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旧統一教会問題 質問権と解散命令請求の焦点/清永聡・nhk
2022年10月27日 (木)
清永 聡 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/475344.html
旧統一教会の問題で、宗教法人法に基づく「質問権」を行使するため、専門家会議の検討が始まりました。今後、解散命令の請求にもつながるものですが、質問権はこれまで一度も使われたことがない上、手続きも複雑です。
質問権や解散命令請求で何が焦点となるのかを主に司法の側面から解説します。
【解説のポイント】
解説のポイントは、「質問権をどう速やかに行使」するか。「解散命令請求の焦点」そして「信教の自由との関係」です。
【質問権とその役割】
文部科学省は25日、初めてとなる専門家会議を開きました。「質問権」は宗教法人の活動で解散命令に該当する疑いがある場合などに、報告を求めたり質問したりできるものですが、実際に行使された例はありません。
この「報告徴収・質問権」は、オウム真理教の一連の事件を受けて95年に宗教法人法に追加で設けられました。
旧統一教会は会見の中で「質問が来た際には誠実に対応します」などとしています。
ただ、質問権は犯罪捜査とは異なり強制力はありません。宗教法人の代表などの同意がなければ、施設に立ち入ることもできません。このため、質問権によって新たに驚くような事実が、いくつも出てくるとは、考えにくいとみられます。
また専門家会議の後、今度は宗教法人審議会を開き、そこで意見を聞いて初めて行使されます。
ところが一度まとめて質問したとしても、その後再び質問権を行使したい場合は、また審議会を開催することになる上、宗教法人側から報告や回答を得る際も一定の時間がかかるとみられます。
政府は年内の開始を目指していますが、手続きを終えるまでには、時間がかかる可能性があります。
【速やかな行使のために】
では、できるだけ速やかに手続きを進めるため、何が必要でしょうか。
「全国霊感商法対策弁護士連絡会」によると、これまで30件近い教団の責任を認めた民事判決があります。連絡会の弁護士は「裁判記録も提供する準備がある」と話しています。
また、全国の法テラスや弁護士会、民間の支援団体などに寄せられた相談も数多くあります。
宗教法人に対して事実関係を一から聞くのでは時間がかかります。国の資料だけに固執するのではなく、民間を含めていまある情報を最大限収集・分析して活用することが大事ではないでしょうか。
【解散命令と被害者救済を並行で】
ただ専門家会議と宗教法人審議会を経て質問権が行使され、検討の末、仮に宗教法人法に違反する疑いが強まったとして解散命令の請求に踏み切ったとしても、今度は裁判所の審理に時間がかかります。しかも地裁、高裁、最高裁まで争うこともできます。
解散命令は過去2回、オウム真理教と和歌山の明覚寺に出されましたが、いずれも最高裁まで争われ、確定までオウムが7か月、和歌山の寺は3年かかりました。
仮に解散命令が出された場合も、法人格は失われ税制上の優遇措置はなくなりますが、「宗教団体」として活動を続けることは可能です。信者の信仰も禁止されません。
つまり時間がかかる上、解散命令ですべて終わるわけではない。
そう考えると、今の手続きと並行して、多額の献金による被害を受けた信者の家族や、いわゆる宗教2世の人たちの社会復帰を支えることなど、救済の仕組み作りも急ぐことが求められます。
【『民法の不法行為』めぐる解釈は】
ところで、この解散命令を請求する要件について、政府はこれまで「刑事罰などが必要」という認識を示し、岸田総理大臣も先週、「民法の不法行為は要件に入らない」と答弁していました。しかし、翌日になって「民法の不法行為も入りうると整理した」と述べ、見解を修正しました。
宗教法人法は解散命令の事由の1つを「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」などとしています。ここには「法令」とあるだけで「民法」とも「刑法」とも書かれていません。
70年代に発行された、文化庁宗務課などが編集した解説書「宗教法人法の解説と運用」(文化庁文化部宗務課・宗教法人法令研究会編)にも、解散命令について条文の詳しい解説や説明はありますが、民法にも刑法にも触れていません。
つまり、当の文化庁もかつてそのような解釈はなかったことがうかがえます。
ところがその後、95年のオウムの解散命令で東京高裁が「刑法等の実定法規の定める禁止規範又は命令規範に違反するもの」などとする決定を出します。この「刑法等」という文章などを元に政府は基準を狭める解釈をとります。
この解釈はどうなのか。
今回、複数の元裁判官に取材したところ、私が話を聞いた全員が「当時の決定に民法を排除する意図があったとは思えない」と答えました。ある元裁判官は、「当時オウムの事件が相次ぎ社会が騒然としていた。東京高裁はそうした社会事情を背景に『刑法等』と例示したのではないか」と推測します。
だとすれば、答弁の修正は「新たな解釈」ではなく「本来の解釈に戻った」ということでしょう。
【元裁判官に聞く今後の焦点】
では、今後仮に解散命令を請求することになった場合、どういう点がポイントになるのか。
政府は「悪質性」「組織性」「継続性」の3つを挙げています。取材した元裁判官の多くが、この3つのうち、特に「悪質性」を重視すると答えました。
▼まず民法の法令違反というだけではなく、その違反が「著しく」公共の福祉に害することが「明らか」であることなどが求められます。
▼さらに正体を隠しだまして金を出させる、あるいは、刑事事件になっていなくても詐欺など犯罪性を帯びた事例などを重視するという意見もありました。
▼被害の重大さを挙げる意見もありました。被害額だけでなく、家族が受ける精神的な打撃の大きさ、一家崩壊など結果の重大さ。さらに類似の事例がどの程度広がっているかを見たい、という意見もありました。
今示したのは、いくつかの例にすぎません。このほかにもさまざまな意見がありました。ただ、いずれも今後、組織性や継続性を含めて、質問権の過程で集めた情報も合わせて、複数のポイントで総合的に事実を積み上げ証明することが、重要になってくるとみられます。
【信教の自由とのバランスは】
手続きには、憲法が保障する「信教の自由」に対する配慮も必要です。
特に今後、一連の手続きが国による不当な宗教への介入とならないようにするため歯止めや枠組みも必要でしょう。
被害者からすれば一連の手続きにもどかしさを感じるかもしれません。ただ、宗教法人にとっては不利益をもたらす可能性があるだけに、一定の厳格な手続きもやむを得ないと思います。
ただし、国が「信教の自由」を理由に、腰が引けた対応をとってしまうと、問題の放置が長引き、苦しむ人を増やし続けることにもなりかねません。
慎重さと適正さ。その両立が望まれます。
【坂本堤弁護士の思い】
初の解散命令となった、オウム真理教による一連の事件。そのオウムを早くから追及し、教団によって家族とともに命を奪われた坂本堤弁護士。
殺害4日前の89年10月31日、事務所で教団幹部と対峙した際、幹部が言い放った「こちらには信教の自由がありますから」という言葉に、坂本弁護士はこう答えたといいます。
「人を不幸にする自由は許されない」。
坂本弁護士の言う通り、信教の自由には、他人の権利を奪い不幸にする自由などありません。
今後の手続きがどのように進むか。特に質問権は前例がないだけに、明確な見通しはありません。それでも政府はあくまでも法に基づき、適正に手続きを進めていってほしいと思います。
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