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1.「断層」を巡る2つの新聞論調 産経新聞の主張と毎日新聞の社説
| 住民の命が大事(第一)か、会社の経営が大事(第一)か
└──── 山崎久隆(たんぽぽ舎)
○「活断層か否か」
敦賀原発の直下を通る断層の評価について、新聞論調は分かれている。そのうち、典型的な産経新聞と毎日新聞を比較してみる。産経新聞「主張」 『原発の断層評価 首相が調整すべき事態だ』と毎日新聞社説『原発活断層評価 疑わしきは「クロ」貫け』である。
まず、それぞれの要旨を紹介する。
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○産経新聞 (3月27日)
原子力規制委員会が敦賀原発の下にある断層を「活断層」とした有識者会議の報告書を受理したのは公正ではない。首相は調整を図るべき事態である。敦賀原発の破砕帯に関しては、活断層ではないとする日本原電などの主張がある。しかし、論拠を示そうとしたにもかかわらず、規制委に説明を妨げられたばかりか、一連の経過を不公正として、今回の評価書に対し63箇所の誤りがあるとする質問状を提出しているが、無視された。活断層説を疑う意見が専門家にも存在するのに、評価書案に反映されなかった。
敦賀原発を巡る審査を見ても規制委には改善の余地が大きい。規制委設置法の付則では、設置から3年となる今年9月までに組織の見直し措置を加えると定めている点を想起すべきだ。規制委が独立性の高い三条委員会だとしても国の行政機関の1つに過ぎない。行政権は内閣に所属している。最高責任者である首相が、健全な規制委の方向性を示すときだ。規制委をコントロールせよ。
○毎日新聞 (3月29日)
新規制基準において、原子炉など重要施設は活断層上に作ることは出来ない。有識者調査団による現地調査で、破砕帯を活断層と認定したのは2013年5月。日本原電は追加調査を実施して再評価を求めていた。しかし、研究者の一部に活断層に懐疑的な意見があったとしても、有識者調査団が2度にわたって「活断層であると認定」した判断は大変重い。日本原電は報告書に関する事前協議などを求めていたが「明白に信義則、適正手続きに反し、無効」だとする。原発の安全性を確保するには規制委としても「疑わしきはクロ」と判断してこれを貫くのは当然である。
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○産経新聞の暴論に毎日新聞が反論したような時系列になっている。まともな新聞社ならば、そういう反論を書くのは当たり前だろう。新聞同士の論争は、もっと盛んに行われるべきで、日本はその例が少ない。特に政府寄りの新聞が朝日などを「反日」などと罵倒しているのに対し、まともな反論が少なすぎる。
○「敦賀2号機の廃炉は会社の存亡に直結する。」(毎日新聞の中見出し)
日本原電が規制委員会の活断層判定に抵抗を続ける理由はここに尽きる。敦賀原発1号機は運転から既に45年を過ぎており廃炉とせざるを得ず、東海第二原発は津波災害を経て再稼働を目指すが、地元の反対は強いうえ、こちらも運転から36年を経ており、再稼働申請中に40年を超えることは十分考えられる。再稼働には再度20年などの延長申請と共に老朽化対策で1000億円などと、巨額の資金を投じなければならない。ただでさえ経営破たん状態の原電にできる相談ではない。現状で一番再稼働に近かったのが敦賀原発2号機(運転開始28年目)だから、これほどまでに猛反発している。
それに対して産経新聞が「応援団」を買って出て、意味の分からない「首相の調整」つまりは官邸の横やりを要求した。このヒントはおそらく3.11直後に菅直人首相(当時)が浜岡原発に対して「法的根拠なしで」首相の「要請」に基づき運転が止められたことがあったと思われる。いわば「意趣返し」だ。言うまでもないが、それは「本末転倒」だ。当時は浜岡原発の危険性を回避するため運転を止めさせる法的手段がなかったため、可能な対応として中部電力への「要請」という方法を取った。何とか安全側へと考えた末の対応だった。
○現状よりも「危険な側」にするために公権力(ただし首相に規制委の結論を変えることなどできない)を悪用しようというのとはまるで違う。もしそんなことをしたら、安倍晋三首相自ら「世界最高水準の安全基準」と言い続けたことが根底から覆る。自らその基準を変更できてしまうのであれば「世界最高水準」とは「安倍首相の胸先三寸」と同義語になるからだ。もともと断層の評価とは、建物や金属材料の強度を測るのとは全く異なる次元の科学である。後者は工学的安全評価だが、前者は「立地基準」に属する。基準はあくまで基準だ。計算や実験で求められる強度や耐性の評価とは違う。目安に過ぎない。
ある断層について、それが地震その他の理由により生じた断層か、地震を起こす断層かを明確に断定できるケースはそう多くはない。言い換えるならば、地震を起こす断層ではないと断定できるケースは少ない。多くは灰色。その場合、灰色を「黒と見なすか白と見なすか」の違いなのだ。
○黒と見なす方が安全側であることは論を待たない。では、「白と見なして良い」とする根拠とは何だろうか。日本原電の主張が合理性を持つには「安全よりも大事な何か」がなくてはならない。それは毎日新聞が詳しく書いたとおり会社の存続に他ならないであろう。市民の安全のためだとしても、作ってから28年しか経っていない原発を廃炉にすることは忍びない。それが日本原電の主張である。しかし住民の安全は会社の存立よりも重いという判断は当たり前ではないか。産経新聞の社説は、それに反論する側の立場が透けて見える。
○「人の命よりも国体が大事」が、70年前に「住民の命よりも会社が大事」になって高度経済成長期の日本社会に根付いていった。それが水俣病を生み出し公害を日本中に広めた。反省したのもつかの間、その後の経済成長期には全く同じようなロジックで、成長戦略が作られた。それがいま、原発の放射能により福島や東北、関東の人々を苦しめ続ける結果を生んだ。
毎日新聞は、苦しめられる人々の側の視点。産経新聞は苦しめる側の視点である。3.11以後の日本では、前者の視点から見る人がようやく過半数を超えているが、日々、後者の視点からの総反撃にあっている。再稼働など最たるものだ。辺野古も集団的自衛権もTPPも、根は全部繋がっている。
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