へぇー。読まなくっちゃ。

そこはフランスのパリにあるレストランだった。
日本人親子三人づれが注文をしおわり、テーブルについて待っていた。

父親らしき男が呼び鈴でボーイを呼んだ。

「もう30分以上待ってるのに何も出てこないぞ。どういうつもりだ。」

ボーイは答えた。

「これは大変失礼いたしました。すぐお持ちいたします。」

ボーイは厨房に消えると蓋を乗せた、大きな楕円形の皿をかかえて戻って来た。

そしてお皿をテーブルの真ん中に置くと、うやうやしく蓋を開けながら言った。

「大変お待たせいたしました。当店自慢の料理でございます。」

美味しそうな香りが立ちあがる・・・かと思ったその瞬間、テーブルについていた家族の表情は凍りついた。

「・・・・なんだこれは（怒）！」

「これ、料理じゃないわ！」

「食べられないよ（泣）」

それは黒いうろこのない、長いさかなだった。
深海魚らしく使うことのない白目を剥きだし、身体より幅のある口をぱっくりと開けたまま、横たわっていた。料理していない生魚を提供されただけでも相当なことであった。
それよりもさらに怖ろしいことに、その魚の頭は、ふたつに分かれてついていた。
「今朝マルセイユの港で水揚げされた魚だ。フランス近海でもこんなのがだんだん獲れるようになってきたんですよ。」

ボーイは笑みを絶やさないで言った。

「きさまどういうつもりだ！」

父親らしき男が立ちあがって睨んだ。

「あなた方こそどういうつもりなんですかね。」

ボーイは言った。

「知っていますよ。あなたの名前。たしか日本で大手のＸ新聞の編集さんでしたよね。インターネットで写真が載っているから知ってますよ。日本中に放射能がばら撒かれて命の危険が広がっているというのに、読者にろくな報道をせずに放置。今では日本は存亡の危機だ。よく自分たちだけが海外に逃げてのんびりと食事なんてできたものですね。」

「な、なんだと。それが客に対する態度か。金ならあるぞ。早く注文の料理を持って来い。」

ボーイの顔から一瞬笑顔が消えた。が、すぐ元に戻った。

「かしこまりました。」

しばらくして、今度は小さな皿を持ってきた。

蓋を開けると、また料理ではなかった。

女性の写真が一枚のせてあるだけだった。

「なんだこれは！」

「妻の写真ですよ。」

「関係ないだろ！」

「死んだんです」

「以前は東京に店を出してました。その後５歳になる息子も甲状腺癌と白血病になったんです。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・。」

さすがの親父も二の句が継げなかった。

ボーイは笑顔で言った。

「以上でフルコースはお仕舞いです。あ・デザートをお付けいたしましょうか？」

さすがに居たたまれなくなって、三人とも立ち去ろうとした。

「お待ち下さい。デザートは」

出口に差し掛かる頃、背中から塩を浴びせられたのがわかったが三人とも振り向かずにそそくさと店を出た。

帰りのタクシーの中で、若い奥さん（もと愛人に中でいちばん従順だった）がぽつんとつぶやいた。

「こんな目に逢うなんて・・・やっぱり日本から逃げるんじゃなかったわ」

「お前がパリで買い物したいと言うから、引っ越してきたんだぞ。」

「そうね。最近ご近所さんで、挨拶もしてくれない人がいるの。」

「そんな奴は相手にするな。こっちは金がある。」

黙っていた子供が言った

「僕、苛められてるの。」

「なんだって？」

「せっかく日本人学校に入ったんじゃない。」

「おまえの親父がちゃんと報道しないせいで、日本がああなったって。」

子供は泣きだした。

父親はどなりちらし、母親はヒステリーを起こした。

せっかくの土曜の楽しみは、台無しになった。

しかし、かれらが受ける試練は、これからが本番だった。

家に帰ると、ドアの前にカメラを持った男女の集まりが一斉にマイクを向けて来た。

言わずと知れた報道関係者だった。
父親は何も言わずドアを開けると、妻と子供を引っ張り込むとドアを閉めた。

もちろんこれは皮切りに過ぎなかった。

どこに行ってもかれらは追いかけて来た。仕事場にも、レストランにも。
なにしろインターネットで元大手報道機関の役員で、『あの頃』の日本を破滅に導いた張本人として顔は世界中に知れ渡っていた。

前もって電話を入れて来る紳士的な者がいれば、ロッカーの中に潜んで開ければいきなりカメラを使う者までいた。

記者たちはまだよかった。
、
放射能のせいで仕事が無くなった漁業関係者は、陽に焼けた顔で仕事を返せと凄んできた。

日本から命からがら脱出してきたものの、家族を失った者が訪問してくることもあった。

彼らは鬼のような形相をして訴えて来た。
またある者は幽鬼のような顔をして、呪ってやると言ってきた。

あまりの怖さに家族は家に引きこもり、しまいにはフランスを、いやとうとうヨーロッパから逃げた。

一家は東南アジアで暮らし始めた。

しかし誰にも正体を知られることなくに暮らせる国は、不便を強いられた。

ある日泥棒が入って金庫だけでなく豪華な家財道具も皆持ってったが、警察に言うと面が割れるので泣き寝入りするしかなかった。

すでに福島県では子どもの甲状腺がんだけでも通常の数百倍以上の頻度で出ていますが、何か？

これではまったく説得力がないんだが、もしかして幸福の科学では福島県産を
食べるのを禁じられているのか？

どのツラ下げてお天道様の下を歩くのか…