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高レベル放射性廃棄物の処分 暫定保管期間に合意形成を:脱原発を前提とすべき議論
http://www.asyura2.com/15/genpatu42/msg/704.html
投稿者 あっしら 日時 2015 年 5 月 03 日 03:31:31: Mo7ApAlflbQ6s
 


※ 関連投稿

「安倍訪米:「より繁栄し安定した世界のための日米協力に関するファクトシート」で縛りをかけられた原発維持政策」
http://www.asyura2.com/15/senkyo184/msg/282.html

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高レベル放射性廃棄物の処分
暫定保管期間に合意形成を

山地憲治 地球環境産業技術研究機構理事・研究所長

 福島第1原子力発電所事故の後、原子力に関する国論は二分している。背景には原子力の安全性に対する不安がある。中でも、超長期にわたる安全確保が要求される高レベル放射性廃棄物(HLW)処分は、事故以前から継続する重要課題である。小泉純一郎元首相が典型だが、HLW処分問題を根拠として脱原子力の考えに転換した人も多い。

 HLW処分については議論を積み重ねてきた。2000年には関連の法律が制定され、実施機関として原子力発電環境整備機構(NUMO)が設立された。10年9月には原子力委員会が日本学術会議に対して、立地が難航しているHLW処分を巡って、国民への説明や情報提供のあり方に関する審議を依頼した。

 学術会議の審議中に福島原発事故が発生した。12年9月に取りまとめた学術会議の回答では、HLW処分に関する政策は抜本的に見直す必要があるとして、「総量管理」と「暫定保管」という概念を提示し、この2つを柱として、多様なステークホルダー(利害関係者)が討論や交渉を進めて、政策を再構築する基本的な手続きを提案した。

 学術会議の回答は社会的に注目され、政府も審議会を再開し対応を検討し始めた。学術会議はこのほど国民的合意形成のための暫定保管のあり方を中心に提言をまとめた。

 原子力発電に伴って発生する放射性廃棄物には、発電所の運用中に処理される放射能濃度の低い廃棄物などを含めて様々な種類がある。HLWは核分裂で生成するセシウムやストロンチウムなど強い放射能を持つ廃棄物である。

 HLWは原子炉から取り出された時には使用済み燃料の中に閉じ込められている。使用済み燃料を再処理してプルトニウムや燃え残りのウランを回収した場合には、ガラスに溶かしてステンレス製の容器に密封されるので、ガラス固化体と呼ばれる。なお、福島原発事故ではHLWの一部は周辺に放出され、除染廃棄物である指定廃棄物の中に薄く含まれている。

 わが国の現在の方針では再処理を基本としているのでHLWはガラス固化体を意味するが、世界的にみれば再処理をしない国では使用済み燃料をHLWとして処分する計画になっている(表参照)。学術会議では今後の再処理政策の再検討を想定し、HLWにはガラス固化体だけでなく、使用済み燃料も含めた。

 学術会議の回答が提案した総量管理には「総量の上限の確定」と「総量の増分の抑制」の両方の意味合いがある。前者は社会が脱原子力を選択する場合に対応し、後者は原子力を一定程度維持する場合に対応する。前者のみに着目して学術会議の回答は脱原子力を前提とするように引用される場合があるが、誤解である。

 一方、暫定保管は、期間を限定してHLWを保管し、期間内に最終的な処分方法について合意を得ることを目的とする。いわばモラトリアム(一時猶予)の提案である。

 なお、学術会議が提案した暫定保管には、ガラス固化体の保管と使用済み燃料の保管の両者がある。ガラス固化体については青森県六ケ所村の再処理施設で既に保管されている。使用済み燃料については現在多くが発電所サイトで貯蔵されているが、青森県むつ市において「乾式キャスク」と呼ばれる空冷式の鋼鉄製容器の保管設備による中間貯蔵施設の建設が進んでいる。これらは、貯蔵後に再処理することを前提としたものだ。

 使用済み燃料とガラス固化体の数十年にわたる貯蔵・保管は国内外で多数実施されている。主な貯蔵技術として、使用済み燃料の場合は湿式(水冷式)のプール貯蔵、乾式(空冷式)のキャスク貯蔵とボールト貯蔵が、ガラス固化体の場合は乾式の金属キャスク貯蔵とピット貯蔵(技術的にはボールト貯蔵と同等)がそれぞれ実用化している。

 暫定保管の経済性は保管容量と保管期間により変わる。使用済み燃料保管の場合は、保管期間が長くなれば湿式よりも乾式貯蔵が有利になる。

 暫定保管施設立地に求められる地盤・地質などの条件については、地上保管の場合は基本的には他の原子力施設の場合と同様になる。地下保管の場合は、地上保管に比べて自然現象による影響が緩和されるが、地下坑道の健全性確保や冷却機能の維持など安全性確保にかかわる追加的な条件を考慮する必要がある。また、深度が深くなるほど施設の建設コストが増大する。

 学術会議の提言では、HLWの暫定保管として乾式貯蔵による地上保管を推奨している。暫定保管の期間は原則50年とし、最初の30年までをめどに最終処分のための合意形成と適地選定をして、その後の20年以内をめどに最終処分場の建設を提案している。次世代への責任を考慮して期間を不必要に引き延ばすことは避けるべきだとしている。

 また暫定保管施設の立地については、事業者の発生責任と国民負担の公平性を考慮すべきであり、今後の原発再稼働ではHLWの保管容量の確保はもとより、暫定保管に関する計画作成を求めている。

 HLW処分の安全確保に関しては、学術会議が提言した項目の中の「科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保」を巡る議論が興味深い。回答公表後に開かれた学術フォーラムでは、NUMOの地層処分の信頼性に関する報告に対して、地震学の専門家からは、日本のような地震列島ではHLW処分はできないという発言があった。一方、地質学の専門家からは、相当限定されるが、日本にも地層処分が可能な場所が存在するとの見解が示された。

 科学哲学者のカール・ポパーが言うように、文系の学術も含めて、科学的命題(主張)には反証可能性が必要である。したがって、科学には証拠が必要であり、相手の主張を否定するにはその証拠に対する反証が必要である。

 理学が対象とする自然界では、再現実験による確認など証拠の客観性は高い。ただし、自然科学の範囲でも科学的不確実性はある。科学者の醍醐味は一定の証拠を合理的に説明する仮説を提案するところにあるが、理学においては自然観測や実験による実証が最も重要な関心事になる。つまり、純粋の理学では科学の実証の場は自然あるいは実験のように条件が一定に整備された人工環境であり、人間が関与する現実社会の不確実性や社会の価値判断に基づく制約条件は排除されている。

 一方、工学は科学的知見を人間社会に適用して課題を解決するという目的を持っている。工学者にとっては、科学的不確実性の下でも、安全性や経済性などの条件を満たして、人間社会が有効に使える技術や仕組みを提案することが主要な使命である。ここで、技術が満たすべき安全性や経済性などの条件は社会から与えられるものである。

 したがって、工学者の成果は、最終的には社会的実践の中で実証される。確かに科学者の役割の基礎には、真理の探究という社会から独立した自律性がある。しかし、学術も科学者も社会の中に存在することは事実である。科学の自律性は社会からの信頼と負託の上で成立しており、社会的期待に応える科学の役割を自覚する必要がある。それには工学の視点が必要である。

 原子力事故の場合と同様、HLW処分についても絶対安全はあり得ない。われわれができることは、リスクを社会が受け入れられる水準にまで小さくすることである。また、HLWは既に存在しており、この問題から逃げることはできない。暫定保管の期間を活用して十分な国民的議論を進め、HLW処分に関する合意を形成する必要がある。

〈ポイント〉
○「学術会議は脱原発前提」との引用は誤解
○不必要な暫定保管の引き延ばしは無責任
○リスクをなるべく小さくすることが重要

 やまじ・けんじ 50年生まれ。東京大院博士課程修了。東大名誉教授。10年より現職

[日経新聞4月29日朝刊P.29]

 

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コメント
 
01. taked4700 2015年5月04日 19:23:36 : 9XFNe/BiX575U : OQ5u8afhGU
この議論もある意味抜けている点が多くあります。

1.重金属毒性を無視している。ウランもプルトニウムも重金属であり、永遠に消えません。

2.再処理しても減量しない劣化ウランの問題。これも重金属。

3.地層処分には深さの限界があること。深くなると地熱があり、せいぜい深くても500m程度しかできない。

4.乾式キャスクの耐久性。現状で50年程度。

5.燃料ペレットや核燃料体の容器の耐久性。これはどのぐらいあるのかのデーターを見たことがありません。せいぜい数十年でしょう。核燃料は崩壊するので、熱も出すし、体積も変わります。

結局、核兵器を持ちたいから核廃棄物については目をつぶると言う事であり、やがて地球環境全体が汚染されてしまうだけのこと。バイバイ200年後の地球ということですね。まあ、今生きている人々の内、誰も200年後には生きていないから気にしないということです。


02. 2015年5月13日 09:49:48 : LmkuDfyhlt
いつまでも地上で湿式や乾式のキャスクで高レベル放射性廃棄物を保管するのは自然災害を考えると却って危ないだろうからできるだけ早く地層処分すべきだろう。
また、原発の設置場所によってはテロの危険(キャスクごと盗まれてしまう)もあるので、地上保管はできるだけ避けるべきだろう。

現に原発で保管しているHLWはいつ自然災害やテロに合わない可能性がゼロとはいえないので、やはり再処理の問題も含めて、議論を深める必要があるのではないのか。

昔は肥溜めを畑に撒いて肥料にしていたが、現在では浄化槽のないトイレはトイレとは言えないだろう。


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