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洋上風力発電汚職 再生可能エネルギー事件の背景/清永聡・nhk
2023年09月08日 (金)
清永 聡 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/487486.html
秋本真利衆議院議員が逮捕されました。洋上風力発電事業をめぐる受託収賄の疑いです。
政府が再生可能エネルギー拡大の切り札と位置付けている洋上風力発電。全国で導入拡大が進む中で起きた今回の事件、その背景を解説します。
【容疑は6000万円余の借り入れや資金提供】
東京地検特捜部によりますと、受託収賄の疑いで逮捕された衆議院議員の秋本真利容疑者(48)は、洋上風力発電事業をめぐり、東京の風力発電会社「日本風力開発」の塚脇正幸元社長から合わせて6000万円あまりに上る借り入れや資金提供を受けた疑いがもたれています。
特捜部は8月、議員の事務所を捜索するなどして、捜査を進めていました。秋本議員は外務政務官を辞任し、その後自民党を離党していました。
【自民党で“反原発”国会議員として「再エネ旗振り役」に】
逮捕された秋本議員はどのような人物なのでしょう。
自身が3年前に出版した本には、こう書かれています。
「原子力発電の新増設やリプレース(建て替え)、核燃料サイクルには明確に反対しています。(中略)
政治がやるべき仕事は、危険で経済合理性もない原発や核燃料サイクルの延命に巨額の国費をつぎ込み続けることではなく、再生可能エネルギーを主力電源として独り立ちできるように育成することである」(「自民党発!『原発のない国へ』宣言」)
当時、自民党議員であるものの「脱原発」の推進派で、再エネ推進の旗振り役の1人とされていました。
洋上風力発電の導入を促進する「再エネ海域利用法」(2019年4月施行)に、国土交通政務官として法案作成にも関わり、自民党の「再生可能エネルギー普及拡大議員連盟」の事務局長を務めていました。
【洋上風力 世界の状況は?】
再生可能エネルギーと言えば、水力発電に加え、太陽光や地熱、陸上設置の風力発電などいくつもあります。
ただ、大規模な太陽光発電は景観を損なうという声や、不適切な設置の場合土砂災害の懸念が指摘されます。地熱や陸上風力は適地が限られます。
これに対し、海の上に多くの風車を設置する洋上風力発電。日本は周囲を海に囲まれているため、大量導入が可能です。なお環境への不安の声もありますが、陸地からも離れることから陸上より騒音や景観の懸念も少なくなるのではとされています。
海外でも多くの国がこの洋上風力発電の導入に力を入れています。
陸上を含めた風力発電の割合は、イギリスやドイツなど2割前後に上る国がある一方で、日本はわずか0.9%しかありません。
四方を海に囲まれた環境の割に圧倒的に少なくなっています。
【再エネの切り札と課題は「コスト」】
そこで、政府はこの洋上風力発電を再生可能エネルギー拡大の切り札と位置付け、2040年までに設備容量が最大4500万kWキロワットと原発数十基分にも相当する目標を掲げています。
今後多くの設置が見込めることから、電力会社、商社、メーカーなど、いま企業が次々と洋上風力発電事業に参入し、開発に取り組んでいます。
ただ、課題はコストです。
再エネは「FIT=固定価格買取制度」といって、電力会社が一定価格で一定の期間買い取ることを国が約束しています。
これは発電コストを基礎にして決められるため、コストが高いほどFIT価格も高くなる傾向があります。
洋上風力発電(着床式)は昨年度(2022年度)1キロワットアワーあたり29円。太陽光よりも大幅に高くなっています。
コストをどう下げていくかが、洋上風力発電の課題となっているわけです。
【汚職事件の経緯と“入札の衝撃”】
今回、洋上風力発電のこのコストをめぐって、ある入札結果が業界で驚きをもって受け止められました。事件の経緯を見ながら説明します。
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▽2021年12月、3つの洋上風力発電で入札が行われました。「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」「由利本荘市(ゆりほんじょう)沖」、「千葉県銚子市沖」です。その結果、大手商社三菱商事を中心とする企業連合が3件すべてを落札しました。
驚かれたのはその価格です。
企業連合が示したのは、1キロワットアワーあたり11.99円から16.49円という発電価格。これまでよりも大幅に低い価格でした。
「日本風力開発」は、この入札で秋田県の2つの海域に参入を目指してきましたが、価格面で敗れ落札できませんでした。
▽ところがその3か月後の去年2月、秋本議員は衆議院予算委員会で「2回目の公募からは評価の仕方を見直してもらいたい」と繰り返し求め、運転開始時期の早さに重点を置くよう要望します。
▽この質疑の翌月である去年3月、政府はすでに始まっていた新たな第2ラウンドの公募を一旦停止。
▽8か月後の去年10月27日に稼働時期の早さに重点を置くなどとする新たな評価基準を公表しました。
▽元社長からの資金の一部1000万円は、この基準が見直された翌日に受け渡されたことが、関係者への取材で分かっています。
【国会質問が汚職事件に】
このように今回の事件は国会質問が絡んでいるところに特徴があります。
特捜部は2019年以降、元社長から会社が有利になるような国会質問をするよう複数回にわたって依頼を受けていた疑いがあるとみて調べています。
もし業者側の請託によって国会質問が行われたのであれば、国会議員の最も大事な職務が、ゆがめられていたことになります。
背景を含め徹底した事実の解明が必要でしょう。政府による評価基準の見直しも、その経緯について検証が求められます。
贈賄側の塚脇元社長は調べに対し、提供した資金について「国会質問の謝礼だった」と容疑を認める趣旨の話をしています。
一方秋本議員は弁護士を通じて「塚脇氏から依頼されて、日本風力開発の利益を図るため国会質問をしたということは断じてありません。国会質問をした謝礼としてわいろを受けたという事実はありません」など容疑を否認するコメントを出しました。
その秋本議員は冒頭紹介した著書の中で、自らについてこう述べています。「私は(原発を持つ)電力会社による送迎は基本的にお断りしていますし、食事が出た場合は値段を聞いて、必ずその金額を置いてくるようにしています。面倒くさい議員だと思われているでしょうが、タダほど高いものはありません」
では、合計で6000万円という多額の借り入れや資金提供は何だったのか。先月、捜索を受けた後も本人は公の場で一切説明していません。
今後は具体的な請託の内容と金銭のやり取りの経緯について、特捜部による解明が望まれます。
【クリーンエネルギーの公正さを】
今回の事件の後も、洋上風力発電が再エネの切り札であることは、おそらく変わらないでしょう。
ただ、忘れてはならないのは、洋上風力発電はすでに述べた通り、普及を進めるため高いFIT価格で買い取られているということです。その費用を負担しているのは、電気を利用する私たちです。不透明な金銭のやり取りがあれば、制度の信頼も損ないかねません。
次世代の主力と期待されるクリーンエネルギー。その名の通り、透明性と公正さを確保していくことが望まれます。
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