11. 2015年3月09日 21:38:36
: Sxu31t1c0I
メディア・野党VS国民世論「IS(自称「イスラム国」)」をめぐる出来事は、我々日本国民にも、中東情勢だけでなく、世界を見る目が一変するような衝撃を与えたことは言うまでもない。そんな中で私が少なからず失望したのは、事件を連日報じ続けた日本のメディアに登場する何人かの中東専門家たちの解説であった。曰く、「日本は中東で”手が汚れていない”のに、安倍首相の中東訪問によって、あるいはいわゆる有志連合への関与によって日本は欧米側に付いたのだとイスラム世界を失望させたことが、邦人拘束・殺害事件の背景にある」「欧米諸国が中東地域を好き勝手に帝国主義的に切り刻み、抑圧してきたことへのイスラム圏世界の怒りが、過激なテロの温床となっている」 果たして彼らは、イスラム社会をも含む国際社会が「IS壊滅」へと団結し始めた現状を理解しているのだろうか。加えて、国際社会が、日本の立ち位置をどう見るかという問題を考えたことがあるのだろうか。 失望させられたのは、一部の中東専門家やそれを垂れ流した日本のメディアだけではない。後藤さん殺害が報じられた直後の通常国会の予算委員会では、そうした中東専門家やメディアに感化されたかのように、野党から「安倍首相の中東訪問と2億ドルの人道支援表明がISを刺激して人質殺害につながった」といった首相批判が繰り返されたのである。現代世界の本質、あるいはこの20年余りにわたって世界を席巻しつつある大きな流れにどう向き合うかという定見を持たず、メディアに迎合するしかない浅薄で知的・精神的に貧困な日本の野党政治家たちの醜態であった。 対照的に、政府の対応を冷静に見ていたのは国民世論である。読売新聞社が後藤さん殺害映像公開後の2015年2月6−7日に行った全国世論調査では、安倍内閣の支持率は58%で、前回1月9−11日の調査から5%上昇し、不支持率は4%低下して34%であった。調査ではIS事件への政府の対応の評価も尋ねていて、55%が日本政府の対応は適切だったと答えている。それに対して、「そうは思わない」は32%であった。また安倍首相は後藤さん殺害が伝えられた直後、中東諸国への人道支援をさらに拡充するという方針を発表したが、読売の調査では、この方針に賛成が63%、反対が26%であった。 これらの数値が示しているのは、読売新聞も分析しているように、人質事件に対する政府の対応への評価が内閣支持率を押し上げた、ということである。実際、同時期の2月6−8日に行われたNHKの世論調査でも、安倍内閣の支持率は54%と前月の調査より4%アップしている。 読売新聞の調査項目にもあった後藤さん殺害映像公開後の中東支援拡充方針を表明した安倍首相は、テロには屈しないという毅然とした姿勢を世界に示した。このことは、欧米における安倍首相とその政策に対する評価の一層の高まりにも結びついている。だが、こうした報道を見る限り、日本ではメディアは安倍首相の対応の意味を理解せず、国民世論はメディアの先を行っており、比較的高く評価しているという、不思議な状況が出現していることが分かる。 この国民世論の成熟ぶりは、読売新聞の調査の他項目の結果からもうかがえた。今回、ISに拘束された2人の邦人にとっては悲劇的な結末となったが、このような事態で「最終的な責任本人にあるという意見」について、83%が「そう思う」と答え、「そう思わない」の11%を大きく上回ったのである。 今回のような事件が起きた時、現在50歳後半〜60代以上の日本人なら、1977年の日本赤軍によるダッカ日本航空機ハイジャック事件を反射的に思い出すであろう。あの時、日本政府はテロ犯の脅迫に屈し、要求されるがまま身代金の支払いや獄中の左翼過激派メンバーの釈放という国家としての存在意義を放棄するような超法規的措置をとり、世界から嘲笑されたのである。この事件の直後から、北朝鮮による、横田めぐみさんを含む多数の日本人拉致が激化していったのである。テロに屈した時の大いなる危うさを示すものと言えよう。 一方、今回の事態への政府の対応、それに対する国民世論の評価を見ると、テロとは毅然と戦うしかないことを理解する国際国家・日本にふさわしい国民が育ち、国家としての毅然とした対応を望んでいることが分かる。これは、国家も国民も平和ボケしていた38年前と比べると、画期的変化だと言っていいであろう。そして、この変化の底流には、日本という国家と国民に今、一層大きな脅威が迫っているという危機感があることは間違いない。
|