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「福井地裁による高浜原発再稼働差し止め仮処分の決定について。河合弁護士緊急インタビュー:岩上安身氏」
http://sun.ap.teacup.com/souun/17134.html
2015/4/16 2015/4/16
https://twitter.com/iwakamiyasumi
これより、岩上安身による河合弘之弁護士緊急インタビューを実況します。
テーマは福井地裁による高浜原発再稼働差し止め仮処分の決定について。 ( #iwakamiyasumi live at http://ustre.am/eOVh )
岩上安身「福井地裁が高浜原発3,4号機の再稼働について、住民9人による差し止めを求めた仮処分申請を認め、関電に対して両機を『運転してはならない』と命じた。これのどういう点が画期的なのでしょうか?」
河合弘之弁護士「我々は高浜原発について昨年5月に差し止め訴訟で勝訴を勝ち取りました。しかしこれは本訴だったため、控訴が行われた。裁判が長引けば長引くほど、その間に再稼働が行われることになる。そこで今回は高浜で『仮処分』の申し立てをしました」
河合弁護士「仮処分で原発の運転を禁止する決定は初。決定はすぐに効力を持ち、異議申し立てなどによって決定が覆されるまで、関電は2基を再稼働できない。この決定の画期的なところは、規制委員会の新規制基準に適合しても『安全性は確保できない』としたところ」
河合弁護士「要旨では、基準地震動について原発推進派の最高権威である入倉孝次郎教授が『基準地震動は計算で出た一番大きな揺れの値のように思われることがあるが、そうではない』としていることを盛り込んでいる」
河合弁護士「さらに入倉教授は『私は科学的な式を使って計算方法を提案してきたが、平均からずれた地震はいくらでもあり、観測そのものが間違っていることもある』と、基準地震動がいい加減であることを認めてしまっている。これには裁判所も驚いた」
岩上「原発推進派が自ら認めてしまったのですね」
河合弁護士「そう。であればと、要旨では『原子力発電所の基準地震動を策定することに合理性は見い出し難いから、基準地震動はその実績のみならず理論面でも信頼性を失っていることになる』とした」
河合弁護士「この決定に対し、菅官房長官は『粛々と進める』などと言っている。おそらくこの要旨も読まないで発言している。ものを知らないのだろう。そもそも新規制基準を『世界一厳しい』とは海外の誰も、国内の推進派ですら言っていない」
河合弁護士「言っているのは菅官房長官と安倍総理と田中委員長でだけ。しかし田中委員長は正直だから、安倍総理の発言は『政治的な発言だ』と言っている。菅さんも安倍さんも、耳学問の人。原典を調べない」
河合弁護士「しかも要旨では、この新規制基準がそもそも誤りだ、と言っているのに、菅さんは『新規制基準を尊重して再稼働する』と言ってしまっている」
岩上「菅さんは『不快な思いを与えた』として『粛々はもう使わない』と言っていたのに」
岩上「想田和弘監督は『粛々と進めるのは犯罪では』とツイート。これに池田信夫氏は『即時抗告するのは国民の権利だ。犯罪でもなんでもない』と批判」
河合弁護士「もちろん犯罪です。またこの決定を無視した挙句事故が起きたら、重大な罪に問われます」
河合弁護士「規制基準を作るなら、これでもう安全です、という安全を保証するものにすべき。田中委員長自身が(新規制基準を満たしたからといって)『安全』だとは言っていない。『安全を保証するものではない』と会見で言ってきました」
河合弁護士「行政と司法とで2つのルールが同時に存在するなんてありえない。行政の基準を許したら、それは行政の暴走になってしまう。だからこそ司法がストップをかける力を持つ。先ほどの池田信夫氏の件。抗告は間違い。異議申立て、保全抗告というのはある」
岩上「今回の申し立てで注目すべきは『人格権の侵害』という点ですね」
河合弁護士「人格権とは『人格的生存に不可欠なもの』を保護する権利。人格権にもプライバシーや名誉など順位があって、最もも上位にくるのが生存権」
河合弁護士「要旨では生命維持に関わる人格権を侵害するおそれがある、としている。憲法の原点に立ち返っている。照れもせずにこういうことを言うのは珍しい。非常に生真面目な性格が出ている。樋口裁判長はぶっきらぼうな人で、私達にも冷たい」
河合弁護士「樋口裁判長は両者を公平に扱う。推進派でも反対派でもないのです」
岩上「樋口裁判長は2014年4月1日付で名古屋家裁の部総括判事に異動しました。今回の決定は、裁判所法に基づく職務代行の立場で出したんですね」
河合弁護士「異動は元々決まっていた。関電はなんとか任期切れに持ち込もうと、『忌避申し立て』といって『この裁判官は公平ではない』という申し立てをした。すると審議はフリーズしてしまう。我々はこれでもう駄目だなと思っていた…」
河合弁護士「しかし樋口裁判長はやわではなかった。この事件は私の案件であり、引き継ぐにも大変な手間がかかるからと、高裁に『職務代行』の申し立てをした。関電の裏をかいた。しかし高裁もこの人に地裁の裁判官をされると困ると思ったのか、家裁に閉じ込めた」
岩上「これまでも、民のための判決をくだした裁判官は、その時点で出世の道を閉ざされてきましたね」
河合弁護士「樋口裁判官のような人は地裁に他にもいる。良い判決を出して、最高裁判事になった人もいます」
河合弁護士「他の要旨のポイント。使用済み燃料プールはの屋根は普通の建屋の屋根と同じ。もしここをテロで狙われたら終わり。使用済み燃料プールは水が抜けると溶融を始めてしまう。規制基準に『プールの屋根は頑丈に』という項目を加えるべきなのに入れない」
河合弁護士「使用済み核燃料プールの給水設備の耐震性はBクラス。これをSクラスにしろよと。なぜこれを事業者はやらないかというと、膨大な金がかかるから。1000億単位の金がかかる」
岩上「米軍と自衛隊の想定では仮想敵国の進軍経路は原発銀座の若狭湾」
河合弁護士「私は原発推進は愛国者ではないと思っている。原発は自国にのみ向けられた核兵器です。国を愛する右翼は原発反対です。原子力ムラからお金をもらっている連中は原発推進。本当にあなた方は愛国者なのか? と聞きたい」
河合弁護士「仮想敵国としては北朝鮮がある。日本海にテポドン、ノドンを撃ち込まれている。ないとは思うが、万が一若狭湾にミサイルを撃ち込まれたらどうするのか。北朝鮮を仮想敵国というなら、原発を撤去するべきです」
岩上「要旨では『日本国内に地震の空白地帯は存在しない』としています」
河合弁護士「日本の原発は地雷原でダンスしているようなもの。『原発やらない奴は馬鹿だ』と言って憚らないフランスですら、『でも日本だけはやらない方が良いのでは』という専門家がいる」
河合弁護士「関電は基準地震動が370ガルから700ガルに上げたが、裁判官は『基準地震動を上げたのならその分の補強工事をやったのか?』と聞くと、関電は『してません』と。みんな『え〜!』とのけぞった。私は『それは安全余裕の食いつぶしだ』と指摘した」
河合弁護士「関電はさらに『基準地震動である700ガルを下回る地震によって外部電源が断たれ、かつ主給水ポンプが破損し主給水が断たれるおそれがあること』を認めている。では事故の時にどうするのか?との裁判官の質問に『補助ポンプがあります』と」
河合弁護士「これも驚きです。多重防護とは、まず第一陣の設備で事故を食い止めるということ。しかし関電は第一陣では防げないと認めている。いきなり瀬戸際作戦で対応してどうするのか、と裁判官も呆れていた」
河合弁護士「さらに免震重要棟の問題。3.11で吉田所長はここで頑張った。柏崎刈羽原発事故の教訓からギリギリ間に合った。しかし新規制基準では、この設置について基準の対象としていない。猶予期間という逃げ道が設けられている」
河合弁護士「そこで要旨では『免震重要棟についてはその設置が予定されてはいるものの、猶予期間が設けられているところ、地震が人間の計画、意図とは全く無関係に起こるものである以上、かような規制方法に合理性がないことは自明である』と。皮肉が効いている」
視聴者からの質問。ビジネス弁護士である河合さんから見て、関電の経営能力は?いつ潰れるのか?→河合弁護士「残念ながら今の状況では関電が潰れる前に国が救済に入るでしょう。また経営能力については最悪。社長と会長が経営を牛耳っている。おそらく恐怖政治」
河合弁護士「関電は原発に偏りすぎている。その面でも経営としては最低。ガバナンス面でも最低。会社的に言って、情報開示の面で適時開示していない、何でも隠す。またこのような状況においてお経営再建策が原発再稼働だけ。本当に能なしで無能、不見識です」
河合弁護士「また法令遵守、コンプライアンスの面でも最悪。電力会社というのは偉そうにしている。電力会社のトップはその地域の財界のトップ。僕はそれが間違っていると思う。電力会社は売上増進とコストカットをしなくて良い。経営者としてこんなのは落第」
岩上「田中委員長はこの決定を受けて、『事実誤認がいっぱいある』と反論しました」
河合弁護士「『いっぱいある』と言う抽象的な物言いではなく、どこがどう事実誤認なのか、具体的に言ってみろと言いたいですね」
岩上「『給水設備がBとあるが、これはSクラス。非常用発電機なども要求しており、これもSクラスだ』と反論」
河合弁護士「主給水ポンプはBだと思う。また非常用発電機は『分散』しなければならないが、これを要求していない」
岩上「さらに『新基準と審査の内容を直ちに見直すようなことは考えていない』と」
河合弁護士「『直ちに』ということはゆっくり見直すつもりはあるのかな。しかしまあ、田中委員長は事実誤認について、給水設備は非常用発電機にしか言及できていません」
河合弁護士「決定要旨はもっと重大な部分を指摘している。『全国で20箇所にも満たない原発のうち4つの原発に5回にわたり想定した地震動を超える地震が平成17年以後10年足らずの問に到来している』とし指摘していることなどには一切答えていない」
河合弁護士「さらに要旨は、使用済み核燃料プールの問題、外部電源の問題、給水設備でなく主給水ポンプの問題など、いくつもいくつも指摘しているが、それらには一切触れていません」
岩上「一つ懸念が。IWJが只野靖弁護士に話を聞いたところ、制裁金を支払ってでも再稼働したほうがメリットはある、と関電が判断した場合、今回の判決を無視して、高浜二基を再稼働させる可能性に言及しました。どうなのでしょうか?」
河合弁護士「僕は関電にはそんな度胸はないと思う。決定を無視したらそれこそ無法国家になってしまう。刑務所に入って良いから犯罪を犯す、なんてことはしないでしょう」
岩上「今後のスケジュールとして注目すべきは、4月22日に九州電力川内原発1,2号機の仮処分について判断をくだす鹿児島地裁」
河合弁護士「仮に川内原発で負けても、この高浜原発での決定が減殺されることはない。現在の原発の雄、関電を止めたのだから」
岩上「『世界』の5月号に『法定で再稼働を食い止める 日米原子力協定は脱原発の壁か』という題で寄稿された」
河合弁護士「矢部宏二さんが『日本はなぜ基地と原発はやめられないのか』で、日米原子力協定があるかぎり、脱原発はできないと書かれた」
河合弁護士「基地や日米安保については矢部さんの言うことは正しいと思うが、脱原発については間違っていると思う。日米原子力協定の条文をちゃんと読むと、要はNPT、核不拡散についてしか書かれておらず、脱原発をするな、原発をやめるな、という記述はない」
河合弁護士「結局いくら脱原発運動をしても最後には米国に捻り潰されれる、という事を書かれると、脱原発運動をしている人たちががっかりしてしまっている」
岩上「矢部さんは、『河合さんはたいへん尊敬しているし、いつか河合さんに本を書いていただきたい』と」
河合弁護士「日米安保、地位協定については本当によく調べていると思っているが、原発については勢いで書いてしまったところがあるのでは」
岩上「しかし野田政権が『2030年原発ゼロ』を掲げた時に米国に潰されたということがありましたよね?」
河合弁護士「それは確か矢部さんの本にも書かれていたと思いますが、あれば米国のトップが言ったわけではない。公式のルートでによる外交問題ではなく、長島昭久議員が米国の下っ端、どこかの副長官に聞いただけ。それを国家意思であるかのように論じるのは間違い」
河合弁護士「また米国が原発推進というのには疑問がある。であればなぜGEとウェスティングハウスを弱体化させたのか。米国には2つの勢力がある。一つは、日本の原子力メーカーと組みたい人たち。日本の原発技術がないと彼らは原発を存続できないから」
河合弁護士「もう一つは、日本のプルトニウムの返却を迫るような、日本の『核』に懸念をもっている勢力です」
視聴者からの質問、裁判官を集めた最高裁主催による原発訴訟の研究会は、今回と今後、各種の原発訴訟にどう影響を与えるでしょうか?
→河合弁護士「そういう会があったというのは聞いています。最初の会合は原発見直し論で、2回目は揺り戻しがあったと」
河合弁護士「2回目の方は少し影響あるでしょう。最後に、みなさんに考えていただきたいのは、再稼働というのは『お金の問題』なんです。原発停止で現在、石油などの輸入費で3兆6000億円かかっている。それを54基で割ると1基あたり660億円」
河合弁護士「この660億円のために、電力会社は日本の運命を犠牲にするというのか。これを言うと、『もうあんな事故は起きない』と言う。しかし今回の決定で、多くの欠陥があることが明らかになった。再稼働は国民をロシアンルーレットにかけているのと同じです」
河合弁護士「また立地自治体の人たちにも言いたい。再稼働に賛成して潤って、もし事故が起きたら国民の怨嗟の的になる。原発事故前なら良かっただろうが、事故を経て賛成・反対がくっきり分かれているのだから。しかも周辺自治体は一銭にもならずに被害を被るだけ」
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