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旧統一教会と『宗教2世』問題/清永聡・nhk
2022年08月22日 (月)
清永 聡 解説委員
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/472463.html
安倍元総理大臣が銃撃され死亡した事件。逮捕された容疑者は母親が入信した「世界平和統一家庭連合」、旧統一教会への恨みを募らせた末に、事件を引き起こしたとみられます。
事件を正当化することは到底できません。しかし、容疑者のように特定の信仰を持つ親の子供「宗教2世」の問題が、知られるようになりました。
この「宗教2世」問題、その背景と必要な対策は何か。今回は私が話を聞いた当事者の声をできるだけ紹介し、求められる取り組みを伝えます。
【山上容疑者と事件の背景】
殺人の疑いで逮捕された山上徹也容疑者は、現在刑事責任能力を調べる精神鑑定が行われています。
これまでの調べに、「母親が多額の献金をするなどして、家庭生活がめちゃくちゃになった」などと供述しています。容疑者の親族によりますと、母親が平成3年に旧統一教会に入信し、死亡した父親の保険金など合わせて1億円を献金したということです。
【旧統一教会と『宗教2世』】
不安をあおって、高額な献金をさせることや、高額な物品を売りつける「霊感商法」は、これまでも社会問題になっています。「全国霊感商法対策弁護士連絡会」は「多くの家庭が崩壊に追い込まれた」と話します。
これに対し田中富広会長は8月10日の会見で「いわゆる霊感商法なるものを過去も現在も当法人が行ったことはない」と話しました。
ただ、高額の献金をめぐっては一昨年・2020年も東京地裁で、元信者が不安をあおられて献金したことを違法とする判決が出たうえ、教団の使用者責任も認定しました。この裁判は最高裁まで争われましたが、判断は確定しています。
違法行為と組織的な責任を認める司法判断はすでに、いくつも積み重なっています。何も責任がないとは、到底言えません。
事件の後、「宗教2世」という言葉が広く知られるようになりました。
その定義は「特定の信仰・信念を持つ親・家族とその宗教的集団の帰属のもとで、その教えの影響を受けて育った子ども世代」とされます(上越教育大学 塚田穂高准教授による)。
もともとは、旧統一教会に限定したものではありません。ただ、今回私は旧統一教会の“2世”の声を何人も聞いてきました。「宗教2世」の問題とは何か。その一部を紹介します。
【『宗教2世』問題@その根深さ】
40代の女性、冠木結心さん。母親が熱心な信者で、自分も高校時代に入信、多額の献金で生活が厳しく、進学をあきらめて働き、21歳の時、教団が決めた相手と“合同結婚式”に参加します。しかし暴力を振るわれるなどして離婚し、その後教団を離れました。
進学も結婚も自分の意志では許されない。親の支配から抜け出すことは困難だったと言います。
彼女は高校の時、「子供にとって、親の助けがないと生きられない年齢で、親を拒絶して生きるのは難しい。信じなければご飯をあげないと言われたら、生きていくすべを失う」と思ったそうです。
この問題、親も「自分が正しい」と信じているところに深刻さがあります。「これはあなたの幸せのためだ」と繰り返されれば、子供が拒否することはさらに難しくなるでしょう。
幼少期から信仰が続く事例もあります。
40代の女性、Pulmoさんは、生まれた時から両親が信者でした。テレビも漫画も禁止。友人の誕生日会も参加できず、学校行事であっても異性と手をつなぐことも、会話することも禁じられます。親は教団のため数か月姿を消すこともあり、“ネグレクト”を受けることもあったといいます。
彼女は親から「外の人間は“サタン”だ。逆らうと地獄に落ちる」と言われてきたそうです。「社会の規律と、教団の規律があまりに違うことにずっと悩んできた」と話していました。
「宗教2世」の問題は、このように幼い時から親に繰り返し教え込まれる。学校でも孤立してしまう。親を信じる・あるいは信じるふりをしないと生きていけない。そしてこの日常を何年、時には何十年と強いられ続けることにあります。
この状態から自ら脱するのがいかに困難か。私は話を聞くほど、置かれた境遇の厳しさを感じました。
【教団のコメント】
教団はどう受け止めているのか。広報担当者は取材にこうコメントしました。
「『宗教二世』を抱えるご家庭に寄り添い、心に傷を負われた二世信徒に対して、心からの謝罪を行っております。当法人は2009年のコンプライアンス宣言を契機として、過去の行き過ぎた活動を反省し、すべての信徒が満足することのできる教会づくりを目指して、鋭意努力を続けています」などということです。
【『宗教2世』問題A社会復帰の困難さ】
もう1つの問題は仮に脱会できても社会復帰が難しいことです。
多くの場合、信者である親と縁を切ることになります。親族と断絶しているケースも少なくありません。しかし、就職する時も、部屋を借りる時も保証人などが求められます。
行政の支援は、例えば生活保護や住まいの提供、など、基本的には今ある貧困対策やDV対策である程度対応できるということです。
ところが、自治体の窓口に助けを求めても、ある人は「行政は宗教問題には介入できない」と言われたといいます。「家族のことはまず家族で話し合って」と言われたという人もいました。親から逃れるため、転居先の住民票が閲覧できないように申請しても「それは親子の問題だ」と門前払いを受けた人もいたということです。
いずれも、あまりに理解のない対応です。
【政府の対策『これから整理』】
先週木曜日(8月18日)、旧統一教会に関する政府の会議が開かれ、集中的に相談対応を強化することを決めました。ただその対象は「霊感商法の被害など」となっています。今回紹介した「宗教2世」への支援について事務局の法務省は18日の記者への説明の場で「これから整理する」としただけで、具体的には触れていません。
自身も「宗教2世」で、京都府立大学の横道誠准教授は「旧統一教会に限定せず、宗教2世への国の総合的な支援が必要だ」と指摘します。横道さん自身も、オンラインで自助グループを作っているほか、民間の支援組織もありますが、国による専門の相談窓口はありません。政府は会議の中でこの点も急いで検討が求められます。
また、自治体も認識を改める必要があります。「宗教や家族の問題」と及び腰になるのではなく、担当者の研修などを通じて「宗教的虐待」が存在することなど、特別な事情を理解して、窓口を訪れた人を必要な生活支援へつなげていくことが求められます。
【1日も早い支援を】
こうした議論では「親にも信教の自由がある」という言葉を聞きます。
ただ横道准教授は、「宗教2世問題とは、まさに信教の自由が侵されている問題だ。子供の信教の自由が蹂躙されているのに、そのことに目を閉じ、耳をふさいできたのではないか」と指摘します。
親が自分の意志で特定の宗教を信じるのは自由です。しかしそれは、子供を抑圧する理由にはなりません。信教の自由があるからこそ、旧統一教会に限らず「宗教2世」問題への支援がいま、必要なのではないでしょうか。
社会から切り離された世界で生きることを強いられ、強いストレスを受け続けて、精神的に追い込まれた人も多くいます。また取材をすると、進学することも職業的なスキルを身につけることもできなかった人が少なくありません。
そうした彼らが社会に戻り、人生を途中から取り戻すことがどれだけ大変か。
その困難な道のりを考えた時、これまであまりに長く放置されてきた、この問題への1日も早い取り組みが、いまこそ求められます。
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