1. 2015年6月05日 10:11:53
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田中宇さんいわ曰く、 田中宇:わざとイスラム国に負ける米軍 ] 田中宇の国際ニュース解説 無料版 2015年6月4日 http://tanakanews.com/
●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円) 南シナ海の米中対決の行方 http://tanakanews.com/150601china.php 米露対決の場になるマケドニア http://tanakanews.com/150526macedonia.php 超金融緩和の長期化 http://tanakanews.com/150523bank.php ━━━━━━━━━━━━━━━━ ★わざとイスラム国に負ける米軍 ━━━━━━━━━━━━━━━━ 5月17日、米軍が指導するイラク政府軍の約1万人の部隊が、イラク中部 のスンニ派の都市ラマディで、自分らの10分の1しかいない千人程度の過激 派テロ組織「イスラム国」(ISIS)と戦って敗北、敗走し、ラマディは ISISの手に落ちた。米国とイラクにとって、昨年6月のモスル陥落以来の 大敗北だ。イラク軍は装甲車大砲など大量の兵器を置いて敗走し、それらの兵器 はすべてISISのものになった。ラマディは、首都バグダッドから130キ ロしか離れていない。東進を続けるISISは、イラクを危機に陥れている。 http://news.antiwar.com/2015/05/19/iraqi-troops-abandon-tanks-artillery-to-isis-in-ramadi-loss/ Iraqi Troops Abandon US-Made Tanks, Artillery to ISIS in Ramadi Loss http://news.antiwar.com/2015/05/21/isis-overruns-iraqi-defenses-east-of-ramadi/ ISIS Overruns Iraqi Defenses East of Ramadi http://www.presstv.ir/Detail/2015/05/26/412947/Russia-Iraq-Syria-USled-coalition-ISIL-Palmyra US-led coalition against ISIL has failed: Russia 敗北時、イラク軍には世界最強の米軍がついていた。米軍は制空権を握り、 戦闘機でいくらでもISISを空爆できた。しかし、地上で激戦のさなかの空 爆は4回しか行われず、それも市街の周辺部を小規模に空爆しただけだった。 イラク政府軍と一緒に地元のスンニ派部族の武装勢力が戦っており、米政府が 彼らに軍事支援を約束していたが、実際には何も支援せず、武装勢力は銃弾を ブラックマーケットで自腹で買わざるを得ず、十分に戦えなかった。米軍が諜 報を担当していたが情報収集に大きな漏れがあり、イラク軍は後方の集落に隠 れていたISISの部隊に不意撃ちされ、総崩れになった。「砂嵐なので米軍 機が援護空爆できない」という間違った情報が流され、イラク軍が敗走を余儀 なくされた。 http://www.washingtonpost.com/world/middle_east/chaos-in-iraqi-forces-contributed-to-islamic-states-biggest-win-this-year/2015/05/22/cf4e000e-ffd4-11e4-8c77-bf274685e1df_story.html Chaos in Iraqi forces contributed to Islamic State's biggest win this year http://www.mcclatchydc.com/2015/05/17/266937/islamic-state-routs-last-elite.html Elite Iraqi units abandon Ramadi in biggest Islamic State win since Mosul ラマディの敗北後、カーター国防長官はテレビ番組で「イラク軍は戦意が欠 けていた。自分たちよりずっと少数の敵の前から逃亡した」と発言した。米軍 自身の諜報的なやる気のなさを棚上げしたこの発言に、イラクのアバディ首相 は「(カーターは)間違った情報を与えられている」と逆非難した。イラク政 府高官は「すぐ近くの空軍基地(Al-Asad)に米軍機がたくさんいたのに出撃 せず、米軍はイラク軍を助けなかった」と言っている。 http://www.haaretz.com/news/middle-east/1.657907 U.S. defense chief says Iraqis lacked will in fight against ISIS as Palmyra massacres emerge http://www.rawstory.com/2015/05/iraq-prime-minister-rebuts-pentagon-chief-he-was-fed-with-the-wrong-information/ Iraq prime minister rebuts Pentagon chief: `He was fed with the wrong information' 米軍はISISとの戦いにおいて、どこを空爆したら良いかという情報が欠 如している。必死に収集しているが情報がないのではなく、集める気がない感 じだ。イラクとシリアで、米軍機は出撃しても4分の3が空爆せず帰還してい る。今年1−4月で爆撃機が7319回出撃したが、空爆を実行したのは 1859回だけだった。どこを空爆したら良いかわからないのだという。 http://www.presstv.ir/Detail/2015/06/01/413853/US-bombers-hold-fire-Iraq-Syria-ISIL- US bombers hold fire in Iraq, Syria due to lack of intel http://www.zerohedge.com/news/2015-05-19/obamas-strategy-against-isis-ruins "Obama's Strategy Against ISIS Is In Ruins" ISISはシリア北部の町ラッカに本拠地があり、米軍はラッカのどこに ISISの施設があるか知っていたが、それを空爆せず温存してやっている。 ラッカからイラクへの幹線国道を空爆すれば、ISISがシリアからイラクに 軍勢や武器を移動できなくなるのに、米軍はそれもやっていない。米軍は、いく らでもISIS空爆できるのにそれをせず、自由に活動させている。昨年6月、 米軍とイラク軍は第2の都市モスルをISISに奪われたが、この際、米国が イラクに与えた2300台の装甲車が残置され、ISISの手に渡っている。 米国がISISに装甲車をあげて支援した構図になっている。 http://www.presstv.ir/Detail/2015/05/26/412952/US-airstrikes-highprofile-ISIL-targets-Syria-Iraq- US intentionally holding back attacks on obvious key ISIL targets in Syria, Iraq: Report http://www.zerohedge.com/news/2015-05-31/how-us-indirectly-armed-isis-over-2300-humvees How The US Indirectly Armed ISIS With Over 2,300 Humvees 以前からの私の読者は、米軍がわざとISISを空爆せず、意図的に兵器を ISISに与えることを知っても、特に驚かないだろう。イラク軍がISIS と戦っている目の前で、米軍のヘリコプターが袋に詰めた武器や食料をISIS の陣地に投下して支援していたことについて、以前の記事に書いた。米軍は、 ISISを支援するだけでなく、イラク軍のISIS攻略作戦の中身を事前 に公開し、攻略を妨害したりもしている。 http://tanakanews.com/150308isis.php ◆露呈するISISのインチキさ http://tanakanews.com/150303terror.htm テロ戦争を再燃させる http://tanakanews.com/150222isis.htm ISISと米イスラエルのつながり 5月18日、米国の政府監視団体(Judicial Watch)が、2012年に国防 総省の諜報部DIAが作成した秘密報告書を、裁判を通じて入手したとして発 表した。そこには、米当局が12年の段階でISISの台頭を予測し、ISIS は米国の敵でなく、アサド政権やイランなど米国の敵と戦ってくれる支援すべ き資産だと分析していたことが書かれていた。14年にISISがモスルを 陥落して突然台頭したとき、米政府は驚愕してみせたが、それは演技だったこ とが判明した。 http://levantreport.com/2015/05/19/2012-defense-intelligence-agency-document-west-will-facilitate-rise-of-islamic-state-in-order-to-isolate-the-syrian-regime/ 2012 Defense Intelligence Agency document: West will facilitate rise of Islamic State "in order to isolate the Syrian regime" http://www.jacobinmag.com/2015/06/isis-syria-assad-iraq-benghazi/ How the US Helped ISIS http://govtslaves.info/secret-pentagon-report-reveals-west-saw-isis-as-strategic-asset/ Secret Pentagon report reveals West saw ISIS as strategic asset 米政府は、ラマディの大敗北に、超然としている。まるで、意図的に大事な 軍事情報の収集を行わず、わざと負けたかのようだ。米政府は、自分たちのせ いでISISに負けてイラクが危険になっているのに「米国はイラクの安全に 責任を持たない」と表明している。イラク政府は、自国の安全を守るための ISISとの戦いで、米国に頼れなくなっている。米国に頼れないとなると、 隣国イランに頼るしかない。 http://news.antiwar.com/2015/05/18/us-downplays-setback-in-loss-of-ramadi-to-isis/ US Downplays `Setback' in Loss of Ramadi to ISIS http://www.foxnews.com/politics/2015/05/28/white-house-isis-strategy/ White House: US won't be 'responsible' for 'security situation' in Iraq ラマディ陥落後、ISISがバグダッドに侵攻するのを防ぐため、ラマディ とバグダッドの間にあるアンバール州のハッバーニヤの町に、3千人のシーア 派民兵団が急いで展開した。シーア派民兵団は、イランから軍司令官が派遣さ れ、イランの傘下で訓練されており、イラク政府軍より強い。シーア派民兵団 を、スンニ派の地域であるアンバール州に入れると、シーアとスンニの抗争を 扇動しかねないので、イラクとイランの政府は、シーア派民兵をラマディなど アンバール州の戦闘に参加させていなかった。イラク軍を指揮する米軍と、シ ーア民兵を指揮するイラン軍(革命防衛隊)が敵どうしということもある。し かし米軍は今回、シーア民兵のアンバール州への展開を認めた。 http://news.antiwar.com/2015/05/18/shiite-militias-scramble-to-challenge-isis-capture-of-ramadi/ Shi'ite Militias Scramble to Challenge ISIS Capture of Ramadi http://www.haaretz.com/news/middle-east/.premium-1.657102 For ISIS, it's still a very long way to Baghdad http://thehill.com/policy/defense/242419-pentagon-isis-strategy-working-despite-fall-of-ramadi Pentagon to accept help from Shia militias in Iraq http://www.ft.com/cms/s/0/cd18389c-ffcd-11e4-bc30-00144feabdc0.html Isis advance blows hole in Obama's Iraq strategy 米軍がISISと戦うふりをして支援し、イラク軍を助けるふりをして妨害 する以前からの状況が続くほど、イラク政府は米国に不信感を抱き、本気で ISISと戦うイランを頼る傾向を強める。それがオバマ政権の意図であると、 私は以前から分析してきた。 http://tanakanews.com/150420iran.php ◆イランとオバマとプーチンの勝利 http://tanakanews.com/150406iran.php ◆イラン核問題の解決 http://tanakanews.com/150517coldwar.php ◆負けるためにやる露中イランとの新冷戦 http://tanakanews.com/150325mideast.php ◆続くイスラエルとイランの善悪逆転 イラク政府が米国に頼るのをあきらめてイランに頼る傾向を強めたとみるや、 米国はイラク政府に対して新たな意地悪をしてきた。米国には、武器支援する のは各国の政府だけで、政府を持たない武装勢力を支援してはならないとの 法律がある。この法律のため、米国はこれまで、シーア派、スンニ派、クルド 人の3派にわかれているイラクのうち、シーア派主導のイラク政府だけしか軍 事支援できず、米国からスンニ派やクルド人への軍事支援は、いったんイラク 政府に支援を渡し、それを分配してもらう方式にしていた。 http://news.antiwar.com/2015/04/28/splitting-iraq-us-military-bill-would-redefine-kurds-sunni-militias-as-separate-country/ Splitting Iraq: US Military Bill Would Redefine Kurds, Sunni Militias as Separate Country しかし3派はそれぞれ仲が悪いので、イラク政府は米国からもらった武器や 資金をスンニ派やクルド人に分配したがらない。そこで米議会は4月末から、 イラクをシーア、スンニ、クルドの3つの国に見立て、それぞれに直接軍事支 援できるようにすることを検討し始めた。これは、イスラエルが以前から熱望 していた「3分割によるイラク弱体化・内戦化」の策だ。 http://rinf.com/alt-news/editorials/obamas-latest-scam-the-splitting-of-iraq/ Obama's latest scam: The splitting of Iraq これにはイラク政府やシーア派民兵団が猛反発し、米国が3分割を撤回しな いなら、シーア派民兵団がイランとの結びつきを強め、政府軍に取って代わる ことも辞さないと言い出した。オバマ政権は、イスラエルの言いなりになるこ とで、イスラエルの仇敵であるイランの傘下にイラクを押しやっている。米国 の上層部は、イランを敵視する軍産イスラエル複合体と、イランを敵視するふ りをして強化してやることで軍産イスラエルを無力化したいオバマとの暗闘が 続いている。 http://news.antiwar.com/2015/04/29/key-iraq-cleric-threatens-us-over-plans-to-declare-sunnis-kurds-countries/ Key Iraq Cleric Threatens US Over Plans to Declare Sunnis, Kurds `Countries' http://tanakanews.com/150406iran.php ◆イラン核問題の解決 ISISによって国家が危機に陥っている状況は、イラクよりシリアの方が 深刻だ。5月20日、ISISがシリア中部の古代遺跡の町パルミラを占領し た。これにより、ISISはシリアの国土の半分以上を乗っ取った。次はシリ ア第3の都市ホムスに侵攻するのでないかと懸念されている。ホムスが取られ ると、残るはアサド大統領がいる首都ダマスカスの攻略になる。 http://www.theguardian.com/world/2015/may/21/isis-palmyra-syria-islamic-state Isis 'controls 50% of Syria' after seizing historic city of Palmyra http://www.haaretz.com/misc/article-print-page//.premium-1.657934 Homs in Syria is likely to be ISIS's next great temptation シリアに関して米国は表向き「反アサド・反ISIS」で「穏健派のシリア 反政府勢力」を支援してアサドとISISの両方に立ち向かわせる戦略だ。米 政府は昨年から「穏健派」に対する資金援助や軍事訓練を行っている。しかし 実際には、シリアで実際に戦闘する反政府勢力の諸派の中に「穏健派」などい ない。ISISかアルカイダに属する過激派ばかりだ。米政府は存在しない組 織を支援している。米政府の支援は、穏健派でなく、穏健派のふりをした ISISやアルカイダに対して行われている。 http://www.presstv.ir/Detail/2015/05/29/413423/US-train-moderate-militants-Syria- US arming `nonexistent groups' in Syria: Expert http://tanakanews.com/140924isis.php 敵としてイスラム国を作って戦争する米国 http://tanakanews.com/141015isis.php イスラム国はアルカイダのブランド再編 ISISは、シリアの対トルコ国境沿いの地域でも伸張している。この地域 では、トルコの諜報機関がISISを支援している。トルコは、表向きイラン と仲良くする一方で、イランが支援するアサド政権と戦うISISを助け、米 軍によるISISへの隠然支援に協力し、自国の周辺でイランが台頭すること を防ごうとしている。シリア・トルコ国境をISISが支配すると、トルコに よる支援が増加してISISが強化され、アサド政権が窮地に陥る。 http://news.antiwar.com/2015/05/31/isis-routs-rivals-seizing-key-towns-along-syria-turkey-border/ ISIS Routs Rivals, Seizing Key Towns Along Syria-Turkey Border 米国の軍産複合体を牛耳るイスラエルにとって、ISISは便利な道具だ。 イスラエルは、米国の覇権が崩壊しつつあり、米国がいずれ中東支配をやめて 出ていくことを知っている。その時、中東でISISが「活躍」し、アサド政 権が倒されてシリアが無政府状態の混乱に陥り、そのころには核兵器開発の濡 れ衣を解かれているであろうイランや、その傘下のレバノンのヒズボラが ISISとの恒久的な戦いで消耗して台頭を抑止されている状態が、イスラエ ルにとって好ましい。スンニ過激派のISISが「活躍」する限り、中東でス ンニとシーアの殺し合いが続き、イスラム世界は混乱し続け、イスラエルに対 抗できる力を持てない。 http://www.ft.com/intl/cms/s/0/11402b44-02ce-11e5-b31d-00144feabdc0.html Iran commander warns of Isis threat to its security 6月末の交渉期限後、イランが核問題での制裁を国連やEUから解除される と、イランは急速に財力を復活させ、軍資金が決定的に足りないアサド政権を 力強くテコ入れし、ISISを倒しかねない。だから軍産イスラエルとしては、 7月にイランが制裁解除される前に、ISISにアサド政権を潰すメドをつ けてもらいたい。5月にISISがイラクとシリアの両方で急に強くなった背 景に、米国の中東撤退を見据えたイスラエルの策略が存在している。 http://www.haaretz.com/news/middle-east/.premium-1.657117 Forget Ramadi, the real battle is in Syria http://www.dw.de/german-business-looks-to-post-sanctions-iran-boom/a-18462208 German business looks to post-sanctions Iran boom 最近、6月末を前にして、ISISやアルカイダが、アサドのシリア政府軍 や、政府軍を支援するヒズボラ(レバノンのシーア派武装勢力、イラン傘下) に、シリア各地で猛攻撃をかけている。政府軍やヒズボラは、これまでになく 疲弊していると報じられている(イスラエルの情報だが)。 http://www.haaretz.com/news/diplomacy-defense/.premium-1.659536 Top Israeli officer: Syrian army in worst state since start of civil war http://www.dailystar.com.lb/News/Lebanon-News/2015/May-19/298533-lebanon-army-shells-militants-as-nusra-isis-clash-on-northeast-border.ashx Lebanon Army shells militants as Nusra, ISIS clash on northeast border http://news.antiwar.com/2015/05/11/assads-loss-could-be-isiss-gain-us-officials-warn/ Assad's Loss Could Be ISIS's Gain, US Officials Warn シリア沿岸部の町ラタキアは、アサド家の出身地に近いので政府軍の力が比 較的強いが、それでも最近、ラタキアに駐留するロシア政府の顧問団のうち約 100人が撤退した。ロシア海軍は、ラタキアの近くのタルトス港を東地中海 の重要拠点(補給所)として借りている。ロシアは、イランに次ぐシリアの重 要な味方だ。撤退の理由は発表されていないが、ISISがシリア中部のパル ミラから西部のホムス、沿岸部のラタキアへと侵攻してくる可能性があり、ラ タキアですら危険になっていると考えられる。6月中にアサド政権が崩壊する 可能性がある。 http://news.antiwar.com/2015/05/31/russia-scales-back-aid-to-syrian-govt-withdraws-key-personnel Russia Scales Back Aid to Syrian Govt, Withdraws Key Personnel 中東ではイラクとシリアだけでなく、リビアやアフガニスタン、イエメンな どでもISISに忠誠を誓うイスラム過激派テロ組織が活動している。シリア でアサド政権が消滅してISISが勝つと、ISISの影響力が中東全域で強 くなり、イスラエルが好む中東イスラム世界の長期的な内戦化・弱体化が起こ る。そうなれば、たとえ米国が中東から撤退しても、イスラエルは何とかやっ ていける。 http://news.antiwar.com/2015/05/31/isis-gains-ground-against-tripoli-govt-in-libya/ ISIS Gains Ground Against Tripoli Govt in Libya イスラエルは、ゴラン高原越しに、シリアのアルカイダ(ヌスラ戦線)を支 援している。ヌスラ戦線の指導者(Abu Mohammad al-Golani)は最近、米欧の テレビのインタビューに出演するなど、米欧に自分たちをテロリストでなく正 当なシリア反政府勢力として認めさせようとすることに力を入れている。ヌス ラ戦線は、アサド政権が倒れた後のシリアの政権をとって国際承認されること をめざしているのだろう(その場合ISISとヌスラ戦線が裏で談合する)。 これはおそらくイスラエルの差し金だ。 http://www.dailystar.com.lb/News/Middle-East/2015/May-29/299652-nusra-front-seeks-image-makeover-in-west.ashx Nusra Front seeks image makeover in West http://tanakanews.com/150222isis.htm ISISと米イスラエルのつながり イスラエルは最近、米国の中東撤退後を見据えた戦略の一つとしてサウジア ラビアに接近している。サウジが米国でなくイスラエルから兵器を買うよう仕 向け、イスラエルの国庫を潤すとともに、スンニ派の盟主サウジとシーア派の 盟主イランが恒久対立してイスラム世界が自滅する構図を作るのが狙いだ。イ スラエルは、サウジのイエメン侵攻時に戦闘機を派遣したと言われているし、 フーシ派に占拠されたイエメンのサウジ大使館にイスラエルの武器が貯蔵され ていたことも暴露された。イスラエルは、自国の迎撃ミサイル(Iron Dome) をサウジに売り込んだりもしている。 http://www.haaretz.com/news/middle-east/1.658899 Israeli arms found in Saudi embassy in Yemen http://www.timesofisrael.com/saudi-arabia-rejected-israeli-offer-of-iron-dome/ Saudi Arabia `rejects Israeli offer to supply Iron Dome' http://tanakanews.com/150331yemen.php ◆米国に相談せずイエメンを空爆したサウジ 軍産イスラエルは、ISISと戦うふりをして支援したりわざと負けたりす ることで、ISISがアサドを倒してシリアを恒久内戦に陥れ、イスラエルの 仇敵であるレバノンのヒズボラを弱体化し、イラクで東進するISISがイラ ンに戦いを挑む構図を作りたい。イラクにおいて、ISISが首都バグダッド やナジャフなど聖地を攻撃したり、対イラン国境に迫った場合、イランは正規 軍を越境出動させてISISと戦うと表明している。シリアでは、イランが制 裁解除後の自国の資金増を見越し、資金難のシリアを助けようと与信枠を増や しているが、間に合うかどうかわからない。ISISとイランとの戦いは勝敗 の分岐点にいる。 http://www.middleeasteye.net/columns/battling-isis-iran-iraq-war-redux-1538117706 Battling ISIS: Iran-Iraq War Redux http://www.presstv.ir/Detail/2015/05/30/413581/iran-shamkhani-iraq-takfiris Shamkhani talks on Iran's red lines on ISIL http://www.haaretz.com/news/middle-east/middle-east-updates/1.657139 Iran extends new credit line to Syria 現時点で、ISISを倒せるのはイランしかいない。米国やトルコはISIS の隠れた味方で、EUもその陣営だ。ロシアや中国はイランやシリアに加勢 するが、イランが弱体化すると終わりだ。イランが負けてISISが台頭する と、中東がこの先ずっと混乱する。米単独覇権崩壊後の今後の世界は多極型で 自分たちのものだと考えているロシアや中国は、ISISの台頭を好まず、イ ランを勝たせようとする策を強めている。ロシアはイランの軍事力を強化して やっている。 http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4661222,00.html Iran declares 'successful' end of negotiations with Russia on S-300 system http://www.wsj.com/articles/rise-of-the-regional-hegemons-1432592429 Russia, Iran and China are advancing as the U.S. retreats 中国は、イラン原油の最大の買い手だ。中国イラン間の石油代金決済はこれ まで物々交換(中国は日用品などイランが買いたい工業製品を出す)だったが、 最近、決済の一部を現金で出すことにした。これは、イランがシリアやヒズボ ラを支援する資金を必要とすることと関係していそうだ。 http://www.presstv.ir/Detail/2015/06/01/413794/Iran-china-trade-oil-money-asgarowladi Iran, China agree on new oil payments イランは、中露と中央アジア諸国が作るゆるやかな安保体制「上海協力機構」 に加盟したがっている。上海機構に入れば、イランが中露に守られつつ米イス ラエルに対抗できる傾向が増す。7月9日にロシアのウラル南部の町ウファで 開催予定の今年の上海機構のサミットに、イランが高官を派遣することが決ま った。早ければ、その時にイランの上海機構への加盟が話し合われる。ISIS がアサドを倒して中東をイスラエル好みにさらに混乱させるのか、中露がイラ ンを支援強化してアサドを守るのか、世界の覇権構造の転換と相まって、中東 は分岐点にいる。 http://tass.ru/en/world/796325 Iran's top leaders to take part in SCO summit in Russia - ambassador イラン国内では「制裁解除後に入ってくる巨額資金を、シリアやヒズボラの 支援に回さず、国民生活の向上にあててくれ」という主張が出ている。対照的 に、イランの軍部は、シリアやヒズボラを支援するため軍事費の3割増を求め ている。イラン国内の論争も激化している。 http://english.alarabiya.net/en/perspective/analysis/2015/05/25/Iran-will-need-to-spend-most-of-any-post-sanctions-windfall-at-home.html Iran will need to spend most of any post-sanctions windfall at home http://www.dailystar.com.lb/News/Middle-East/2015/May-25/299192-iran-general-army-needs-more-funds-to-counter-isis.ashx Iran general: Army needs more funds to counter ISIS この記事はウェブサイトにも載せました。 http://tanakanews.com/150604isis.htm ●最近の田中宇プラス(購読料は半年3000円) ◆南シナ海の米中対決の行方 http://tanakanews.com/150601china.php 【2015年6月1日】ASEAN諸国は、米国にけしかけられても中国敵視 を強めたがらない。中国はAIIBやシルクロード構想で、ASEAN諸国の インフラ整備への投資を増額している。アジアの貿易決済で最も良く使われて いる通貨は、いまや人民元だ(シェア31%、円は23%)。この3年間でア ジアの人民元の国際利用は3倍になり、日本円を抜いてアジアの国際決済で最 も使われている通貨になっている。中国のアジアでの経済覇権の拡大が、今後 さらに強まることはほぼ確実だ。南シナ海紛争で、ASEANが団結して中国 と対決することは、今後ますますなくなるだろう。ASEANをけしかけて中 国と対決させたい米国の策略は、すでに破綻している。 ◆米露対決の場になるマケドニア http://tanakanews.com/150526macedonia.php 【2015年5月26日】 米国勢が扇動するマケドニアの政権転覆策は、米 国と露中との地政学的な陣取り合戦を超えた、バルカン諸国を民族間の殺し合 いや政治混乱に陥れる危険をはらんでいる。諸民族が殺し合った98年のコソ ボ紛争の再燃があり得る。マケドニアの混乱に乗じて、アルバニアの首相が 「いずれコソボを併合する」と大アルバニア主義を示唆する発言を放ち、セル ビアが猛反発し、EUはうろたえている。 ◆超金融緩和の長期化 http://tanakanews.com/150523bank.php 【2015年5月23日】 QEなどでゼロ金利状態が続くと、預金と融資の 金利差で儲けてきた銀行業全体が薄利となり、経営が行き詰まる。今の超緩和 策を縮小すると「テーパー・タントラム」で金融危機が起きて銀行が「突然死」 的に潰れるが、超緩和策を持続すると、銀行を経営難によって業界ごと「緩慢 な死」に追いやることになる。
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