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春闘 転換点になるか 相次ぐ大幅賃上げ/今井純子・牛田正史・nhk
2023年03月15日 (水)
今井 純子 解説委員牛田 正史 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/480765.html
春闘は3月15日に集中回答日を迎えました。
大企業では、異例とも言える大幅な賃金引き上げの回答が相次ぎました。
ただ、多くの人が豊かさを感じられるようにするには、もっと幅広い企業で、そして、来年以降も賃金が上がるのが当たり前、という社会に転換することが必要です。
どうすれば実現するのか、考えていきます。
【大企業 大幅な賃上げ】
まず、いくつか代表的な大企業の結果をみてみます。去年を大幅に上回る回答が相次ぎ、基本給の底上げにつながるベースアップに相当する分で、月1万円を超える賃上げも出ています。今年は、経営側が、早期に満額の回答を示したり、組合の要求を上回る回答を示したりする異例の動きも相次いでいます。定期昇給とベースアップをあわせた賃上げ率も、高い水準で、経済の専門家の間では、全体で賃上げ率が、3%台になるのではないか、という予想も出てきています。そうなると、1994年以来、およそ30年ぶりの高い水準ということになります。
また、非正規社員も一部で大幅な賃上げの動きが出ています。
主な例では、流通大手・イオンや東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドが7%の賃上げを行うほか、サッポロビールは月9000円のベースアップを行います。
また、会社で独自に定める企業内最低賃金、これは賃金の底上げにつながる取り組みですが、大手製造業では、15日時点で、平均月7000円あまりの引き上げとなっています。
これは去年の2倍以上の金額です。
このように非正規社員も、例年以上に賃上げが進んでいると言えますが、もともと非正規社員が多い大企業が中心で、全体にどこまで広がるかは、まだ不透明な状況です。
【背景と評価】
長年、賃上げの重要性が指摘され、十分、余力もあったのに、対応してこなかった。それが、なぜ、今年は、経営側主導でここまでの賃上げに踏み切ったのでしょうか。その背景には、物価高騰への配慮だけではなく、「人材確保」へのかつてない強い危機感があります。
少子化による人手不足は、コロナ前も叫ばれていましたが、当時は高齢者や女性、海外からの人材で、なんとか、対応できていました。
ところが、コロナ禍からの経済回復で、雇用を増やしたい企業が増えている中、団塊世代が75歳になり仕事から引退し始めています。女性の労働参加率も頭打ちになり、さらに、円安で、日本で働く魅力が減っているという指摘もでています。新卒、経験者、外国人材を問わず、優秀な人材を雇って、定着してもらうためには、思い切った賃上げをせざるをえない。そして、ライバル企業が賃上げしたら、自分も上げざるを得ない。そのような事情もあるのです。
一方、労働組合の反応です。
金属労協は15日の会見で「大きな成果を引き出した」としていますが、一方で、「この良い流れをどこまで広げられるかがポイント」とも話しています。
つまり、これからが重要という認識です。
というのも、今、実質賃金が下がり続けていて、前年の同じ時期と比べて10か月連続でマイナスとなり、ことし1月には4%も減少しました。
この状況を打開するには、大企業の正社員だけでなく、働く人の7割を占める中小企業や、非正規社員にまで、賃上げを広げていく必要があります。
これこそ、ことしの春闘の最大の焦点だと感じます。
ただ賃上げは、そう簡単ではありません。
例えば非正規社員を見ると、賃上げを予定する企業は全体の55%という調査結果もあり、正社員などの80%と比べて、開きがあります。
これまで中小企業や非正規社員の賃上げが十分に進んでこなかったのは、労働組合にも責任があったと感じます。今度こそ広げられるのか、まさに真価が問われます。
【中小・非正規に賃上げを広げる課題】
では、どうすれば広く、中小企業や非正規社員の賃上げを実現できるのでしょうか。
このうち、中小企業を取り巻く環境は厳しさを増しています。2月に倒産した企業はすべて中小企業で、一年前より26%増えました。コロナ禍で膨らんだ借金の返済に、原材料価格の高騰や円安が追い打ちをかけ、人手不足による倒産も、じわり増えています。それでも人手を確保して事業を続けるには、賃上げが必要で、そのためには、まず、取引先の大企業の協力を得て、「製品やサービスの値上げ」をすることが欠かせません。動きはあります。
▼ ホンダは、取引先の部品会社に対して、来年度、仕入れ価格の値下げを要請しない方針を決めました。
▼ また、価格転嫁の協議に後ろ向きだとして、政府に社名を公表された、佐川急便は、4月から、宅配便の料金を平均8%値上げします。配送を委託している下請け企業の価格転嫁に応じて、ドライバーの賃上げにつなげる狙いです。
こうした取り組みを広げて、多くの中小企業で賃金引き上げを実現してほしいと思います。
その上で、来年以降も賃金を上げ続けるには、デジタル化や脱炭素など、時代の変化にあわせて事業を見直し、稼ぐ力を増すこと。そして、働く人の技術や能力を上げることが欠かせません。ここでも大きな課題は、余力もノウハウもない中小企業です。
大企業の中には、グループ内の研修講座を下請けの社員が受けられるよう提供する動きもでています。政府も、大企業と連携するなどして、中小企業の社員が、実践的な研修を受けられる仕組みをつくる。場合によっては、より高い賃金が得られる仕事に橋渡しをするなど、働く人の賃金を、持続的に上げていくことに焦点をあてた支援に力を入れることが求められていると思います。
また、中小企業の賃金を持続的にあげていくには、もっと労使の話し合い、労使協議を進めていくべきだと思います。
労働組合がない事業所は、全体の8割以上にのぼり、その多くは中小企業です。
賃金をあげるために重要な「生産性の向上」は、経営者だけで進められるものではありません。現場で働く人たちの意見を取り入れたり、理解されたりすることが必要になります。
しかし中小企業では、この話し合いがまだ十分ではないという指摘もあります。
中小でも労働組合を作る、あるいは組合がなくても、労働者の代表が経営者と話し合っていく場を増やしていくべきです。
それには大手の労働組合などのサポートが欠かせません。
そして、非正規社員の賃上げについても考えていかなければなりません。
収入が低い非正規社員は、特に物価高や新型コロナの影響を大きく受け、正社員以上に大幅な賃上げ率が必要だと感じます。
この非正規社員の賃上げについて、ことしは1つの大きな動きがありました。
「非正規春闘」と呼ばれる取り組みです。
個人でも加盟できる16のユニオンが結集し、30社以上に対し、10%の賃金引き上げを要求しました。
この非正規春闘が始まったきっかけは、コロナ禍での労働相談でした。
ユニオンの窓口には、通常の2倍ほどの相談が寄せられ、そうした声を集めて、春闘での運動に発展しました。
非正規社員の賃上げの気運を高めていくには、こうした1人1人の声をすくいあげ、経営者、さらには社会に訴えかけていくことが重要です。
そして個人の活動から、労働界全体の運動に発展させていくべきです。
【まとめ】
動き始めた賃上げの流れを、中小や非正規の社員に広げ、また、来年以降の賃上げにもつなげていく。今年を起点に、今度こそ、こうした賃金と物価、そして、賃金と経済の好循環を生み出していくには、大企業、中小企業、政府、そして働く側を含め、社会全体の意識の改革、そして思い切った取り組みを進めていくことが求められていると思います。
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