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ロシア制裁で日本人が浴びる3つの返り血、なぜ?いつまで続くの?/ダイヤモンドonline・msnニュース
鈴木貴博 2022/03/04 06:00
https://www.msn.com/ja-jp/news/politics/%e3%83%ad%e3%82%b7%e3%82%a2%e5%88%b6%e8%a3%81%e3%81%a7%e6%97%a5%e6%9c%ac%e4%ba%ba%e3%81%8c%e6%b5%b4%e3%81%b3%e3%82%8b3%e3%81%a4%e3%81%ae%e8%bf%94%e3%82%8a%e8%a1%80-%e3%81%aa%e3%81%9c-%e3%81%84%e3%81%a4%e3%81%be%e3%81%a7%e7%b6%9a%e3%81%8f%e3%81%ae/ar-AAUzo4g
ロシアにとっても関係各国にとっても原油高と株の下落、世界的なインフレが起きることが分かっているのにもかかわらず、ロシアのウクライナ侵攻が始まり、それに対する各国のロシア制裁が始まってしまいました。
戦争を境に、日本のこの3月の生活感も一転してマイナスに。ガソリンが高い、電気代も値上げ。コロナ禍でもなんとか価格を維持してきた株価すらもついに下がり始めたとなると、このタイミングでの協調経済制裁を恨みたくなる気持ちもわいてきます。
「何言ってるの? ウクライナの人たちがこれだけひどい目に遭っているのだから、日本人も我慢しなければ」という人道的な意見は、もちろんその通りだと思います。
ただそのうえで、なんでロシアのせいで日本人の暮らしが悪くなるのか? そしてこれがいつまで続くのか? について少なくとも理由は知っておきたいですよね。今回は、ロシア制裁を理解するための背景とメカニズムを解説します。
中国、インド、アラブ首長国連邦は
ロシアを非難せず「中立」を維持
ウクライナ侵攻に関連して、国連でのロシア外相の演説中に各国代表が次々と退席したというようなニュースを見ていると、あたかも各国がロシアのウクライナ侵攻に対し怒り心頭でNOを突きつけているように感じます。しかし、実際は各国首脳の間にはロシアへの態度に関して明確な温度差があります。
2月25日に、国連の安保理に提出されたロシア軍の即時撤退を求める決議案が否決されました。拒否権を持っているロシアが反対して否決されることは分かっていたことですが、注目すべきことは理事国のうち中国、インド、アラブ首長国連邦が「棄権」に回ったことです。
このことからも、ウクライナ侵攻は政治的手段では解決できないという裏事情が理解できます。というのは棄権に回った3国は皆、潜在的に近隣国へ侵攻する可能性のある国なのです。中国は尖閣諸島、南沙諸島、台湾問題を抱えています。インドはパキスタンとの紛争があり、中東のイスラム諸国はイスラエルとの紛争があります。
ロシアのウクライナ侵攻を非難してしまうと、後々自国が近隣国へ侵攻した際にブーメランが返ってくる可能性がある。だから、これらの国は中立的立場をあえて取っているのです。言い換えると、世界のすべての国が足並みをそろえてロシアを非難しているわけではない。ここが、ロシア制裁を理解するための出発点です。
各国が軍事行動ではなく
「経済制裁」を選んだ二つの理由
次にドイツ、フランス、イギリスなど欧州のNATO加盟国を見てみましょう。これらの国は歴史的には過去の戦争に懲りて、もうこれ以上国境紛争をしないほうがいいという立場は明確です。しかし、にもかかわらずロシアの国境を越えた侵攻に対して軍事行動は取りません。これは、2014年のロシアによるクリミア侵攻のときと同じです。
要するに、「侵攻反対!」の世論とは異なり、各国はそれぞれの利害で考えて行動しているのです。欧州各国の場合には、ロシアに対する軍事行動によって生じる損失の大きさからウクライナには兵力を進めない。これらの各国の大まかな動向を予想した上で、プーチンはウクライナに侵攻を進めたというのが基本的な構図です。
ここまでの状況を理解することで、ロシアのウクライナ侵攻に対する世界各国の戦い方が、政治でも軍事でもなく、経済で行われた理由がわかります。
(1)世論は参戦には賛成しないが、ロシアへの経済制裁には賛成する
(2)経済制裁であれば、自国の損失よりもロシア側の損害の方がはるかに大きい
というメカニズムで、各国は経済制裁に踏み切ったわけです。
その結果、ウクライナの義勇兵たちが手持ちの武器でロシアと戦わざるをえない状況に追い込まれた一方で、ロシア国内では経済制裁で国民が疲弊しはじめました。
ここで、「今、どのような経済制裁がロシアに降りかかっているのか?」を見てみましょう。
相次ぐロシアボイコットや撤退
ロシアにとって最も痛手なのは?
まず目に付くのが、グローバルブランドのロシアボイコットです。アップル、ナイキ、ディズニーがロシアでの製品の販売を相次いで休止しました。GM(ゼネラルモーターズ)はロシアでの自動車販売を中止し、フォードは合弁事業を解消します。
経済制裁は一見、ロシアだけでなく仕掛けた側の西側諸国にも大きな影響がありそうに思えます。しかし、実際はそうではないというのが各国・各社のそろばん勘定でしょう。
ロシアのGDPは世界経済の1.7%にすぎません。ちなみにウクライナは0.2%です。ロシアとのビジネスが止まっても、全体への影響は限定的。逆にアップルやディズニーにとってみれば、人道的制裁によってむしろ業績にはプラスの影響すらあるでしょう。
ロシアにとって経済的打撃が大きいのは西側ブランドの撤収よりも、ロシアの基幹事業であるエネルギー事業での西側諸国の撤退です。
石油大手のシェルは、ロシア産天然ガスをバルト海経由で輸送するパイプライン「ノルドストリーム2」から撤退し、開発会社は破産に追い込まれそうな状況です。シェルは日本も出資する「サハリン2」からも撤退。同時に「サハリン1」から、アメリカの石油会社エクソンも撤退を表明しています。開発に参画してきた日本企業にとっては、なんとも痛手です。
一方でこれらの制裁によって、ロシアは確実に打撃をこうむります。すでにロシア通貨のルーブルは30%暴落しています。経済予測としては、今年のロシア経済は二けたのインフレと二けたのマイナス成長になることは確実のようです。
国民が疲弊しても
プーチン政権はびくともしない
西側諸国が行う経済制裁手段として一番有効だとみられるのは、ロシアの銀行のSWIFT除外です。SWIFTとは国際的な銀行の決済インフラなのですが、SWIFTから排除されると海外と資金決済が事実上できなくなる。つまり、ロシア企業は海外企業と取引がしたくてもできなくなるのです。
ロシアの生命線として、中国から陰の援助が得られるだろうという読みもありますよね。しかし、さすがにSWIFTが止まってしまうと、そううまくはいかないでしょう。中国からシベリア鉄道経由でいくら物資が届いたとしても、ロシアの海外との貿易は止まっています。国民の日常がひどい不況下の生活に変わることは避けられません。
これが西側諸国なら、確実に政権交代が起きるはずの制裁ですが、そこはロシアです。国民がどんなに疲弊してもプーチン体制は続きそう。お互いが身を削る経済戦争でのチキンレースは、長引きそうという見方も濃厚です。
ロシアへの経済制裁で
西側諸国が浴びる三つの返り血
さて、このロシア制裁、日本に対する影響はどうなのでしょう? 日本にとってもロシアからの輸入額は全体の1.8%、それほど大きくはない点は他国と変わりはありません。ただ問題はその中身です。
日本がロシアから輸入するものの大半はLNGや石油、金属といった資源です。その次に魚介類と木材。それらの品目を考えると、われわれ庶民の生活に打撃がありそうなものばかりが並びます。ロシアへの輸出が減る影響は日本にとってはさらに小さいのですが、それでも主力の輸出品である自動車分野の事業者にとっては、打撃は大きいでしょう。
このようにプーチン大統領のウクライナ侵攻に対して、西側諸国が結束して経済制裁を行うのは、最も有効な対抗手段だったわけです。軍事行動よりははるかにましなうえに、足並みがそろいにくい政治的な非難よりも一部の西側諸国だけで効果が打ち出せるからです。
とはいえ、日本を含む西側諸国が受ける返り血は三つあります。
ひとつが世界的な原油高。ガソリン価格だけでなく、さまざまな経済活動で無視できない規模のオイルショック的事態が起きそうです。そして二つ目に、インフレのさらなる進行。
そしてそこから起きる三つ目の影響が、インフレ対策のための金融引き締めです。これは確実に起き、その結果株価が下落するだろうという予測です。
まとめてみると、ウクライナ侵攻によって2022年のわたしたちを取り巻く経済環境は悪くなりそうです。
ウクライナ市民のために仕方ないとはいえ、コロナ禍で疲弊した日本経済にとっては大きな負担になりそうです。そしてそれがいつまで続くのかは、プーチン大統領がどこで折れてくれるか次第。早く彼の気が変わってくれるように祈るしかないようです。
(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)
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