また、イスラム教は信者同士の関係が平等で、信者同士が助け合って生きる傾向が強いので、欧米人も含めてイスラム教に改宗する人が急増している。それで、２０７０年頃には人口でキリスト教徒を上回ると予想されているという。

イスラム法に基づくスンナ派イスラム教徒の「統一国家」を創設しようとするISやアルカイダ、モスレム同胞団などのイスラム主義は、イスラム教の教義そのものである。中東や欧米での貧困や差別がイスラム主義運動を増長しているのは確かだが、この問題が解決しても、ISやアルカイダは消滅しない。

●長年に渡る欧米のイスラム世界への不当な介入で生まれたISは「モンスター」で、現時点では、大半のイスラム教徒は反ISなのだろうが、モスレム同胞団のような「穏健」な漸次的改革派も多いイスラム主義者の一部であって犯罪組織ではない。

西アジアのイスラム教徒は、イスラム教徒としてのアイデンティティーと、アラブやクルド、トルコなどの個別民族としてのアイデンティティーとの葛藤がある。また、世俗主義のイスラム教徒も多いので、イスラム教徒の「統一国家」やアラブ民族の「統一国家」が創設できるのかは不明。

だが、イスラム教の初期教義を、忠実に実践しようとしているイスラム主義者は、少なくとも世界中に１千数百万人以上もいて、サウジや湾岸諸国が支援しているので、自爆攻撃までする武装闘争派のイスラム主義運動を、欧米やロシアでも軍事的手段で制圧することは不可能である。

欧米やロシアなどの異教徒がISやアルカイダ系イスラム教徒を殺し過ぎれば、１４億人もいるスンナ派イスラム教徒も怒り出すかもしれず、そうなれば歴史的大惨事となる。

★仮に、イスラム主義の「統一国家」が創設されたとしても、友好関係を維持することは可能であり、それ自体は脅威ではない。

★むしろ、気候変動で農地や家畜が死に、混乱が続いているアフリカや西アジアのイスラム教徒を救うには、イスラム教徒の「統一国家」が創設され、イスラム教徒同士で助け合う体制が出来た方が良い。日本や欧米はイスラム世界への不当な介入を止めて、ISの問題はイスラム世界にまかせるべきである。

★フランスも含めた欧米諸国や日本は戦後、イスラム教徒の反対を無視してイスラエルの建国を強行したように、イスラム世界に不当に介入して何百万人ものイスラム教徒を殺してきた。だから、フランスはこれまでの所業を自己批判すべきであり、パリ事件は甘受すべきで、報復すべきではない。

★フランスは報復しないこと＝負けること＝で、イスラム世界との関係を友好関係に変える＝「勝つ」べきで、そうすることがパリ事件の犠牲者の死を生かす道である。（大抵の夫婦喧嘩は、夫婦のどちらかが「悪いのは相手」と思いながらも、自ら「謝る」ことで夫婦関係を維持しているように、この世は「負けるが勝ち」である）

★日本もフランスと同くイスラエルを支持し、１００万人以上もの犠牲者が出たイラク戦争で米国を支持し、イラクに自衛隊を送った。また、海上自衛隊はインド洋で給油して、アフガン戦争に介入してきた。だから、日本でテロ事件が起きても、日本は報復すべきではない。

（仏教やユダヤ教も偶像崇拝は禁止である。偶像崇拝を認める宗教にとっての偶像は、偶像ではなく神であるので、文字通りの偶像崇拝を認める宗教など、この世には存在しない。キリスト教やイスラム教の欠点は、幸福な生活をしている異教徒にも改宗を勧めること。宗教は仏教のように、他の宗教では幸福にはなれない人のみに、自らの教義を提示して救うべき。他宗派の信者を「折伏」して会員を増やそうとする創価学会は、この点で仏教を逸脱している）

「ビンラディンの論理」 (小学館文庫：中田 考)
http://www.amazon.co.jp/%E3%83%93%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%AB%96%E7%90%86-%E5%B0%8F%E5%AD%A6%E9%A4%A8%E6%96%87%E5%BA%AB-%E4%B8%AD%E7%94%B0-%E8%80%83/dp/4094025561/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1449314348&sr=8-1&keywords=%E3%83%93%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%AB%96%E7%90%86

なぜ増える？イスラム教への改宗 - 浅川芳裕（ジャーナリスト）
http://blogos.com/article/147563/