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“放射能は無主物”と賠償責任を回避する東電弁護士団は本誌取材も完全無視
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150403-00045974-playboyz-soci
週プレNEWS 4月3日(金)6時0分配信
東京電力福島第一原発事故で飛来した高濃度の放射性物質に汚染され、休業に追い込まれた福島県二本松市内のゴルフ場がある。
このゴルフ場が東電に対して放射性物質の除去などを求め、裁判所に仮処分申請した事件を覚えているだろうか。事故で漏れ出した放射性物質は「無主物(持ち主がいる物ではない)」と東電側が主張し、世間の顰蹙(ひんしゅく)を買った事件だ。
事故発生から5ヵ月後の2011年8月に申し立てられたこの事件で東電側は「ゴルフ場を営業できるか否かについて、現実的に機能する基準として考えられるのは(同年4月に文部科学省が提示した、放射能で汚染された学校の校舎や校庭を利用する際の暫定的目安である)毎時3.8マイクロシーベルトという値である」と主張。
「大人が任意にかつ不定期に利用するゴルフ場の営業の可否を決するに当たって、これよりも厳格な基準を採用しなければならない理由はない」と決め付けた。
子供が毎日通う小・中学校でさえ、この基準で問題ないと文科省が判断しているのに、大人が時々訪れるゴルフ場がこの線量で営業しないのは経営者側の勝手な言い分だろうーーというのである。
ただし、この「毎時3.8マイクロシーベルト」という暫定基準は、放射性物質を拡散させないため人や物の出入りを厳密に管理するよう国の法律が定める「放射線管理区域」の基準(3カ月当たり1.3ミリシーベルト。毎時に換算すれば約0.6マイクロシーベルト)の6倍以上に相当する。そもそも文科省が唱えた基準がひどすぎるのに、それを使って法律無視を助長する悪辣(らつ)な主張だった。
また、放射性物質の除去についても東電側は「放射性物質のようなものがそもそも民法上の『物』として独立した物権の客体となり得るのか」(訳:そもそも放射性物質は、所有権の対象となるようなシロモノなのか?)、「もともと無主物であったと考えるのが実態に即している」(訳:撒き散らされた放射性物質は、誰の所有物でもないと考えるのが正しい)と反論。
そして、「ゴルフ場の土地上に存する放射性物質について、債務者がこれを支配するようなことは不可能である。支配し、コントロールできないような放射性物質を排除するという不能なことを法が求めるとは考えられない」(訳:今や放射性物質はゴルフ場の土地の上にあるわけで、それを東電が勝手にどうこうすることは不可能だ。東電に所有権さえない放射性物質を、東電が除染すべきであると日本の法律が要求しているとは考えられない)との屁理屈で、世界の常識「PPPの原則」(公害発生費用発生者負担の原則)を否定。
さらには、損害賠償請求は裁判所を通じて行なうのではなく、東電側でルールを決めた「補償金ご請求のご案内」に従って請求するようゴルフ場側を諭したのだった。
加害者側が勝手に賠償スキームを作って、それを被害者に呑むように指示するなど前代未聞の話だ。なんと“頭が高い”加害者だろうか。
このような呆れるばかりの主張を東電に授けた代理人(民事訴訟では弁護士をこう呼ぶ)が誰なのか調べてみると、我が国における「五大法律事務所」のひとつとされる長島・大野・常松法律事務所(東京・千代田区紀尾井町)の5人の弁護士(梅野晴一郎、荒井紀充、柳澤宏輝、須藤希祥、井上聡の各弁護士)たちだった。弁護費用もきっとそれ相応の金額にのぼっていることだろう。
そこで、同法律事務所に取材を申し込んだところ、完全に無視された。「取材には応じない」といった返事さえ寄越さないのである。
ゴルフ場側もまた、取材に応じてくれなかった。ただし、その理由は「取材に応じても何の効果もないし、何の進展もないから、もう応じていないんです」。事故から4年が過ぎても、望んだ補償はまったく得られていないようだった。つまり、この仮処分申請で東京地裁は東電側に軍配を上げ、ゴルフ場の申し立てを却下していたのである。
裁判所に被害の救済を求めた被災者に対し、東電とその代理人たちはこんな感じで容赦がないし、こうした事例はそれこそ枚挙に暇(いとま)がない。さらに例を挙げよう。
原発事故による高濃度の放射能汚染に見舞われ、人が住めない「計画的避難区域」に国から指定された福島県川俣町山木屋地区在住の女性(当時58歳)が一時帰宅した際の11年7月に焼身自殺し、遺族が東電に賠償を求めた裁判がある。請求棄却を求める東電側の代理人は女性が生前、肩こりがひどく、薬を服用していたことを問題視し、「(自殺は)個体側の脆弱性も影響していると考えられる」と申し立てた。
つまり、従前からうつ病だったのではないかとの主張だ。被災者側代理人の広田次男弁護士は語る。
「女性は内職で肩こりがひどくて通院しており、そこを突いてきました。原発事故では18万人の人が避難していますが、その全員が自殺したわけじゃなかろう、というわけです」
そんな主張を福島地裁で展開したのは、ふじ合同法律事務所(東京・中央区銀座)に所属する竹野下喜彦、松永暁太、岩渕正樹の3弁護士。だが、こちらは福島地裁が東電に多額の損害賠償を命じ、東電側が控訴しなかったため判決はすでに確定している。
このように東電側の言い分が毎回、裁判所に認められているわけではないようだ。
元裁判官で“敗軍の将”でもある竹野下弁護士にコメントを求めたところ、代わりに電話に出た女性秘書氏が「弁護士は取材を受けていない」とのことだった。
●この続き、東電側と弁護士団のトンデモない屁理屈と賠償対応は発売中の『週刊プレイボーイ』15号でお読みいただけます!
(取材・文/明石昇二郎&ルポルタージュ研究所)
■週刊プレイボーイ15号(3月30日発売)「東電“リーガル・ハイ”軍団のトンデモ屁理屈集」より
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