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2015年05月22日 (金)[NHK総合放送]
視点・論点 「電源構成割合の問題点」
東京理科大学大学院教授 橘川武郎
経済産業省は、2015年4月28日に開催された総合資源エネルギー調査会の小委員会において、2030年の電源構成(電源ミックス)を「再生可能エネルギー22〜24%、原子力20〜22%、石炭火力26%、液化天然ガス火力27%、石油火力3%」とする原案を提示しました。この原案は政府案の扱いとなり、6月7〜8日に開催されるドイツ・サミット(主要国首脳会議)までに、その数値のまま事実上、確定する見通しです。
これまでの多くの場合、電源ミックスは、政府が3〜4年に1回策定するエネルギー基本計画に合わせて提示されてきました。しかし、今回は事情が異なり、東京電力・福島第一原子力発電所事故後の原子力発電に対する厳しい世論の影響もあって、昨年4月に安倍晋三内閣が4年ぶりにエネルギー基本計画を閣議決定した際には、ミックスの数値を決めないまま先送りされました。約1年経ってミックスの数値が示されたのは、ドイツ・サミットが迫ったことに加えて、今年11月末にパリで開催されるCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)で2020年以降の地球温暖化対策の具体的枠組みが決定されることになっており、そこでわが国としての温室効果ガス排出量削減目標を明示するためには電源ミックスなどが確定されている必要があって、そのタイムリミットが迫ったことによるものです。
経済産業省は、電源ミックスの原案提示と同時に、家庭用や自動車用、工場用の燃料などを含む1次エネルギーの2030年における構成案を、「石油32%、石炭25%、天然ガス18%、再生可能エネルギー13〜14%、原子力10〜11%」と発表しました。
国民のあいだには、2016年に電力市場が、2017年にガス市場が、それぞれ全面自由化されるにもかかわらず、わざわざ将来の電源ミックスや1次エネルギー構成を政府が決めることに意味があるのか、という疑問の声もあります。
しかし、エネルギー関連の設備投資には長期的視点が不可欠であり、将来のエネルギー構成に関する国としての見通しが明確でないと、必要なエネルギー関連施設の形成に支障が生じることになりかねません。また、1次エネルギー構成見通しが存在しないと温室効果ガス排出量削減目標を設定することも、困難になります。その意味で、電源ミックスや1次エネルギー構成を決定すること自体には意義がある、と言うことができます。
問題は、今回の電源ミックスに関する政府案が、適切なものであるか否かです。
この点を判断するうえでの基準とすべきは、昨年、閣議決定されたエネルギー基本計画の内容です。同計画では、原子力発電への依存度について、「省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所の効率化などにより、可能な限り低減させる」と述べています。また、再生可能エネルギーについては、「2013年から3年程度、導入を最大限加速していき、その後も積極的に推進していく」と書いています。この文言をふまえて安倍首相は、「原発依存度を可能な限り低減する」、「再生可能エネルギーを最大限導入する」と、繰り返し表明してきました。
はたしてこの公約は、守られたと言えるでしょうか。残念ながら、答えは「ノー」であると言わざるをえません。
まず、原子力発電への依存度について、考えてみましょう。
2012年の原子炉等規制法の改正によって、原子力発電所については、運転開始から40年経った時点で廃炉とすることが原則とされ、特別な条件を満たした場合だけ1度に限ってプラス20年、60年まで運転を認められることになっています。現在、日本に存在する48基の原子炉のうち、2030年12月末になっても運転開始後40年未満のものは18基にとどまります。つまり、「40年運転停止原則」が厳格に運用された場合には、30基が廃炉になるわけです。残る18基に、現在建設中の中国電力・島根原子力発電所3号機と電源開発株式会社・大間原子力発電所が加わっても、20基にしかなりません。これら20基が70%の稼働率で稼働したとすると、2030年に約1兆kWhと見込まれる総発電量のほぼ15%の電力を、原発は生み出すことになります。
「40年運転停止原則」が効力を発揮すると2030年における原発依存度は15%前後となるわけですから、それより5〜7ポイント多い今回の政府案の「20〜22%」という数値は、原子力発電所の運転期間延長か新増設かを前提としていることになります。安倍内閣ないし経産省は、「現時点で原子力発電所の新増設は想定していない」と言っていますから、この5〜7ポイントの上積みは、ひとえに既存原発の40年を超えた運転、つまり運転期間延長によって遂行されるわけです。「40年運転停止原則」に則った場合、2030年までに廃炉が予定される30基のうち、関西電力・美浜1号機など5基は、すでに廃炉が決まっています。残る25基のうちには、東京電力・福島第二原子力発電所の4基も含まれています。それを差し引いた21基のうち、かなりの原発を運転延長しなければ、政府案が言う5〜7ポイントの上積みを達成することはできません。つまり、現行の原子炉等規制法の「40年運転停止原則」ではなく、同法が例外的に可能性を認めた「60年運転」が常態化することになるわけです。このような原子炉等規制法の強引な解釈は、「原発依存度を可能な限り低減する」という公約とは合致しません。政府の「原子力20〜22%」案について、公約違反だと言わざるをえないのは、このためです。
次に、再生可能エネルギー電源の比率について、見ておきましょう。
2030年に再生可能エネルギー電源の比率を「22〜24%」にするという政府案は、自民党政権時代の2009年4月に麻生太郎首相が「未来開拓戦略」で打ち出した、「2020年ごろに、再生可能エネルギーの導入量を最終エネルギー消費の20%程度にする」という目標と比べて、後退したものだと言わざるをえません。また、今回、環境省の委託により民間のシンクタンクがとりまとめた、「平均的な中位のケースで2030年に再生可能エネルギー電源比率は31%となる」という試算とも、大きく齟齬をきたしています。政府の「再生可能エネルギー電源22〜24%」案もまた、「再生可能エネルギーを最大限導入する」という安倍内閣の公約に違反するものだとみなさざるをえないのです。
ここまで述べてきたことからわかりますように、現在確定されようとしている2030年の電源ミックスに関する政府案は、国民の期待や安倍内閣の公約からかけ離れたものとなっています。「原発依存度を可能な限り低減する」、「再生可能エネルギーを最大限導入する」という公約を守るためには、2030年の電源構成における原子力発電の比率を15%程度に抑え、再生可能エネルギーの比率をその2倍の30%程度にまで引き上げる、大胆な修正が必要でしょう。慎重な再検討を期待します。
http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/400/217528.html
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