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(回答先: 「病床逼迫しない」から自宅療養拡大へ急転換 見通し甘い政府 野党「首相自ら医療崩壊認めた」と批判(東京新聞) 投稿者 蒲田の富士山 日時 2021 年 8 月 04 日 08:10:52)
2021年8月4日 11時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/121777
https://www.tokyo-np.co.jp/article/121777/2
コロナ禍の拡大が止まらず、病床が逼迫していく中、政府は2日、重症者や重症化の恐れのある人以外は、原則自宅療養とする方針を決めた。これまでもなかなか入院できず、自宅にいる間に亡くなるケースも多々あったのに、さらに入院治療を遠ざけるというわけだ。「自助」の言葉が大好きな菅義偉首相らしい国民への仕打ちだが、厳しい現実から目をそらそうと、ルールの方を都合よく変えていいのか。(佐藤直子、榊原崇仁)
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◆自宅療養で父親が…
「政府は何をやっているのかと思う。自宅療養中に一気に重症化すれば、命取りになるのに…」。コロナ感染で父親を亡くした東京都内の50代男性は憤る。
父親が亡くなったのは最初の緊急事態宣言下の昨年春。せきと熱が出るようになり、地元の病院を受診。もらった解熱剤でいったん熱は下がったが、1、2日で症状がぶり返した。救急搬送された病院でPCR検査を受けて陽性判定が出た。
即入院かと思われたが、いったん自宅に帰された後、保健所側は自宅療養を指示。家族は何度も「父をすぐに入院させてほしい」と必死に頼んだが拒まれ、担当者は「症状が重い人から入院させている」と言うだけだったという。
しかし、3日ほどで父の容体は急変した。別の病院に救急搬送されたときにはすでに、人工呼吸器が必要なほど重症化しており、父は1週間後に息を引き取った。陽性判定が出てからあっけない死だった。
男性は「感染が判明しながら当初入院を断られた父と、付き添った家族がどんなに不安だったか。保健所は電話のやりとりで、父親の症状をどう判断していたのかいまだに分からない。放置されたようなもの。救急搬送されたときに入院できていたら、助かったんじゃないかと思っている」と振り返る。
◆政府方針で続発の恐れ
こうしたケースを続発させる恐れがあるのが、新たな政府の入院方針だ。
これまでは、呼吸器に症状がない軽症でも基礎疾患がある場合や、肺炎や呼吸困難がある中等症以上が入院の対象だった。今後は中等症でも、重症化リスクが低いと判定された人は、原則自宅療養となる。家庭内感染の恐れや自宅療養が困難な事情があると判断された場合には宿泊療養になる。いずれも感染急拡大中の地域が対象となる。
この方針転換の背景にあるのは病床の不足だ。デルタ株の広がりで新規感染者は1日1万人に達する日が続く。厚生労働省結核感染症課の担当者は「適切に病床を確保するため」と説明。国が近く全都道府県に通知し、各自治体が地域の実情に沿って判断することになる。国は自宅療養に備え血中酸素濃度を測る「パルスオキシメーター」の配備を進める。重症化の恐れをつかみやすくするという。
◆重症化「見極め簡単ではない」
ただ、そもそも肺炎を起こし呼吸が苦しいような症状の患者を、医療を受けられない自宅で療養させるのは危険ではないのか。
国際医療福祉大の高橋和郎教授(感染症学)は「菅首相は場当たり的で何も分かっていない」とあきれる。「酸素投与が必要かどうかによって中等症も1と2のレベルに分かれるが、1から2までは進行スピードが速い。2まで重症化すれば挿管手術が必要になり、手当てが遅れたら命は危険になる。重症化の見極めは簡単ではない。現場は基礎疾患の有無や症状の変化など今まで以上に丁寧にみていかなければならない」と語った。
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◆「自宅で亡くなるケースも」
そもそも自宅療養自体、コロナ禍が始まって以降ずっと、非現実的でリスクが高いと批判を浴びてきた。
厚生労働省が公表するガイドラインによると、自宅療養を行う場合、感染者は個室で過ごすこと、他の家族とタオルや食器などを共用しないことを求め、「トイレや風呂も感染者専用が望ましい」「共用する際は使用する都度、消毒・換気を」とも示している。
首都圏の複数の医療機関で在宅医療を中心に手がける木村知医師は「一般の方々は家庭ごとに事情があり、必ずしも1人1部屋とはいかない。ひしめき合って暮らす方もいる。そうした家庭で感染者とそうでない人を隔離するのは無理がある。自宅療養を促すことでむしろ、家庭内感染を広げかねない」と指摘する。
診療の遅れも心配なところだ。「自宅療養の場合、医療関係者がリアルタイムで感染者の体調の変化をつかむのが難しい。自宅療養する人に電話してすぐに出てくれるか、電話でのやりとりだけで症状が分かるかといった問題が付きまとう。入院などが必要になったのに手を打つのが遅れれば、自宅で亡くなるケースも生じかねない」
◆小池知事「自宅も病床のような形で」
実際、全国の警察が1月以降に変死などとして取り扱い、新型コロナの感染が確認された死者のうち、自宅で発見された数は5月の段階で100人を超えた。独居などで孤立無援の自宅療養者が増えれば、同様の死者数がさらに増えることも考えられるが、小池百合子東京都知事は先月28日に「1人暮らしの方々などは、自宅もある種病床のような形でやっていただくことが病床の確保につながる」と、むしろ「独居自宅療養」を奨励した。
いったい何がこんな理不尽な入院制限を招いたのか。言うまでもなく、感染拡大を抑えていれば、病床逼迫はなかった。国立感染症研究所の元研究員で内科医の原田文植氏は「やはり五輪の影響は大きい。世界から人びとが集うイベントを自粛することなく開いた結果、世間の人も『五輪をやるなら自分たちもいいだろう』と考えて出掛けているように思う。感染力が強いデルタ株が広まる中で人流が減らないから、今のような状況になっている」と指摘する。
◆「政府が非を認めるとは…」
ならば、せめて病床を増やしていれば、とも思うが、インターパーク倉持呼吸器内科(宇都宮市)の倉持仁院長は「政府は病床増のための予算措置を行ってこなかった。コロナ禍の当初から『すぐに収束する』と楽観視を続け、修正しないまま今に至っている。専門家ではない官邸が主導してきた弊害にほかならない」と語る。
菅首相が今、頼りにするのが「抗体カクテル療法」だ。基礎疾患のある軽症者や中等症の患者に対して二種類の新薬を投与することで、入院や死亡のリスクを七割減らすと言われる。ただ、倉持氏は「十分な数が確保されておらず、注文してから届くまでに数日かかる」と述べる。
入院できない、薬も足りないとなれば、命を落としかねない。万一の事態になった場合、果たして誰がどう責任を取るのか。倉持氏は「一義的には自宅療養を強いる政府の責任になるが、現政権が非を認めるとは思えない。自宅療養する人から相談を受けた医師や保健師に責任が押し付けられる可能性が高い」とみる。
その上で「医療現場で今以上の疲弊が広まれば、相談や診療を拒むケースが出てきかねない。そうなれば『誰もがいつでも医療を受けられる』はずの国民皆保険制度が崩壊する。次々に命を落とす状況に陥らないよう、今後の対応を抜本的に見直すべきだ」と訴える。
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◆デスクメモ 政府のルールは都合よく…
「つらくても自宅で待機」というのは、PCR検査の「37・5度以上の熱が4日間」という基準を想起させる。大問題になった後に厚生労働省は「誤解があった」と基準を削除したが、検査にしろ、病床にしろ、不足の失態を覆うために、政府のルールは都合よく作られ、消される。(歩)
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