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日本が戦争犯罪の“抜け穴”になるおそれも…プーチン大統領に“逮捕状”出した日本人裁判官 単独取材で見えた「日本の課題」/日テレNEWS
日テレNEWS NNN によるストーリ
https://www.msn.com/ja-jp/news/national/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%8C%E6%88%A6%E4%BA%89%E7%8A%AF%E7%BD%AA%E3%81%AE-%E6%8A%9C%E3%81%91%E7%A9%B4-%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%82%8B%E3%81%8A%E3%81%9D%E3%82%8C%E3%82%82-%E3%83%97%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%B3%E5%A4%A7%E7%B5%B1%E9%A0%98%E3%81%AB-%E9%80%AE%E6%8D%95%E7%8A%B6-%E5%87%BA%E3%81%97%E3%81%9F%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E8%A3%81%E5%88%A4%E5%AE%98-%E5%8D%98%E7%8B%AC%E5%8F%96%E6%9D%90%E3%81%A7%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%81%9F-%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AE%E8%AA%B2%E9%A1%8C/ar-AA1mzw7X?ocid=msedgdhp&pc=U531&cvid=7c8522581a2e45c2b01aad4e4d36dce5&ei=26
ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、2023年3月にプーチン大統領に戦争犯罪容疑で逮捕状を出した国際刑事裁判所の赤根智子裁判官が、NNNの単独取材に応じた。赤根氏は「日本が戦争犯罪のループホール(抜け穴)になるおそれがある」と指摘する。その理由とは。
2018年、ICC(=国際刑事裁判所)の裁判官に就任した赤根智子氏。日本人としては3人目だ。22年2月、ロシアがウクライナへの侵攻を開始したことについては、「ヨーロッパで戦争犯罪が大々的な形で起きるとは思っていなかったので衝撃を受けた。自分自身も目が覚めた気がする」と振り返る。23年3月には、ウクライナの占領地からの子どもの連れ去りに関与したとして、ロシアのプーチン大統領に対し、戦争犯罪容疑で逮捕状を出す判断に加わった。
ロシア側は激しく反発し、赤根氏らを指名手配している。赤根氏は、指名手配されたことを受け、日ごろから安全面に配慮していると語った。
「私はもともと日本の検事です。被疑者による物理的・肉体的、あるいはそれ以外の脅威にさらされることがないわけではない。それに負けていては、司法の仕事は務まらない。(ロシアに指名手配されて以降)なるべく昼間に出歩き、外では飲み歩かないようにしている。食事も知人ととるようにしていて、面識がない人とは食事に行かない」
赤根氏は、自らの身に危険が及ぶことは「あり得る」と語った。指名手配されて以降、実際に怖い目にあったことがあるかについては「さまざまな関係者がいるので申し上げられない」と述べるにとどめた。
ICC(=国際刑事裁判所)はオランダ・ハーグにある。戦争犯罪や人道に対する罪、大量虐殺などを犯した個人を訴追して処罰するために設置された常設の国際刑事裁判機関だ。2002年に設立条約が発効し、日本は07年に加盟した。現在123の国と地域が加盟しているが、ロシアやアメリカ、中国などは加盟していない。そのため、プーチン氏が自国にとどまる限り、逮捕は困難な状況だ。ただ、ICCの加盟国を訪問すれば身柄を拘束される可能性があり、逮捕状が出たことでプーチン氏の外遊は事実上、制限されている。
赤根氏はプーチン氏への逮捕状について「3人の裁判官で慎重に相談しながら決めた」とした上で、十分な証拠があったことを強調。「日本の逮捕状とは異なり、ICCの逮捕状には有効期限がない。長いスパンで見ている」と述べ、ICCが「最後の砦(とりで)」としての役割を果たすことが重要だと語った。
ロシアによるウクライナ侵攻やイスラエルとイスラム組織「ハマス」による衝突など、世界では戦争犯罪が疑われるケースが後を絶たない。しかし、日本の法制度には戦争犯罪や人道に対する罪に関する処罰規定はないため、赤根氏は「日本が戦争犯罪のループホール(抜け穴)になるおそれがある」と指摘。法整備が急務だと訴えた。
「ヨーロッパの多くの国々には『戦争犯罪』に関する国内法がある。しかし日本には、国外で外国人が行った戦争犯罪に関する処罰規定がない。そのため、たとえば国外で起きた日本人が関わっていない戦争犯罪の容疑者が日本に“難民”として入ってきた場合、日本では何の法的措置もとることができないのが現状だ。日本は戦争犯罪者が逃げ込める場所になってしまうのではないか、日本の法制度がループホール(抜け穴)になってしまうのではないか…と懸念している。最終的には、法の世界における日本の安全保障にもつながる問題で、こうした事態をなるべく早く解消するべきだ」
―――日本に戦争犯罪に関する国内法がないのは、なぜか?
「日本は戦後、ずっと平和を維持していて、日本周辺でも大きな有事が起きていない。そのため、戦争犯罪に関する国内法は必要ないという声が一番大きかったのではないか」
「ただ、ウクライナ(侵攻)の事態が起きて世界の情勢が大きく変わり、法整備の必要性が増していると感じる。正直、私自身もウクライナの事態が起きるまでは、あまり考えていなかった。ただ、今は日本の近辺で戦争犯罪が起きないという断言はできない。日本を守るのは防衛力だけではない。法の力によって“そういうことをしたら処罰されるのだ”という姿勢を示すことが重要だ」
赤根氏へのインタビューを通して感じたのは、並々ならぬ正義感だ。その強い正義感は、どこで培われたものなのかと聞くと、子どもの頃に見ていたテレビ時代劇『銭形平次』に少なからず影響を受けたという。善事を勧め、悪事を懲らす「勧善懲悪」のストーリーが好きで、検事やICCの裁判官としての仕事にも通ずるものがあると語った。
「勧善懲悪――最終的には必ず善が勝つというストーリーが非常に好きだった。誰かが悪いことをしたときは、処罰されなければならない。検事は、法律上の手続きやプロセスが大切で、有罪が認められるかという問題もあるので、単純ではない。ただ、正義のために仕事をしなければならないという気持ちは変わらなかった」
「検事として正義のためにずっと仕事を続けてきて、今もその延長線上にいる。世界でも不正義、不処罰がまかり通っている。そういうことに対して、何らかの形で法的に改善する方法を考えたい、その一心だ」
ICC(=国際刑事裁判所)の裁判官。1956年生まれ、愛知県出身。東京大学法学部卒業後、1982年に検事に任官。函館地検検事正、法務総合研究所所長、最高検察庁検事兼国際司法協力担当大使などを歴任。2018年に日本人3人目となるICCの裁判官に就任。日本でいう起訴までの段階を担当する「予審部」に所属。任期は9年間で2027年3月まで。
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