http://www.asyura2.com/15/genpatu42/msg/789.html
Tweet |
食品の放射線汚染はもう問題ない! 山菜を堪能するバスツアーで味わった福島の現状
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/43324
2015年05月15日(金) 川口マーン惠美 現代ビジネス
■雑多なメンバーが集まり、観光バスでいざ福島へ
「福島に山菜を食べに行こう!」というバスツアーの企画があったので参加した。東京工業大学の原子炉工学研究所の澤田哲夫先生と、福島の現地で八面六臂の大活躍中の地域メディエーター・半谷輝己氏の両氏が、発案者、および世話人。半谷氏のしている「メディエーター」というのは、地域住民と行政との間に立ち、情報やデータの見方、地域の文化や風習を"通訳"する仕事だ。
バスの中は、参加者の自己紹介でさっそく盛り上がる。原子力の専門家あり、環境省のお役人あり、ゼネコンの社員あり、某有名広告代理店の社員あり、変わったところでは、キノコの専門家でもある薬剤師の女性あり。元読売新聞の記者や、現役の朝日新聞記者、元東電の社員もいれば、中部電力やNUMO(原子力発電環境整備機構)の社員もいた。NUMOは、核廃棄物の処理に携わっている会社だ。
参加者の中で有名人としては、経済評論家の上念司氏。しかし、何と言ってもこの日のスターは、澤田先生行きつけの新橋のおでん屋さんの御主人「リョーさん」。このうら若き御主人は、「なんで僕がここにきてしまったかわかりません」という恍けたふりをしながら、実は極めて頭脳明晰。現地に着くと、澤田先生に抜擢されて、結局、一日中、漫然と行われた討論会やら宴会のまとめ役として鬼才を発揮することになるのだが、もちろん本人も、バスに乗ったばかりの私たちも、まだそんなことはつゆも知らなかった。
というわけで、5月9日、朝8時。雑多なメンバーで観光バスは満杯。ワイワイガヤガヤ、東京駅から、一途、伊達市の霊山町へ向かったのであった。ここは、一時、放射線量がとても高かった地域だ。
私が参加した理由はというと、日頃、いろいろなデータを参考に、福島の食品は安全であると主張している手前、ときどき現地で食体験をするのは有意義であろうと思ったこと。もちろん、取れたての山菜を堪能できるという楽しみもあるし、いつもネタ探しに四苦八苦しているこのコラムでも紹介できる。一挙両得ならぬ、一挙三得である!
■基準値や摂取制限などをもう少し現実に合わせるべき
時々小雨のちらつく曇天の中を、バスは矢のように進み(←ウソ)、そのうち、周りは水が張られたいろいろな形の田んぼばかりになり、深い緑の山が迫る。何だか懐かしい日本の田舎の風景だ。
よくこんな細いくねくねした田舎道を大型バスが通れるものだと感心しているうちに、ようやく午後1時、「りょうぜん里山がっこう」に到着。コンビニはなく、ケータイ電話はほぼ不通だ。
りょうぜん里山がっこうはNPO法人で、建物は、廃校となった古い中学校の木造校舎を利用している。手作りの仮設住宅といった趣で、建物の前の空き地は、元は運動場だったのだろう、そこに里山がっこう代表理事の高野金助さんが迎えに出てくださった。
この施設は地域とのふれあいの場となっており、米粉のパンを焼いたり、木工や竹細工をしたり、朗読会が催されたりと、さまざまな企画で体験学習ができるという。また、地元の人の集いの場として、体操やら、麻雀やら、コーラスなども行われている。そして今日は、山菜を食べる会である。安全なものはどんどん食べて行こうというのが、里山がっこうの方針でもある。
建物に入ると造りは学校(当たり前)だが、当たり前でないのは、プーンとごま油のいい香りが漂っているところ。天ぷらだ!
しかし、天ぷらはお預けのまま、まず教室で、澤田先生や、高野氏や、半谷氏の話を聞く。震災から4年、被災者の周りはいまだに混乱していることが察せられる。
ただ、食品の放射線汚染に関しては、もう問題はないようだ。欧米より10倍厳しい基準値さえ、たいていクリアしている。農薬まみれの作物や、添加物満載の食品、特に、煙草やお酒の方が、おそらく健康に対する被害は大きいとか。でも、お話も良いが、お腹が鳴る。
(左)調理室の様子と、(右)運ばれてきた天ぷら
さて、いよいよ山菜の御馳走会。調理室に改造された隣の教室から、何十もの大皿が次々と運ばれてくる。天ぷらだけでも、6、7種類。桑の新芽(伊達市内)、タラの芽(里山に自生)、野フキ、シドケ(安達太良山に自生)、グリーンアスパラ、ワラビなど、どれもからりと揚がっていてすばらしく美味しい。お酒は、生ビールと地酒の霊山。
ワラビの煮物やタケノコの煮付け、キュウリの和え物
大ぶりのシイタケはソテーして、その上にチーズがトロリ。絶品のため、調理場から運ばれてくる途中に、どんどん略奪されてしまう。シャクというホウレンソウのような山菜のおひたし、山ウドの酢味噌掛け、ワラビの煮物、キュウリの和え物。タケノコの煮付けの山にはさやえんどうの緑が散らしてあって美しい。それに加えて、山菜の炊き込んである何種類のお結びが山のように積んである。さらに土手から取ってきたヨモギで作ったヨモギ餅。どれも素朴で新鮮。トマトとイチゴの甘味は極上、持って帰りたいほどの味だ。
トマトとイチゴ
一つだけ、コシアブラという山野に自生している山菜が、230ベクレル/kgで、基準値を超えていたらしい。だから、これは里山がっこうでは提供できず、半谷氏からのおもてなし。実は、欧米の基準は1000ベクレル/kgなのに、日本だけ100ベクレル/kgなので、それに対する無言の抗議のようだ。私たちも無言で美味しくいただく。全員、満腹。
(左)地酒の「霊山」、(右)コシアブラ
たいへん楽しく、美味しい食事会であったが、しかし、実際問題として風評被害はいまだに大きいようだ。いくら安全と頭でわかっていても、嫌な人は嫌。もちろん食べたくない人は食べなくてもよいが、基準値や摂取制限などは、もう少し現実に合わせるべきではないかと思う。そうしないと、福島はいつまでたっても復興しない。
■脱原発の話と、福島の放射能汚染の話は、別に考えるべき
復興に関しては、上念氏の意見が興味深かった。本当に危険な場所以外は、立ち入り禁止措置を解除すれば一番良いという。そうすれば、家に帰りたい人は帰れるし、福島への投資も可能になる。福島に投資した事業主が元気に儲け始めれば、今まで「危ない」と言っていた人たちが、我も我もと参入するに違いない。福島の復興は放っておいても進む! さすが経済評論家。
なるほど、今の福島は、株で言えば底値なのだ。投資家にしてみれば、これほどのチャンスはない。住みたくない人は住まなくてもいい。しかし、福島で住みたい、あるいは、働きたい人たちの行動を妨げる規則だけは、取り払ったほうがよいかもしれない。おでん屋のリョーさんは、福島の消費税はゼロにすればいいと言った。さすが商売人。
また、これも上念氏の話だが、放射線の量は、1964年の東京の値が、震災のあとの福島の約200倍だったそうだ。中国の核実験のせいである。それについては、私も拙著『ドイツの脱原発がよく分かる本』の中で触れている。中国は1964年、日本人が東京オリンピックで浮かれている最中に大々的な核実験を開始し、公式発表しただけでも46回の核実験が、桜蘭遺跡周辺で69年まで続いた。放射能の総量は、チェルノブイリの被害の500万倍だ。ウイグル族からは19万人もの急性死亡者が出たという。
60年代の終わり、佐世保に入港した米軍の原子力潜水艦が核を積んでいるの、いないのと大騒ぎをしたが、私たちは、当時、すでにかなりの放射能を浴びていたようだ。そして、中国で原発がどんどん増えている昨今、ひとたび事故が起こると、また同じ状況になる可能性は高い。もっとも、当時、それだけ浴びてもたいして健康被害は出なかったようなので、過度に心配することはないのかもしれないが、でも、福島の山菜は怖くない私も、そちらの方は若干怖い。
さて、楽しく美味しかった福島山菜ツアーだったが、心が暗くなるような話も耳にした。福島には、"福島はもう安全だ"という主張を嫌う人たちもいるらしい。私たちは、福島の風評被害が収まり、1日も早く復興できるようにと願っているが、それが迷惑がられるとなると、何をしていいのかわからなくなる。
実際問題として、現在、東電が毎月被害者――赤ちゃんからお年寄りまで――に一律10万円を支払っており、さらに畜産業では、世帯当たり億単位の賠償金が支払われている。安全宣言が出ると、補償が止まる。それを恐れる人たち、あるいは、補償をもらえなかった人たちの感情回復訴訟など、被害者の補償や賠償にまつわるいろいろな思惑が交錯し、さらに、各種の支援団体の利害も絡む。大きなお金の動くところには、とかく問題が付きまとう。補償も除染も、いつかどこかで終わりにするべきなのだろうが、猫の首に鈴をつける政治家がいないといったところだろうか。
いずれにしても、脱原発の話と、福島の放射能汚染の話は、別に考えるべきだと思う。この日の様子は、上念氏が楽しい動画にまとめておられるのでご覧ください。氏が天ぷらをパクパク試食しています。
11月には、イノシシのシーズンということで、「福島でイノシシを食べる会」の企画が練られるそうだ。その頃までに、福島の状況がどう変わっているか。できれば、また参加したいと思っている。
投稿コメント全ログ コメント即時配信 スレ建て依頼 削除コメント確認方法
▲上へ ★阿修羅♪ > 原発・フッ素42掲示板 次へ 前へ
スパムメールの中から見つけ出すためにメールのタイトルには必ず「阿修羅さんへ」と記述してください。
すべてのページの引用、転載、リンクを許可します。確認メールは不要です。引用元リンクを表示してください。