んでください。被ばく被害一般を考えるときには1.から順に読んでいただいた方が参考になると思います。
1.「被曝被害があったという疫学的な証拠はない」とか、または「被曝被害が無かったという疫学的な証拠がある」という主張がされているようですが、2011年の福島第一原発事故をめぐる福島県などの振る舞いを見ていると、こういった主張自体に信用性がありません。原子爆弾はアメリカが1945年に使用して以来、ずっと軍備の中の最重要なものであり、原子爆弾を保持しているかどうかは国際的な発言力を決定する大きな要素です。実際に、国際連合の安全保障理事会の常任理事国は、アメリカ・イギリス・フランス・ロシア・中国の5か国で、どこも原子爆弾を保有しています。原爆保有を正当化するために、被曝被害を認めないということが、ほぼどの国の軍部や政府にとっても当たり前の態度になってしまっています。このことが原因で、WHOやIAEAでも、ほとんど被曝被害が認められていないのです。隠ぺいされていることは、例えば、放射性希ガスの毒性につじて、研究は相当に行われている様子であるのに、ほとんど資料が公開されていない様子であることや、放射性物質の多くが重金属毒性を持つにも拘らず、ウランやプルトニウムの重金属毒性について、多分、全く情報公開がされていないことなどから明らかです。更に、福島の甲状腺調査で、切除した甲状腺の放射性セシウム量を調べていないことや、ソナー検査の時の画像データを診察時にすぐに患者側へ渡していないことなどを考えれば、被ばく被害が隠されていることは明らかです。また、そもそも、低線量被曝が直接的・短時間で健康被害となることはほぼまったくないと言え、エイズと同じように長期間が経過した後に二次的な健康被害が起こることも、被曝被害を分かりにくくしています。また、長期間後に低線量被曝の影響が明らかになるため、被曝以外の要素を除外することが難しく、実際に健康を害した当人自身が何が原因かを確認ができにくいこともあります。仮に低線量被曝被害がないのであれば、福島での甲状腺検査で摘出した甲状腺の放射性セシウム量を公開すればいいのですし、ソナー検査時の画像データをその場で保護者に渡せばいいのです。更に言えば、原子力発電所そのものを都市部に建設すればいいことです。甲状腺の放射性セシウム量を調べれば放射性ヨウ素の被曝量が分かるとするのは、福島第一原発事故では、地震発生直後の避難が遅れたからです。ごく初期に原子炉から漏れたと思える放射性希ガスや放射性ヨウ素で被曝をされた人たちは、その後に漏れてきたはずの放射性セシウムでもほぼ同じように被ばくをされたはずだからです。
2.1960年代の原爆実験、特に大気圏内実験によって、地球規模で大気や水が放射能汚染されました。このことは事実ですが、日本に与えた影響は福島第一原発事故による放射能汚染とは明確に異なります。異なる点は主に二つあります。
3.異なる点の第一は、放射性物質の飛距離です。原子爆弾の実験にしても、原発事故にしても、大気中への拡散はまず高熱による放射性物質の気化によって始まります。放射性希ガスなどはもともと気体ですが、放射性セシウムにしても放射性ウランにしても、普通の状態では金属ですから個体です。高温により気化したこういった金属原子は、大気中に拡散することですぐに酸化物になったり、大気中のさまざまなイオンと化合して、硫酸化合物や酢酸化合物、または硝酸化合物などになります。更に、空気中に漂う様々な微小物質、例えば花粉などに吸着されて、数ミクロンから数百ミクロン程度の大きさの微粒子となって行きます。人間が呼吸によって肺の奥の方へこういった微粒子を取り込んでしまうには、大きさが数ミクロン程度以内である必要があり、飛距離が大きくなるに従って微粒子の大きさは大きくなっていきますから、核実験場から数千キロ以上離れていた日本に飛来するころには、ほとんどの放射性微粒子は、数十ミクロン以上の大きさになり、肺の奥に取り込まれないようになっていたのです。なお、微粒子の健康影響については、「 微小粒子の健康影響」( https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/22/02-03.html )とか、「 微小粒子状物質(PM2.5)に関する情報の提供について」( https://www.nies.go.jp/whatsn…/2015/20150401/20150401-4.html )などがとても分かりやすいです。PM2.5とは、粒子の大きさが2.5マイクロメートル(ミクロン)以下の微粒子のことで、肺の奥に取り込まれてしまい、長期間排出されないという特徴があります。
4.3と同じことなのですが、植物に取り込まれる際にも、微粒子の大きさが問題になります。大きさが数ミクロン以下の場合は、葉面吸着や葉面吸収が起きやすいのです。また根からの取り込みも粒子の径が小さい方が容易です。放射能汚染された野菜や汚染された牧草など食べた家畜の肉などを通じて、体内被曝が起こります。たとえ一日に摂取する放射性物質が数ベクトル程度であっても数年程度そういった状態が続けば、相当な体内被曝状況になる様子です。これについてはネット上にさまざまなサイトがあります。「放射性セシウムを1日10ベクレル摂り続けると700日(約2年)で体内蓄積量は1400ベクレルを超える」( http://www.radiationexposuresociety.com/archives/933 )などです。
5.原子爆弾の実験による被曝と原発事故によるそれとで大きく異なることの第2点目は、核分裂生成物の発生量です。まず、一般的に誤解がされていることが多い様子ですが、天然ウランの毒性よりも、連続核分裂によって発生する核分裂生成物の方が放射能毒性はずっと強いのです。天然ウランにはウラン238が約99.3%、ウラン235が約0.7%含まれるとされていますが、ウラン238の半減期は44億年以上、核分裂性のウラン235も半減期は7億年以上あります。半減期が長いと言うことは放射線の発生間隔が長いということですから、放射性物質が同じだけの原子数あったとき、その半減期が長ければ長いほど放射能毒性は低いのです。簡単に計算すると、半減期が約44億年のウラン238と約7億年のウラン235では、半分になる期間が6倍以上違うわけです。福島第一原発事故で問題にされることが多いセシウム137は、原発の運転で比較的多量に発生し半減期も約30年ですから、天然ウランの大部分を占めるウラン238の半減期44億年と比べると一億倍以上の違いがあります。原子炉の運転で最も多く発生するプルトニウムであるプルトニウム239は半減期が約2.5万年ですから、ウラン238の半減期44億年と比べると20万倍程度の放射能の強さを持つことになります。
6.次に、原子爆弾で作られる核分裂生成物は原子炉の運転で作られるそれよりも格段に少ないのです。核分裂が起こると非常に大きなエネルギーが発生します。この巨大なエネルギーによって物質は高温になり、体積が急激に大きくなります。体積が大きくなることで原子間の距離が大きくなり、連続核分裂は起こりにくくなるため、核分裂生成物の発生も一瞬で終わってしまうのです。このことのため、原子爆弾のウランとかプルトニウムで核分裂が起こるのは1割から数割程度である様子です。広島に投下された原子爆弾リトルボーイについては、ウィキの記事( https://ja.wikipedia.org/…/%E3%83%AA%E3%83%88%E3%83%AB%E3%8… )によると、「積載されたウラン50kgのうち、1kgが核分裂反応を起こしたと推定されている」ということですから、キログラム単位の核分裂生成物が発生していることになります。長崎に投下されたプルトニウム原子爆弾についてもほぼ同じ様子です。翻って、原子炉を見ると、核分裂生成物の発生量は格段に多くなります。http://www.aesj.or.jp/…/…/taiwa_yamagata100717/saito_y10.pdf によると100万キロワット級の原子炉を一年運転するのに必要な濃縮ウラン燃料は約21トンである様子です。http://www.cnfc.or.jp/j/proposal/asia00/yamaji.htmlによると、「軽水炉の燃料はその約5%程度が核反応した時点で取り出される」ということです。核分裂するウラン235は、濃縮ウラン燃料の3から5%程度ですから、3%と仮定しても21トンの濃縮ウラン燃料には630キロものウラン235が含まれています。1年運転するとこの5%程度が核反応するわけで、30キロ以上が核分裂したことになります。現実的には、濃縮ウラン燃料中の大部分を占める核分裂をしないウランであるウラン238も中性子を吸収してプルトニウム239になります。プルトニウム239は5.で述べたようにウラン238の20万倍程度の放射能を持ちます。こういったことから、政府の公式発表でも、「福島第1原発1〜3号機から放出されたセシウム137は広島原爆の168.5個分」( http://shino.pos.to/energy/bomb.html )とされています。つまり、広島原発に比べて福島第一原発事故での核分裂生成物の量は少なめに見ても数百倍になるのです。
7.では、なぜ、1960年代の被曝量の方が1万倍も多いということになるかが問題となります。元記事には次のように書かれています。「たとえば63年8月に東京都中野区で計測されたセシウム137は、1平方メートル当たり548ベクレルだったが、90年代には50ミリベクレルに満たない月がある。ちなみに、ベクレルは放射性物質が1秒間に出す放射線の量。そこに”ミリ”が付くと数値は1000分の1になるので、両者の間には1万倍もの開きがある。つまり、高度経済成長真っ只中の東京であなたもまた、平時の1万倍にも上る放射能を浴びていたのである。」つまり、この「1万倍」は1960年代の1平方メートル当たりの月間降下量と平時のそれを比較したものであり、福島第一原発事故後の状況と比較したものではないのです。福島第一原発事故後の月間降下量は「定時降下物のモニタリング」( http://radioactivity.nsr.go.jp/ja/list/195/list-2.html )に載っています。平成23年12月分で見ても、福島では1平方メートル当たり11700ベクレルですから、1963年8月の548ベクレルの20倍程度のセシウム237が降下していたことになります。平成23年9月分( http://radioactivity.nsr.go.jp/…/conten…/3000/2513/view.html )で見ると、さいたま市で1平方メートル当たり23ベクレルですから平時を50ミリベクレルと仮定しても、平時の500倍程度のセシウム237が降下していたことになります。なお、「平成23年5月分」( http://radioactivity.nsr.go.jp/…/24/194_1_H2305data_0713.pdf )になると福島県で99600ベクレル、さいたま市で130ベクレル、神奈川県茅ヶ崎市で 120ベクレルです。これらは、平時50ミリベクレルと比較すると、順番に20万倍、2600倍、2400倍程度になります。
8.中国での核実験についてですが、「1964年10月16日に新疆ウイグル自治区のロプノール湖にて初の核実験が、1967年6月17日には初の水爆実験が行われた」( https://ja.wikipedia.org/…/%E4%B8%AD%E5%9B%BD%E3%81%AE%E6%A… )ということです。つまり、「63年8月に東京都中野区で計測されたセシウム137は、1平方メートル当たり548ベクレルだった」という548ベクレルには中国で発生したものは含まれていないのです。なぜ、「63年8月」という時期の数値と比較されているかと言えば、部分的核実験禁止条約が1963年8月5日にアメリカ、イギリス、ソ連との間で調印されたからでしょう。つまり、これ以降、アメリカ、イギリス、ソ連では大気圏内での核実験を原則として行っていないのです。よって、「63年8月」という時期は、日本から数千キロ以上遠いところで行われた核実験の結果出てきたセシウム237のもっとも月間降下量が大きい時期が選ばれたと言うことのはずです。当然、この時期に日本に降下した放射性微粒子の大部分は大きさが数十ミクロン以上であったはずで、呼吸により肺に吸い込む割合は非常に小さかったはずです。
2015年9月7日16時10分 武田信弘
- 炉心損傷事故で放射性ヨウ素はヨウ化セシウムとても放出される taked4700 2015/9/10 00:07:40
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