http://www.asyura2.com/15/genpatu42/msg/383.html
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前回は被ばくによる老化・劣化に関する投稿をしたが、今回は、兵器級高純度プルトニウムの
劣化について調べてみた。
プルトニウム239は半減期が2万4千年と長く、千年ぐらいは全く劣化の問題はないだろうと思うのは
素人考えであって、実は劣化は意外と早く起こり、数十年で使いものにならなくなるようだ。
まず水素爆弾の構造から見てみよう。
「水素爆弾」(Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%B4%A0%E7%88%86%E5%BC%BE
水爆は、プライマリとセカンダリと呼ばれる2つの部分から成る。
プライマリは起爆装置で、簡単に言えば、長崎に落とされたプルトニウム原爆と原理は同じである。
プルトニウム・ピットと呼ばれる中核部分でプルトニウム239を核分裂を起こして爆発させる。
そしてその熱と圧力により、セカンダリで核融合爆発を起こさせる。
プライマリのプルトニウムが劣化すれば、爆発力が低下するか、最悪の場合、
(最良の場合と言ったほうがよいかもしれない)不発に終わる。
したがってプルトニウムの劣化が核兵器の信頼性を左右する大きな要因となる。
兵器級プルトニウムの劣化については、さすがに日本語の情報はネット上に見つからない。
「plutonium aging」で検索すると英語の情報はいろいろ出てくる。
英語が得意な方は、以下の資料を読んでみていただきたい。
「The Case of the Aging Nukes」 (by M.S.S. Murthy, Jul 2010)
http://nopr.niscair.res.in/handle/123456789/9865
http://nopr.niscair.res.in/bitstream/123456789/9865/1/SR%2047%287%29%2030-31.pdf
「Plutonium pit - Aging issues」 (Wikipedia)
http://en.wikipedia.org/wiki/Pit_%28nuclear_weapon%29#Aging_issues
「An Overview of Plutonium Aging」
(Los Alamos National Laboratory, Plutonium Futures Conference 2003)
http://fas.org/programs/ssp/nukes/testing/plutoniumaging.pdf
要点をまとめると、プルトニウムの劣化は、腐食と、自発的に内部に欠陥を生じさせる自己照射
(self irradiation)により起きる。
プルトニウム(プルトニウム-ガリウム合金)は非常に反応性に富み、
高温多湿下では急速に酸化が進んでしまう。これが劣化の大きな問題の一つ。
プルトニウム239は、アルファ粒子(ヘリウム原子核)を放出してウラン235となるが、
ヘリウム原子核は電子を得てヘリウムガスとなり、プルトニウムの中にバブルを形成する。
これはボイド・スウェリング(void swelling)と呼ばれ、自己照射の最大の問題である。
これも重大な劣化をもたらす。
また、不純物であるプルトニウム241はベータ崩壊してアメリシウム241となり、
さらにアルファ崩壊してネプツニウム237となる。これら娘核種も劣化の原因となる。
ガンマ線も放出されるようになり、作業者が被ばくする危険もある。
格子構造の欠陥や相安定性の問題もある。
プルトニウムは予測不能な金属で、突然劣化が進む可能性があると言われる。
その特性は、まだよくわかっていないことも多い。
以上だが、われわれが想像する以上に、プルトニウムは不安定で劣化しやすい物質のようだ。
兵器級プルトニウムの寿命は、50年、いや100年だと諸説があるようだが、まさか爆発させて
確かめるわけにもいかない。
高い信頼性を維持するためには、早めに10-20年ごとに新しいものに交換することが必要だろう。
当然、交換した劣化プルトニウムの処理の問題も生じる。
ここで一番重要なことは、核兵器を保持するためには、原発(とくに高速増殖炉)や核処理施設を維持して、
高純度プルトニウムを供給し続けなければならないことだ。
日本は核兵器を何発も製造できるプルトニウムをすでに保有していると言われているが、
それらはいずれは劣化して使いものにならなくなる。
もうプルトニウムは十分な量を確保したので、原発からは撤退してもかまいませんよ、
ということにはならないのだ。
プルトニウム供給がこの先も必要であることに気づけば、政府がなぜ、全く非効率で利点がない
発電方式である原子力に異様に執着し、放棄しようとしない理由がよくわかるだろう。
もともと原子力発電は、兵器用プルトニウムの抽出が本来の目的であって、
発電は単なる隠れ蓑に過ぎない。発電会社は暴力団のフロント企業のようなものだ。
この点を理解しないと、原子力の問題は理解できない。
核兵器は使用すれば恐ろしい災禍をもたらす。
使用しなくても、半永久的にプルトニウムの供給が必要であり、環境を汚染し続ける。
敵国やテロリストからは核施設を標的にされ、国防上極めて深刻な問題となる。
今回のように核施設が大爆発を起こせば、核攻撃を受けるよりはるかに甚大な損害を被る。
核兵器は災いをもたらすだけで、良いことは一つもない。
われわれが安心して眠れないのは、核兵器がないからではなく、核兵器があるからである。
一刻も早く、原子力、核兵器とおさらばして、恐ろしい放射能汚染や核惨事のない平和な世界を、
われわれはめざすべきだろう。
(関連情報)
「プルトニウム」 (史跡探訪・核物理学ノート)
http://www.ne.jp/asahi/hayashi/love/nuclear_plutonium.htm
プルトニウムの化学・物理的性質
(地球資源論研究室、 「プルトニウム 超ウラン元素の正体」 友清祐昭・著 講談社ブルーバックス 1995)
http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/ReneN_P_P1.html
「核燃料と使用済核燃料廃棄物、放射能が高いのはどちらですか」 (Yahoo知恵袋 2011/8/5)
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1468203869
「槌田敦氏が4号機原子炉で核兵器用プルトニウム生成の可能性を指摘」 (拙稿 2014/10/16)
http://www.asyura2.com/14/genpatu40/msg/681.html
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