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’22平和考 食料安保と日本 リスク直視し政策点検を/毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20220816/ddm/005/070/109000c
新型コロナウイルスの感染拡大とロシアによるウクライナ侵攻が食料価格の高騰と飢餓の深刻化を招き、各国の食料安全保障を脅かしている。
農林水産省によると、コロナ禍が広がった2020年、ロシアやベトナムなど19カ国が小麦や米などの輸出を一時規制した。危機時に囲い込みを図った形だ。21年以降もタイの鶏肉や北米のポテトの供給が滞った。
食料不安に拍車をかけたのがロシアのウクライナ侵攻だ。
世界の小麦輸出量の3割を占める両国からの供給が止まって食料の国際価格が急騰し、インドは小麦、インドネシアはパーム油の輸出規制に踏み切った。日本でも食品の値上げが相次ぎ、国民生活に打撃を与えている。
国内農業の強化が急務
食料を巡る混乱は、日本にとって重大な問題だ。消費者の米離れなど食生活の変化で、輸入依存度が高まってきたためだ。1960年代に70%を超えていた食料自給率は30%台後半まで落ち込んだ。
日本総合研究所の三輪泰史氏は「食料不足のリスクが表面化すると、自国優先の動きが顕著に出てくる」と指摘する。
国内の農業を強化することが必要だ。しかし、現状では、補助金で米農家を守る旧来型の政策から脱却できていない。
政府は主食の米について、2018年産から生産調整(減反)を廃止しながら、補助金で飼料用米などへの転作を促している。事実上、主食用米の価格維持策で、競争力向上につながっていない。
農家の中には、海外に活路を求める動きも出ている。
茨城県の株式会社「百笑市場」は、地元農家と米の輸出に取り組んでいる。生産コストを抑えるため、単位面積当たりの収穫量が多い品種を栽培し、ドローンで種をまくなどの工夫を重ねてきた。
この5年で輸出量は5倍に増え、販売先は米国やシンガポールなど10カ国に広がった。
政府も近年、輸出強化に取り組み始めている。農林水産物・食品の輸出額は21年に1兆円を突破した。30年までに5兆円に増やす目標を掲げている。
作物の多様化を進める地域もある。米の産地で知られる秋田県大潟村はここ数年、タマネギの生産を本格化させている。北海道や兵庫など主要産地と収穫時期が重ならないため付加価値が高く、機械化もしやすいためだ。
食料安全保障の観点からも、こうした前向きな取り組みを後押しする政策が欠かせない。
農水省はコロナ禍やウクライナ侵攻を踏まえ、省内の検討チームで価格急騰や供給量減少などのリスクを分析している。農業関係者らと情報を共有し、早期に対策を打つ体制づくりが不可欠だ。
国際的な連携深めたい
ただ、国内で農業政策を見直すだけでは限界がある。日本は小麦や大豆だけでなく、化学肥料の原料の多くを海外に依存している。安定調達に向け、国際社会と連携を深めることが重要だ。
6月に開かれた世界貿易機関(WTO)閣僚会議は、ルールに基づかない輸出規制を控えることで合意した。やむを得ず規制を行う場合も、輸入国に与える影響を考慮し、情報の共有を求めている。
日米欧の主要7カ国(G7)は食料安保に関する声明に「不当な貿易制限の回避」を盛り込んだ。各国には、自由な貿易を損なわない取り組みが求められる。
最も深刻な影響を受けるのが、生活基盤が脆弱(ぜいじゃく)な途上国の人々だ。国連の世界食糧計画(WFP)によると、飢餓などで命が危険にさらされている人は年初から25%も増え、82カ国の3億4500万人に達した。
WFPは国際通貨基金(IMF)、世界銀行などと共同で、各国に支援を要請した。日本を含む先進国には、大きな責任がある。
食料安全保障を脅かす要因はさまざまだ。新興国が著しい経済成長を遂げ、食料需要が急増した。トウモロコシなどを原料にしたバイオ燃料の普及が食料不足への懸念を高め、気候変動の影響と見られる穀物の不作も相次いでいる。
食料を行き渡らせることは、世界秩序の安定と平和な社会の構築に不可欠だ。
コロナと戦争で表面化したリスクを直視し、これまでの政策を点検する。その上で自国の枠にとどまらない国際的な食料安全保障を構築することが求められる。
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