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吉林華橋外国語学院の張鶴達さんは「無関心のウイルス」をなくしていくことで日中関係を改善することができると考えている。
日本人と中国人は、「無関心のウイルス」に感染している―中国人学生
http://www.recordchina.co.jp/a125598.html
2016年1月5日(火) 17時30分
「日本と中国は、互いの良い面を見ようとしていない」。こう主張するのは、吉林華橋外国語学院の張鶴達さん。張さんは、このような現象を「無関心のウイルス」と表現し、これをなくしていくことで日中関係を改善することができると考えている。
突然、電車の中の男性が立ち上がり、大声で叫びました。「皆さん、すみません。いま長春に初めて来る妹を迎えに行くところなんですが、あいにく、携帯の電池が切れ、連絡が取れません。誰か携帯を貸して下さいませんか。連絡が取れないので本当に妹が心配なんです」。
周りの人たちは知らん顔をしています。男性は顔を赤くして、さらに大声で「お願いします」と叫びました。彼はキョロキョロ見回し、「はい、どうぞ」と言われるのを期待しました。しかし、周りの人たちが何もしようとしないのを見て、呆然とまた席に座り込んでしまいました。遠く離れたこの男性に「どうぞ」と自分の携帯を渡すのを躊躇する自分。電車が長春駅に着くなり、男性は人込みをかきわけて外へ飛び出して行きました。彼の後ろ姿を見て、つらい後味だけが残りました。
帰りの電車の中、本を読んだり音楽を聞いたり、乗客は自分の世界を楽しんでいます。さっきのことを思い出して、「なんで助けてあげなかったのか、人が困っていたのに」と考えていると、「すみません」と、たくさんの荷物を持った老人が乗り込んできました。今度はためらうことなく立ち上がろうとしました。
ところがその時、「ここは俺の席だ。誰も座らせちゃいけないぞ」「いや、彼に譲ってあげようじゃないか」「いや、他人のことはどうでもいい。俺とは関係ない」という自分の心と身体の会話が聞こえてきたのです。ショックでした。まさか、私もあのウイルスに感染していたとは。その時、隣の男性がさっと立ちあがり、「どうぞ」と席を譲りました。すると、さらにその隣の女性も立ち上がり、荷物を持ってあげたのです。老人は、ああ助かったとばかりに微笑みました。席を譲った人たちも微笑みました。それを見た周りの人たちにも笑顔が広がっていきました。
実は、私が感染していたのは無関心というウイルスです。感染した人には、自分の利益ばかりを考えて、他人を助ける意欲が無くなるという病状が出ます。つまりこのウイルスに感染すると、人々の信頼関係が悪化するわけです。一方、隣の席の人が持っていたのは善意のウイルスです。このウイルスは周りに笑顔を伝染させていくのですが、無関心のウイルスがいると、そこで死んでしまいます。
さて、今年、日中関係正常化40周年を迎えることになります。80年代のラブラブ時代から比べると、現在、互いの国民好感度が大きく落ち込んで、無関心のウイルスが広がっているのは残念なことです。例えば、ヤンイーさんという方をご存知でしょうか。初めて日本の芥川賞を受賞した中国人ですが、残念なことに、多くの中国人はその事を知りません。一方、加藤嘉一さんという方をご存知ですか。9年前に中国に留学に来た彼は、時々評論番組に出演して、中国人の理解できる見方で日本の事情を紹介しています。中国で一番有名な日本人とされています。残念なことに、多くの日本人はその事を知りません。やはり「無関心のウイルス」のせいなのです。
大地震の時には、互いに救助部隊を送りあったり、民間人の草の根交流も増えて善意の輪も広がってきてはいます。しかし、ここでも無関心のウイルスは笑顔を殺していきます。何か事件が起こるたびに、互いに反感と憎悪を燃え上がらせるのに、普段の日本、普段の中国、あるいは良いニュースには無関心な両国民。もっと、普段の日本、普段の中国、あるいは良いニュースにも目を向けて、善意と笑顔が広がるよう、自分たちの中の無関心のウイルスをなくしていこうではありませんか。(編集/北田)
※本文は、第八回中国人の日本語作文コンクール受賞作品集「中国人がいつも大声で喋るのはなんでなのか?」(段躍中編、日本僑報社、2012年)より、張鶴達さん(吉林華橋外国語学院)の作品「ウイルスに感染した私たち」を編集したものです。文中の表現は基本的に原文のまま記載しています。なお、作文は日本僑報社の許可を得て掲載しています。
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