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安倍元首相銃撃事件 審理の行方は/清永聡・nhk
2023年01月13日 (金)
清永 聡 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/478407.html
安倍元総理大臣が銃撃され殺害された事件で、検察は13日、容疑者を殺人などの罪で起訴しました。逮捕から起訴まで半年。時間がかかったのはなぜか。そして今後、裁判はどうなるのか。
大きな節目を迎えた事件のこれからを解説します。
【どうして半年もかかったのか】
去年7月、安倍元総理大臣が銃で撃たれて殺害された事件で、検察は容疑者を殺人などの罪で起訴しました。起訴された山上徹也被告(42)は今後、一般の国民から選ばれる裁判員裁判で審理される見通しです。ただし初公判はまだ先になるとみられます。
通常は逮捕から起訴まで長くても3週間ほど。ところが、今回半年もかかりました。これは検察が求めた「鑑定留置」という手続きが5か月半に及んだためです。
【増える鑑定留置】
鑑定留置では専門の医師が精神鑑定を行います。
裁判員制度が始まって、起訴の前に検察が求めるケースが急増しています。制度開始前年2008年の242件に対し、2021年は641件。2、5倍です。裁判員が法廷で責任能力を判断するのは難しいため、あらかじめ専門家に鑑定してもらいたいという狙いや、「念のため」求めることもあるようです。
この件数が増える一方で、鑑定の期間は近年短くなっています。
専門家によるとこれは2003年にできた「医療観察制度」という別の仕組みが背景にあります。
この制度は心神喪失などで不起訴となった人に裁判所が治療などの処遇を決めるもので、入院鑑定の期間は原則2か月となっています。
【鑑定期間めぐる水面下の攻防】
さて、今回はこの鑑定の期間をめぐって、申し立てた検察と、弁護団、裁判所の間で水面下の攻防が続きました。
当初は7月下旬から11月下旬までの4か月でした。すでに長くなっていますが、検察はそこから延長を求め一度は翌年2月までになります。これに弁護団が不服を申し立て、地裁が1月10日まで短縮しました。
ところが検察はふたたび延長を申請。今度は1月23日まで延長されます。
しかしこの間、検察は外部には「捜査上の理由がある」とするだけで、具体的な理由を公表していません。
結局地裁がもう一度1月10日まで押し戻して決着するという展開をたどりました。
【説明しないことが憶測を生む背景にも】
それでも、鑑定期間は今回5か月半と最近では異例の長さです。しかし、長引けばそれだけ裁判の開始は遅くなります。
鑑定期間が延びたのは、重大な事件だけに医師が慎重な鑑定を望んだのかもしれません。しかし、検察が具体的な理由を明らかにしない中、一部で「検察は起訴せずに事件を隠そうとしているのでは」など根拠のない憶測も上がりました。
憶測が広がれば、組織の信頼を損ないかねません。社会の注目を集めた事件だけに、検察は手続きについて国民へより丁寧に説明することが必要な時代となっています。
【長引く公判前整理手続き】
鑑定留置を経て起訴されたことで、今後は検察と弁護団、裁判所があらかじめ話し合う「公判前整理手続き」が行われます。争点を絞り込み、証拠を事前に開示して裁判の計画を立てます。
これは審理を長期化せず、裁判員の負担を軽くしようと、事前に非公開で行われる制度です。裁判はこの手続きの後に始まります。
しかし、この公判前整理手続きがいま年々、長くなっています。
最高裁によると、平均期間は最初の年が2、8か月だったのに、一昨年は10、5か月。1年に近づきつつあります。これも手続きが長引くほど裁判の開始は遅れます。
【見えない手続きに時間】
元裁判官で数々の裁判員裁判を経験した早稲田大学の稗田雅洋教授は「今後弁護側がどのような主張を行うかによっても異なるが、公判前整理手続きを不当に長引かせることがないよう、裁判官・検察官・弁護士とも協力して、できるだけ速やかに行う必要がある。様々な議論のあり得る事件であるが、国民から選ばれた裁判員が、被告人が行った行為の内容と責任の程度について落ち着いて判断できるような審理を行ってほしい」と話しています。
手続きの期間がまだ決まっていないため、初公判の時期は見通せません。
「鑑定留置」と「公判前整理手続き」という、どちらも見えない非公開の手続きで時間がかかりすぎれば、迅速化とはとうてい言えず、本末転倒です。
【どのような審理が求められるか】
裁判員に危害が加えられるおそれがある場合など、裁判官だけでも審理は可能ですが、取材した専門家の多くは、今回の事件で裁判員を除外する可能性は低いと話します。
では裁判員裁判で、どのような審理が望まれるでしょう。
弁護団は今後証拠の開示を受けて弁護方針を検討するとみられます。一方検察は、大勢の人がいる中で、手製の銃で命を奪った犯行の計画性や危険性などを指摘するとみられます。刑の重さなどが焦点となってくるでしょう。
裁判員経験者の交流団体「LJCC」で事務局を務める田口真義さんは「事件だけでなく、背景となる旧統一教会や宗教2世、政治の問題も視野に入れてほしい。裁判員は事件の全体像を見て、判決を決める必要がある」と話します。
教団への恨みを募らせたことと、安倍元総理大臣を銃撃することの間には、飛躍も感じられるという意見もあります。一方で絶望の果てに破滅的な犯行に及ぶケースは、他の事件でも見られます。
今回の経緯や背景も、可能な限り公開の法廷で審理すれば、なぜ事件へと至ったのか。行動などを解明し事実を明らかにすることにつながるでしょう。
この事件によって旧統一教会の問題は去年大きく動き、被告のもとには大量の差し入れなどが送られているといいます。しかし命を奪う犯行を到底正当化できないことも、法廷で明確にする必要があります。
迅速化を目指すあまり、手続きにばかり時間をかけ、事前に争点をそぎ落としすぎれば、裁判は形式的になってしまいかねません。
幅広い検討が行われてこそ、裁判員が冷静に判断できます。それは結果的に、根拠のない憶測を排除し、社会に対する教訓を導くことも可能になるでしょう。
【安全の配慮は行き過ぎないよう】
裁判所は裁判員の安全を守るための配慮も必要です。法廷などでは厳重な警備も求められます。
その一方で自身も社会の注目を集めた事件で裁判員となった田口さんは、昼食の時も評議の部屋から出してもらえず、却ってプレッシャーを感じたと言います。「過度に裁判員を保護しすぎると、萎縮して議論が進まなくなる」と指摘します。
裁判所は安全を確保しながら裁判員が自由な評議をできるよう、早い段階から検討を始める必要があります。
【司法の国民的基盤】
かつて裁判員制度の導入などを求めた政府の司法制度改革審議会は、2001年に「司法の国民的基盤」という言葉を使い、「国民の関心が高く、社会的に影響が大きい」事件こそ制度の対象にすべきと指摘しました。
その後、裁判員制度が始まって今年で14年。元総理大臣の殺害事件を裁判員が審理するのは、初めてのことです。
社会に衝撃を与え、世界的にも関心を集めるこの事件で、審議会がかつて掲げた国民参加の基本理念を実現できるか。
司法の取り組みが、これから試されることになります。
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