149. 2015年4月01日 08:24:58
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>120・128 多摩散人です。120に引用された「福島原発事故考」( http://goku.s267.xrea.com/genpatsu/2015-01-24/ )というエッセイがある。 上の「エッセイ」は、「青森県がん情報サービス(http://gan-info.pref.aomori.jp/public/index.php/s14/c54-001/1894.html )がそのサイト内に掲載した次の「青森県小児がん等がん調査事業平成25年度報告書(平成26年2月集計分) http://gan-info.pref.aomori.jp/public/attachments/article/1894/H25syouniganhoukokusyo.pdf を基にして書かれています。その結論 「このことから、(六ヶ所再処理工場の)使用核燃料の再処理によって環境に放出された希ガス,処理水など放射能物質を撒き散らし、その放射能物質によって、住民の健康が脅かされていた事、そして、放射能物質が少なくなると、健康被害が軽減されたことで、使用核燃料の再処理による放射線の健康被害が証明された。」…A に対する私(多摩散人)の一素人としての疑問点を列挙します。 1.「報告書」の中の「2 発症時期別等で見る罹患状況」には「男性・女性・合計」の三つの表があるが、エッセイは「男性」の表だけを引用して論じている。これはおかしいと言えばおかしいが、「男性」の表も「合計」の表も、同じような傾向を示しているから、問題にしても仕方ないだろう。 2.「エッセイ」には「平成23年は、3月11日に東北地方太平洋沖地震が発生し、福島第一原子力発電所のメルトダウンしたほか、六ヶ所再処理工場も全電源喪失事故が起こっている。」と書いてある。 再処理工場が普通に稼働を停止したのではなく、事故で稼働が停止したのなら、福一のように、多量の放射性物質が周囲(青森県その他)にばらまかれ、その後、放射能は永く環境中に滞留し、四年後の今日まで放射能汚染がひどくて立ち入り禁止の区域の設定が続きそうなものだが、住民は、もとの土地で暮らしているらしい。 福一では原発周辺の住民は皆逃げているが、再処理工場の周辺の住民が逃げたと言う情報はない。逆に、小児がんの発症は減っている。再処理工場の事故は、放射線をばらまかない事故だったのか。それなら、事故ではなく運転停止ではないか。運転停止と呼んだ方が実情に合っている。 3.再処理工場の事故が、放射線をばらまかない、単なる運転停止のようなものであったと仮定しても、再処理工場はずっと前から大震災の日まで、普通に運転されて来たわけである。この再処理工場は、大事故もなく普通に運転されてきた状態でも、健康に影響を与えるほどの放射線を周囲にばらまき続けてきたのか。そして、大震災の日に事故または運転停止してからは、放射線をばらまかなくなったのか。著者は、その点を専門家に確認する必要がある。 4.再処理工場が大震災の日までどれくらいの量の放射線を周囲にばらまき、停止後、どれくらいの量の放射線をばらまいているか、当然、数値が記録された資料があるだろう。著者は、その点を資料にあたって確認する必要がある。 特に、その量が健康に影響を与える量かどうか。たとえば正常運転時の原発に比べてどうなのか。原発と違って、運転時に燃料が核反応を起こしているわけではないのではないか。それがどの位の量の放射線をばらまくのか。再処理工場は日本には確か一つしかないと思うので、外国の再処理施設などとも比べて調べる必要がある。 5.再処理工場が大震災の日まで放射線をばらまき、その日以後ばらまかなくなったと仮定しても、すぐその影響が小児がんの発症(正確に言うと、発症・初診・小児慢性特定疾患治療研究事業への申請)の数に影響するものだろうか。素人の私であるが、昔から放射線によるがん発症は晩発性であるとは聞いていたが、一例として下の資料などを見ても、「五年以上」と書いてある。 http://ir.library.osaka-u.ac.jp/dspace/bitstream/11094/17538/1/JJRS-46-6-811-818.pdf#search='%E5%B0%8F%E5%85%90%E3%81%8C%E3%82%93+%E6%94%BE%E5%B0%84%E7%B7%9A+%E6%BD%9C%E4%BC%8F%E6%9C%9F' (57ページ) 事故後五年以上経ってから小児がんの発症が低下したなら、このエッセイの結論と符合するが、事故後すぐに低下し始めたのは、再処理工場の停止と関係があるとは、到底考えられない。 6.報告書13ページの表と地図を参考に、再処理工場のある「上十三地域」と、青森県内ではそこと最も離れた「西北五地域」の平成23・24・25年度の「小児がん患者数」を「十八歳未満人口」で割って、大雑把に両地域の小児がん発症率を出して見ると、有意の違いはなさそうだし、むしろ「北西五地域」の方が高い。この比較は青森県内だが、県外の他の地域とも比較すべきである。 7.このエッセイは、福一事故でばらまかれた放射線の青森県への影響についてはまったく考慮していない。 福一事故による放射線の被害は、原発周辺の人が住めなくなった地域はもちろん、東日本全体に及び、まだ大きな健康被害は確認されていないが、もうすぐ阿鼻叫喚じゃなかった、「放射線による被害が誰の目にも明らかとなる時期」、また、「事態は“覆いがたい”ものとなる可能性が極めて高い時期」が訪れると事故後何年経っても予言され続けているほど、甚大なものであるという説もある。 それなのに、東日本に位置する青森県では事故後なぜ小児がんが減っているのか。それも説明されなければ説得力がない。青森県の小児がんの数の推移は、原発事故の影響と、再処理工場の稼働停止の影響を足し算した形で説明されなければ、やはり説得力がないだろう。 8.報告書を書いた学者だか調査員だかが、「男性、女性、男女を合計しても、大きな罹患数の変化は見受けられなかった。」(調査書9・10・11ページ)と書いている。これを無視するのではなく、どういう学問的根拠でそう判断されるかも確かめるべきだ。素人が「増えた・減った」と大騒ぎするほどのことではないという、何か科学的根拠があるのかも知れない。 9.以上で、このエッセイは、Aの結論を出すには十分な論証や調査がはなはだしく不足しているという私の考察の結論に達した。 10.また、128の「核のゴミを再処理しなくなったら小児がんの数が半減した」という推定が、まったく非科学的で安易なものであると考えることが出来る。
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