原発を持つ地域独占の９電力の中で、原発依存度が最も高い事業構造が裏目に出た形だ。

＜高浜３・４号の仮処分リスク、滋賀でも＞

５年連続の赤字回避への不透明要因が、複合的な訴訟リスクだ。１１月に再稼働すると想定していた高浜原発３・４号（福井県）について福井地裁が今月１４日、再稼働差し止めを命じる仮処分を決定。関電は異議申し立てているが、同決定が覆るまでは法的に再稼働ができない。

同社は、高浜３・４号が１５年度中に再稼働しなかった場合の収支へのマイナス影響は７９０億円と説明。関電による異議申し立てに基づく福井地裁の再審理は、今後、半年から１年程度かかる可能性がある。また、高浜３・４号にめぐっては、隣接する滋賀県の住民も今年１月末、大津地裁に再稼働差し止めの仮処分を申し立てるなど、乗り越えるべき司法の壁は福井に限らない。

＜再値上げ実施なら黒字確保か＞

昨年１２月に同社は、東日本大震災以降で２度目となる電気料金の値上げ（家庭向けで平均１０．２３％）を政府に申請。経産省が招集した有識者による査定は終了しており、６月実施の公算だ。

値上げ申請時点で、収支上のプラス効果は年間３０００億円強を見込んでいた。関電が想定していた時期から２カ月遅れとなる６月実施の場合、査定で値上げ幅が削られてたとしても２０００億円規模の収支改善効果が生じるとみらる。

その場合、高浜３・４号が再稼働しない場合のマイナス影響を上回り、１４年度の経常赤字を帳消しにする程度のプラス効果が出る計算だ。ただ、八木社長は１５年度について「現時点で黒字化がみえているわけではない」と、慎重姿勢を崩さなかった。今年度は、費用計上の繰り延べなども視野に入れて黒字を捻り出す構えだ。

＜東電、中部電と開く格差＞

東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)が２８日発表した１５年３月期連結業績は、経常利益が前年比２倍の２０８０億円、当期利益が同２．９％増の４５１５億円。燃料費が５年ぶりに減少したことなどで、２年連続の黒字を確保した。

原発が少ない中部電力(9502.T: 株価, ニュース, レポート)の１５年３月期は、経常利益６０２億円（前年実績は９２６億円の赤字）、当期利益は３８７億円（同６５３億円の赤字）だった。

電気料金の値上げの実施状況（家庭向け）は、中部電が同３．７７％（１４年５月）、東電が同８．４６％（１２年９月）に対し、関電は１回目が９．７５％（１３年５月）で昨年１２に２回目の申請に至っている。

＜あくまで原発重視の関電＞

東電福島第１原発事故が発生した１１年３月までの過去５年間の原子力依存度は、関電４３％、東電２８％、中部電１６％だった。原発依存度が高いと、業績回復の遅れや値上げによる顧客負担の増大を招きかねない状況が続く。

地域独占体制が法的に取り払われ、利用者側が電力会社を選べるようになる自由化時代を目前にして、原発が今後、どの程度再稼働するのか不透明な状況が今後も続く事態となれば、関電に不利に働くことは否定できない。

ただ、電力小売りの全面自由化（来年４月開始）でライバルになりそうな東電と中部電との格差が開く中でも、関電はあくまで原発重視の経営方針を維持する構えだ。

同社は同日、運転開始から４０年の高浜１号と３９年の同２号について、原則４０年に制限されている運転期間を６０年に延長するために原子力規制委員会に認可申請した。また、運転開始から３８年の美浜３号（福井県）についても、規制委への延長申請の前提となる「特別点検」の実施を併せて発表した。

八木社長は、高経年の原発の延長を目指すことについて、「対策を適切に対応したプラントの安全性を確認した場合は有効活用したい」と強調した。

(浜田健太郎　編集：北松克朗)

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