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ついに国連からも見放されたか…? ここにきて、岸田総理の「中途半端さ」が世界にも”バレ”はじめている/現代ビジネス
池畑 修平 によるストーリー •
https://www.msn.com/ja-jp/news/world/%E3%81%A4%E3%81%84%E3%81%AB%E5%9B%BD%E9%80%A3%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%82%E8%A6%8B%E6%94%BE%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%81%8B-%E3%81%93%E3%81%93%E3%81%AB%E3%81%8D%E3%81%A6-%E5%B2%B8%E7%94%B0%E7%B7%8F%E7%90%86%E3%81%AE-%E4%B8%AD%E9%80%94%E5%8D%8A%E7%AB%AF%E3%81%95-%E3%81%8C%E4%B8%96%E7%95%8C%E3%81%AB%E3%82%82-%E3%83%90%E3%83%AC-%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%84%E3%82%8B/ar-AA1i3QVK?ocid=msedgdhp&pc=U531&cvid=cc5c8ab94ed444508e39e55058d43b81&ei=8
気候変動対策をめぐり、G7の議長国でもある日本に厳しい目が向けられている。
国連総会に合わせ、国連のグテーレス事務総長が呼びかけ、9月20日に開催された『気候野心サミット』で、岸田総理が演説できなかったのだ。 この国際的な動きは日本が国際社会のなかでいよいよ存在感を失ったことを意味するのか…? NHK「国際報道」キャスターを務めた、元NHK解説主幹の池畑修平氏が解説する。
気候変動野心サミット
野心、という言葉にはあまり肯定的な響きがないように思える。日常会話で使われることは多くないが、たまに使われるときも大抵は「野心家」「領土的野心」などと何かしら悪だくみをしているという意味合いが込められる。
だからであろう、大手メディアの中には、9月20日に国連本部で開催された『気候野心サミット(Climate Ambition Summit)』のことを『気候変動対策の会合』とか『気候変動イベント』という具合に「野心」を抜いた表現に訳した社もあった。
自分も長いことニュースの原稿やタイトルを整える仕事をしていたので、気持ちは分かる。気候変動対策に野心という言葉は、確かにしっくりこない。だが英語の”ambition”は肯定的な文脈で使われることが多い。大きな望み、夢、意欲など。
気候と野心の組み合わせに違和感を覚えたのなら、クラーク博士の「少年よ大志を抱け(Boys be ambitious)」を引き合いに出して「気候大志サミット」と訳してもよかったのでは、と思う。そうした訳のほうが、なぜ岸田首相が参加できなかったのかが、より明確に伝わる。
参加要件を満たしていなかった日本
国連のグテーレス事務総長がよびかけたこのサミットに参加するには要件があった。それは、平たくいえば「新しさ」。温室効果ガス排出を減らすうえで何か新しい取り組みを提示することだ。
国のレベルでいうと、パリ協定に基づく国際公約であるNDC(「国が決定する貢献」)をアップデートすることが求められた。日本のNDCの柱は、温室効果ガスの総排出量を、2013年度の14億800万トンから2030年度に7億6000万トンまで減らすこと。率にして46%の削減だ。
この削減目標は「低い」という批判も専門家からは出ているのだが、日本政府がNDCを国連に提出したのは2021年10月。それを短期間でアップデートせよ、というのは厳しいようにも思える。
しかし、実は2021年にイギリス・グラスゴーで開催されたCOP26で「各国は2022年にNDCを再検討・強化する」と合意されているのだ。なので、今回のサミットでグテーレス事務総長が課した参加のハードルは、無茶ぶりとはいえない。
岸田首相は「気候大志サミット(と訳すことにしよう)」に参加してスピーチをする準備はしていたという。そうした機会が実現しなかった理由について、松野官房長官は会見で「日程の調整がかなわなかった」と説明している。しかし、上記のとおり、そもそもNDCを再検討していない日本が参加するのは難しかった。
アメリカや中国、インドといった温室効果ガス排出大国などもこのサミットに参加できていない(アメリカからはカリフォルニア州知事は参加)。「なんだ、米中印も欠席したのか。岸田首相が演説できなかったからといって大騒ぎする必要はないね」と政府が安堵したわけではないと願う。
慢心するのではなく、そうした国々と並んで「大志が足りない」とグテーレス事務総長から烙印を押されたと受け止めるべきであろう。
日本政府代表団の姿がないサミットにおいて、グテーレス氏は「人類は地獄の門を開けた。恐ろしい暑さが恐ろしい影響をもたらしている」という表現を使って地球温暖化にブレーキがかからない現状に改めて警鐘を鳴らした。
実際、日本も今年の夏は異様な猛暑であった。近年、「ゲリラ豪雨」や「線状降水帯」といった新たな雨の降り方も珍しくなくなっている。地球全体でみても、WMO(世界気象機関)は10月5日、今年9月の世界の平均気温は観測史上最高であったと発表している。これまでの最高であった2020年9月を0.5度上回ったという。これは大幅な上昇だ。
世界の潮流から外れて…
話を日本政府の気候変動対策に戻すと、「2030年度に温室効果ガスを2013年比46%削減」という目標は「低い」という批判もある上に、そもそも達成が危ぶまれている。
何よりも、日本の対策の中身が、世界の潮流から外れているとの批判が絶えない。具体的には、大半の国がいかに早く石炭火力発電をやめて再生エネルギーに移行するかという課題に注力しているのに、日本は石炭火力発電の「延命」にこだわっている。
そうした延命策の一つが、石炭の一部をアンモニアに置き換える「アンモニア混焼」。アンモニアは燃やしても二酸化炭素を直接的には排出しないため「低炭素燃料」とされる。それに目をつけて日本政府は「アンモニア混焼」を推進しようとしているのだが、これは世界的には技術面・コスト面から実現性がかなり疑問視されている。
今年、岸田首相の地元である広島で開催されたG7サミットの共同声明でも、アンモニア混焼などに関しては「使用を検討している国があることにも留意する」とそっけない表現が盛り込まれるにとどまった。日本以外のG7は、アンモニア混焼に否定的なのだ。また日本が得意とする(?)「ガラパゴス化」という言葉が思い浮かんでしまう。
日本が世界とは違う方向に動いていることへの懸念は、日本の経済界などでも高まっている。10月6日、都内で開催された『気候変動アクション日本サミット』では、冒頭、『気候変動イニシアティブ』の末吉竹二郎代表がこう述べた。
「民間企業・市民は日本政府頼みになってはならない。政府を待てば待つほど、気候変動対策の国際競争で後れを取りかねない」。一刀両断である。
政府が何もやっていないわけではない。例えば今年5月に脱炭素社会への移行を推し進めるための「GX推進法」を成立させている。法のポイントは温室効果ガスの排出に金銭の負担を求める「カーボンプライシング」。これは世界的に導入が広がる手法だ。
もしかすると、岸田首相はこのGX推進法を「気候大志サミット」で発表して「我が国も頑張っていますよ」と誇るつもりであったのかもしれない。
だが、こちらに対しても末吉氏は辛口の評価であった。いわく、「GX推進法は2030年度に温室効果ガス46%削減という国際公約にどれほど貢献するのか示されていない。つまり結果へのコミットメントがないわけだ。そのようなこと、民間の投資では考えられない」。
確かに、GX推進法に基づく制度の導入は早くて2028年だという。これでは2030年までをターゲットにしている削減目標に意味ある貢献をするのは難しい。
なかなか明るい材料が見えてこない日本の気候変動対策だが、ボヤいてばかりはいられない。今回の「気候大志サミット」には全く間に合わなかったわけだが、NDCは5年ごとには改定することが義務づけられている。
日本の次のNDCは2025年末に開催されるCOP30より9か月から12ヵ月前には国連に提出することが求められている。
環境保護団体は、そのスケジュールから逆算すると、日本が社会での広い議論を基にNDCを改定するには、遅くとも2023年末には改定への検討が始まる必要があると指摘する。政府だけでなく、国民も「大志」を形作ることが求められている。それも、早く。
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