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ダイヤモンドオンラインから
http://diamond.jp/articles/-/67957
心配な子どもの健康被害
「現時点で放射線の影響は考えにくい」
早いもので、2011年3月の東日本大震災と、それによる東京電力福島第一原子力発電所の事故から、もう4年が過ぎた。
福島事故による地元住民への被害に対しては、これまで、医療面も含めて様々な措置が講じられてきている。特に心配なものの一つに、子どもの甲状腺への影響に関することがある。
子どもの甲状腺検査の1巡目の先行検査で「問題ない」とされた1人が、昨年4月から始まった2巡目の本格検査で、甲状腺がんと診断が確定した。これについて、本稿執筆時点で直近の第18回福島県「県民健康調査」検討委員会(2月12日開催)では、同委員会の星北斗座長(県医師会常任理事)が、「現時点で放射線の影響は考えにくい」との見解を示したとのこと。これは、2月15日付け福島民報ネット記事に詳しい。
こうした結果が随時公開されていくことは、大きな安心材料となる。今後とも、こうした医療面での対応も含め、専門家による適切な、かつ透明性ある情報提供を継続していく必要がある。
“美味しんぼ「鼻血問題」”に
代表される不可解で不埒な風評
ところが、福島事故を巡っては、非常に不可解で不埒な風評がしばしば出回ってきた。それは、今も後を絶たない。その一つに、いわゆる“美味しんぼ「鼻血問題」”がある。
これは、人気漫画「美味しんぼ」で昨年、福島第一原発を視察した主人公が鼻血を出すなどの描写が波紋を広げた問題である。原作者の雁屋哲氏は2月2日、この件について自身の見解を述べた著書「美味しんぼ『鼻血問題』に答える」(遊幻舎)を出版した。
この著書で雁屋氏は、「放射線で鼻血が出るのは根拠がない」との批判に対して、
「私が伝えたのは真実です。自分の体験した事実しか書きません。福島を取材した際に自分自身が鼻血を出し、異常な疲労感があった」
と反論し、
「福島の人たちよ、福島から逃げる勇気を持ってください」
と訴えているらしい。
深刻なのは放射線ではなく心理的影響
健康被害は科学の視点から精査すべき
しかし、地元の福島県立医科大学の放射線専門の教授によれば、
「福島の線量は低下しており、日量で福島は全国の中で低い方に位置する」
とのことであり、また、ある国立大学付属病院の専門医師によれば、
「同僚が1年近く飯館村に住み込み、私も福島市へ頻繁に出かけて医療支援を行ったが、避難者に鼻血が多いという事実はない。福島に放射線健康被害はない」
とのことだ。
さらに、原子放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)が昨年4月に出した報告書(「2011年東日本大震災後の原子力事故による放射線被ばくのレベルと影響」;参考1)では、公衆の健康影響に関しては
「心理的・精神的な影響が最も重要だと考えられる。甲状腺がん、白血病ならびに乳がん発生率が、自然発生率と識別可能なレベルで今後増加することは予想されない。また、がん以外の健康影響(妊娠中の被ばくによる流産、周産期死亡率、先天的な影響、又は認知障害)についても、今後検出可能なレベルで増加することは予想されない」
とし、作業者の健康影響に関しては
「心理的・精神的な影響が最も重要だと考えられる。放射線被ばくが原因となった可能性のある、急性放射線症などの急性の健康影響や死亡は、これまで確認されていない。また今後、がんの発生率が自然発生率と識別可能なレベルで増加することは予想されない」
としている。
そして、この報告書では、放射線とは直接関係ない健康被害にまで踏み込んでいる。すなわち、
「精神的な健康の問題と平穏な生活が破壊されたことが、事故後に観察された主要な健康影響を引き起こした。これは、地震、津波、原発事故の多大な影響、および放射線被ばくに対する恐怖や屈辱感への当然の反応の結果であった。公衆においては、うつ症状や心的外傷後ストレス障害(PTSD)に伴う症状などの心理的な影響が観察されており、今後健康に深刻な影響が出てくる可能性がある」
と警告している。
◆参考1:UNSCEAR報告書のポイント
出所:首相官邸災害対策ページ
雁屋氏が自らの体験と称して漫画の執筆活動を繰り返すのは勝手であり、いわば“表現の自由”ということなのかもしれない。しかし、健康被害への懸念が福島県民の間に歴然と存在する現状で、雁屋氏の言動や著作がこれまで以上に福島県民の平穏な生活を破壊してPTSDなど心理的な悪影響の拡大を引き起こすことになるとすれば、それは上述のUNSCEARによる警告からも、見過ごすことはできない。科学の視点から、改めて精査されて然るべきだ。
独り歩きする“年間1mSv”
蔓延する“世界の非常識”
1986年4月のチェルノブイリ原発事故から6年間、現地調査に参加した日本の被曝医療・放射線の権威は、
「避難した住民の地元帰還を阻んでいる大きな要因の一つは、追加被曝は年間1mSv以下という除染目標だ」
と語っている。2011年3月の福島事故の翌月、原子力安全委員会は
「計画的避難に係る基準を設定するに当たっては、『合理的に達成できる限り低く』の考え方を考慮して年間20mSvとすることが適当である」
とした。
だが同年9月、当時の細野環境相は“年間1mSv以上の地域は除染する”との方針を打ち出した。これに対して、放射線の専門家からは『100mSv以下では健康影響は小さく検出困難だ』との見解が表明されていた。
福島県民の間では、どれが正しいのか、誰が責任を持つのか等々の話が混乱する中で疑心暗鬼が募っていったと思われる。その結果、当時の民主党政権が打ち出した“年間1mSv”という、除染を繰り返しても容易に達成が難しい目標だけが独り歩きした。そして、国際放射線防護委員会(ICRP)が「公衆の長期居住の目安」として示す年間1〜20mSvという世界標準の勧告値(参考2)はほとんど無視されてしまった。これが今も続いている。
このような“世界の非常識”が今も蔓延していることは、当時の民主党政権による最大の負の遺産の一つだ。除染必要地域ということで今も根強く残る風評被害は、福島県内の様々な事業活動の復興を阻んでいる。避難住民の地元への帰還も妨げられている。
こうした“負の連鎖”の要因となっている放射線量の評価について、国際的な基準に基づく妥当な評価に改めることが緊要だ。「過ちては改むるに憚ること勿れ」の諺の通り、自民党政権はグローバルスタンダードに合ったものへと即刻改善すべきだ。それを内外に示すことが、本格的な福島再生への力になるだろう。
◆参考2:放射線の目安(ICRP)
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出所:独立行政法人放射線医学総合研究所HP
先送りされる放射性廃棄物の処分問題
このままでは廃炉作業も遅れが必至
“年間1mSv”については、気になることがもう一つある。低レベル放射性廃棄物に関する基準に関してだ。
日本での低レベル放射性廃棄物の浅地中処分は1992年に始まったもので、廃棄物をドラム缶に固形化したものを埋設処分すること。これに関して、原子力規制委員会は2013年に新たな規制基準を策定した。国際原子力機関(IAEA)は、掘削により処分場を損傷した場合の基準として、年間1〜20mSvの間での合理的な取り組みを求めているが、規制委は、年間1mSv以下であることを基準とした。
さらに、今年になってようやく始まった「廃炉等に伴う放射性廃棄物の規制」に関する検討についてである。
1月26日に開かれたその第1回検討チーム会合からすると、廃炉等に伴って発生する低レベル放射性廃棄物のうち『放射能レベルの比較的高いもの』の処分に係る基準について、年間1〜20mSvの間のできるだけ小さい値のものだけの基準を検討・策定し、それ以上の廃棄物に係る基準の策定は先送りされる可能性が高い。昨秋の規制委の資料では、年間1mSv以下となる方向性を事実上示している。
その背景には、できれば年間1mSv以下の議論に止めておくことでマスコミを騒がせたくない、他の廃棄物については問題を先送りして当面、面倒なことを避けたい、といったポピュリズム的な規制当局に独特の思惑を感じてしまう。加えて、そもそも地中深く処分する廃棄物の基準として公衆での制限数値を適用することは、科学的な判断であるとはとても言えない。
現在、日本原子力発電東海原発1号機、中部電力浜岡原発1・2号機、日本原子力研究開発機構新型転換炉原型炉施設「ふげん」の4基については、廃炉が決まっている。今後これらの他に、“寿命40年”が過ぎた原子炉の廃炉が増えていく可能性がある。そうした中で、年間1mSv以下との基準しか整備されないとなれば、廃炉に伴う廃棄物のうち『放射能レベルの比較的高いもの』の多くが処分できなくなる恐れが出てくる。
これにより、基準の策定が遅延していることで廃炉作業それ自体も遅延しつつある、日本原電東海1号の現状とほぼ同様の状況が、あちこちで発生する事態に陥ってしまうだろう。原発再稼動について「審査に半年」と語っておきながら、実際には「1年数ヵ月以上の審査」が常態化しつつある規制委。廃炉にまで赤信号を灯しているかのようだ。廃炉作業の遅延に伴うコスト負担増が、国民負担として転嫁されることは間違いない。
規制委は、廃炉等に関する基準の策定についても、先送りしてはならない。こんな状態では、規制委はいつまで経っても、世界に堂々と顔向けできる原子力規制機関に昇華することはできないのではないだろうか。
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