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原発を再開する前の準備(4) 事故で逃げる準備はできているか?
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2015年03月31日 武田邦彦 (中部大学)
1986年、共産主義国家ソ連で起こったチェルノブイリ原発事故の時には事故の翌日、キエフから1100台のバスが現場に急行して住民を避難させ、その年の夏には児童を1ヶ月、事故から遠い場所に移動させた。
そこには「頑張れ」とか「放射線に立ち向かえ」などという精神論はなく、科学的に淡々と国民を被曝から遠ざけた。ソ連は人命を尊重しないと日本では言われていたが、福島の時の日本政府のやり方とは全く違った。
福島原発事故では、政府はスピーディーを隠し、風向きを隠し、避難するためのバスを手配せず、近隣の町村の人は逃げ惑った。日本国民は無政府の中で生活をしているようだった。
なぜ、政府がバスも出さなかったのか、未だに分かっていない。日本の規則は平常時1年1ミリ、事故時1年5ミリで5年平均1年1ミリということが決まっていたのだから(決まりがなくて原発を動かす国などはない)、住民の避難に全力を尽くすのは政府の当然の役割だ。
アメリカ政府は直ちに福島原発から80キロのアメリカ人に対して避難するように指示した。
かつて私はアメリカの原子力潜水艦が入港する市の市長さんから電話をいただいたことがある。「原潜に事故が起こったときの訓練を行いたいが、どのぐらい遠くに逃げれば良いかわからない」ということだった。
そこで、私は政府、原子力関係者、東電などに聞き、さらに新橋にあった原子力資料館で調べたが結局、分からなかった。政府関係者は「原潜は事故が起こらない。またアメリカ軍の機密なので分からない」という返事だった。
福島事故では事故後数日経って、ある農家から男性が出てきた。それをとがめてパトロール隊が「何をしているのだ。速く逃げなさい」と言うと、その男性は「家に居ろと言われたので、家に居たが食料が無くなった。車がないので、どこに行けば良いのか?」と聞いていた。まさに最貧国の国民を見るようだった。
原発を再開にするに当たって、事故の時にどのようにするのか、決まっていない。またバスもでず国民はうろうろするだけでは再開はできない。
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