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『美味しんぼ』の原作者、雁屋哲氏。2011年11月から13年5月にかけて、取材で何度も福島を訪れた
『美味しんぼ』鼻血問題で「風評被害だ」と大バッシングを受けた原作者・雁屋哲が騒動の真相を激白!
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20150313-00044879-playboyz-soci
週プレNEWS 3月13日(金)6時0分配信
福島を取材で訪れた主人公が鼻血を出す描写が大バッシングを受けた『美味(おい)しんぼ』鼻血問題。
騒動から10ヵ月がたった先月、原作者の雁屋哲氏が沈黙を破り、ついに反論本を出版した。タイトルはズバリ『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』(遊幻舎)。鼻血は決して風評ではないとする著者に、じっくりと話を聞いた。
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―鼻血騒動の時はどんな感じでしたか。
雁屋 僕はシドニーの自宅にいたので、日本の騒ぎを最初はよく実感できませんでした。だから、小学館のマンガ雑誌『ビッグコミックスピリッツ』誌の編集者から連絡を受けた時には「フーン」くらいの感じで聞いてました。
―そんなに大ごとではないだろうと。
雁屋 でも話を聞いていくと、編集部に20回線ある電話が朝9時から夜10時まで抗議で鳴りっ放しで、仕事にならないという。そのうち石原環境大臣や安倍首相までが発言し始めた。正直、「なんだこりゃ」って感じでした。
―意外でしたか。
雁屋 きちんと段階を追った議論がありませんでしたから。いきなり「鼻血は風評被害だ」「雁屋哲は風評被害をまき散らして福島県民に害を与えた」って決めつけてる。
―雁屋さんは福島を取材した後、どういう状況で鼻血を出したのですか?
雁屋 2011年11月から13年5月にかけて、福島と福島第一原発の取材で福島を何度も訪れていました。その取材が終わって、しばらくしてから家族と晩ご飯を食べてたんです。そしたら突然、こう何かヌルッといやな感じがして、右の鼻から血が出てきた。その時はもうほんとに慌てちゃってね。だって、鼻血なんか出したことなかったから。
―今まで一度も?
雁屋 子供の時にけがをして一度出したぐらい。それが何もしてないのにいきなりドロドロドロって出てきた。ティッシュペーパーで押さえても止まらなくて。翌日も午前2時ぐらいにふっと急に目覚めて、鼻に手をやったらドロッ。やっぱりすごい出た。そんな症状が4日も5日も続くわけ。で、しょうがないから東大病院へ行って毛細血管をレーザーで焼いてもらったら、ようやく止まりました。その時の医者は、放射線との関係はわからないといっていました。
―症状は鼻血だけでしたか。
雁屋 ひどい倦怠感もあった。取材に行けば疲れるのは当たり前ですが、誰かが僕の背骨をつかんで地べたに引きずり込むような感じの疲労。コンピューターの前で仕事しても2時間でアウトなんです。僕は仕事始めたらガンガンやるほうだけど、それができない。部屋のベッドに横になってしばらく休まなきゃダメだった。
僕が鼻血が出たと言ったら、案内役の人が「ええっ、雁屋さんもそうなの? 僕も出て困ってるんだよ」って。一緒に行ったカメラマンも、「僕はそんなひどい鼻血じゃないけど、鼻をかんだら血が出てきました」という。マンガに出てきますが、その話を元双葉町長の井戸川克隆(いどがわ・かつたか)さんにしたら「みんなそうです。僕なんか鼻血がザンザン出て、たくさんの人が疲労感で苦しんでますよ」と教えてくれたのです。
―なるほど。足かけ3年の福島取材で、トータルどのぐらい被曝したのでしょうか。
雁屋 それは測っていませんでした。それから、取材相手がマスクしてない時はこっちもしなかった。相手に対する遠慮があったんですね。今考えれば、ずっとしとけばよかった。そうしたら鼻にその微粒子がつくこともなかったんじゃないかな。でも普通のマスクだと放射性物質は通過しちゃうから、やっぱり吸い込んじゃうか。
―鼻血が出た原因は内部被曝(*1)だと。
雁屋 放射線医学の専門家である松井英介先生に何度も取材をし、内部被曝の理論をきちんと踏襲した上での「フリーラジカル説」(*2)を教えてもらいました。それで、低線量被曝でも人によっては鼻血が出ることがわかりました。ところがこのフリーラジカル説って、認めない学者もいるんですよ。
■この続きは、発売中の『週刊プレイボーイ』12号(3月9日)でお読みいただけます!
(取材・文・撮影/桐島 瞬)
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(*1)内部被曝
被曝には外部被曝と内部被曝がある。外部被曝は体の外から放射線を浴びることで、レントゲンや放射線治療もこれに含まれる。主に透過力の高いγ線やX線のため、被曝はするが放射線自体は体を突き抜けてしまう。
一方、内部被曝は放射性物質の含まれたものを食べたり飲んだり、また大気中から吸い込んでしまうこと。体外に排出されず一部が臓器や骨に沈着し、そこから透過力は弱いが勢いの強いα線やβ線などが細胞を照射し続けることでがんの原因などになるといわれている。
一度に7Sv(シーベルト)の高線量を全身に被曝すると人は死ぬといわれるが、低線量でも長時間浴び続ければ細胞が破壊されることを発見したのがカナダ人医師のアブラム・ペトカウ氏で、これはペトカウ効果と呼ばれる。
(*2)フリーラジカル説
フリーラジカルとは対(偶数)になっていない電子を持った不安定な状態の原子や分子のことで、放射線障害の主要な原因とされている。本来、電子は対の状態で安定する。このため、フリーラジカルは正常な状態の原子や分子から電子を奪おうとして傷つけてしまう。
鼻血の原因を簡単に言えば、放射性物質が鼻の粘膜に吸着された際に、放射線によってフリーラジカルが生成され、その結果、鼻粘膜の毛細血管の細胞膜が死んでしまい、血管が破れて鼻血が出るというのが雁屋氏の見解だ。この説は、低線量被曝の影響を指摘したペトカウ効果と併せて、『美味しんぼ「鼻血問題」に答える』の中で詳しく述べられている。
■雁屋 哲(かりや・てつ)
1941年、中国・北京生まれ。東京大学教養学部基礎科学科で量子力学を専攻。電通勤務を経てマンガ原作者になり、1983年より『美味しんぼ』(画・花咲アキラ氏)を連載
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