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最近、経済不振から日本に擦り寄っている習近平主席〔PHOTO〕gettyimages
虚勢を張る習近平が倒れる日 〜引き金になるのは「腐敗問題」だ エズラ・ヴォーゲル教授が読み解く「中国の明日」
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/46969
2015年12月23日(水) 週刊現代 :現代ビジネス
聞き手:橋爪大三郎
橋爪大三郎氏が聞き手になり、アメリカのアジア研究の権威・ヴォーゲル教授が、中国とケ小平について語り明かす——そんな新書が話題を呼んでいる。習近平と中国の近未来を教授が予言する。
■なぜ中国は崩壊しないか
——20世紀、ソ連、東欧、中国、いくつかの国で社会主義が試みられて、冷戦が終わったあと、ほとんどすべてなくなってしまいました。中国はなぜ、ポスト冷戦の時代に、解体しなかったんでしょうか。
ヴォーゲル それは、ひとつには、経済成長がものすごく速かったからですね。'80年代に、みんな生活がよくなった。
もうひとつは、阿片戦争以来、この国を統一するのがむずかしいとわかっていること。政治が乱れ国が分裂している状態では、ダメだと、誰もが骨身にしみてわかっている。多くの人びとがこのふたつを認めているから、中国共産党が支持されているのだと思うんです。
——中国の改革開放はいまのところ、政治権力の統一によって、経済の発展を推し進めるというパターンです。韓国や台湾はある段階で民主化しましたが、中国の場合、民主化しそうにない。
現代中国を理解するための必読書
ヴォーゲル この点をめぐっては、いろんな考え方があります。
われわれ西洋人が前に考えたことは、まず、産業の発展をはかり、経済成長を進める。すると、民主主義の国になり、独裁的なやり方をやめる。
中国はいままでのところ、そうなっていませんね。どうしてかと言うと、ひとつは国が大きい。統治するのは大変なので、権力が民主化して統制がとれなくなることを、人々が恐れている。
もうひとつは、指導者がなかなかの手腕を持っているので、人びとの信頼をえている。
けれども将来は、もっと民主主義の国になる可能性が大きいと、私は思います。
日本は、高度成長から低成長時代に入って、全社会が平等化した。教育水準が高いし、医療制度も充実している。
中国は、そういう条件をまだ、持っていない。今後、高度成長から低成長の時代に入ると、むずかしい問題がいっぱい出ると思うんですね。
私の目から見ると、いまの習近平はかなり、必死になっている。必死になっているので、自分は強いぞと、虚勢を張っている。心のなかは、いろいろ心配も多い。
——中国のチャレンジについて、うかがいましょう。まず、経済発展が、まだ一部に偏っているので、国全体にそれを押し広げなければならない、というのがあります。二番目に、社会保障や社会インフラの整備に、相当の投資が必要です。
ヴォーゲル その二つよりももっとむずかしい問題は、腐敗だと思います。
国民は、腐敗をやめろ、腐敗をすぐ何とかしてほしい、と思っている。ところが、腐敗を根絶しようにも、腐敗の根はあまりに深い。
指導者はいま、みんな心配しているんですね。自分もひっかかるんじゃないかと。海外へ行こうか、どこに財産を隠そうかと、気が気でない。
そういう心配があまり強くなると、習近平に対して、反感を持つ可能性がある。習近平政権も、それを恐れなければならない。しかし国民の手前、腐敗問題に手をつけて成果をあげないわけにいかない。
このバランスが崩れると、深刻な政治闘争を引き起こし、政治が乱れてしまうという心配があるのです。
それが、いま直面している一番危険なことだと、私はみています。
■10年で台湾の統一は無理
——ヴォーゲル先生が危ないっておっしゃるなら、それは相当危ない。これは、構造的な問題であって、取り除く方法が、私には思いつかないんですけれど。
ヴォーゲル 腐敗の問題は、抑えようとしているけれども、非常にむずかしい。どうにかして、腐敗をどんどん少なくさせようとすると、幹部たちは反発する……。
ケ小平〔PHOTO〕gettyimages
——習近平が、もし非常に聡明で大胆なひとだったら、中国共産党の(民主)改革を、10年以内に達成する、って宣言するでしょう。それはもう、ケ小平もできなかった、改革開放を乗り越えた、つぎの段階だと。
ヴォーゲル どうして(民主化された)香港は、あんなに乱れてしまうのか。
中国政府が心配しているのは、香港に例外を認めると、中国の別な場所も、同じことをやりたい、早くやりたい、と言い出すことではないか。それをどう抑えるか。
——わかります。香港は完全に中国がコントロールしているのに、自由な選挙なんかやらせれば、広東省がやりたいとか、遼寧省もやりたいとか。そういうことでしょう?
でもそれを逆手に取れば、香港がうまくいけば、香港で自由選挙をどうぞやってください、でも中国の一部ですよ、っていう実例ができれば、台湾に対してものすごいプレッシャーになるはずなんですよ。
ヴォーゲル ボクは、台湾の統一は、10年以内はほとんど無理だと思います。台湾では、やっぱり独立した、いまのままで、ずっといいと思っているひとが多いでしょう。
どうしたらいいか。私は、(中国国内で)まず選挙みたいなことを、実験としてやればいいと思うのです。場所をどこか決めて。
——下の村のレヴェルから順番に選挙をやる、っていうのを、一時、試行していたようでしたね。10年くらい前。でも、進んでいませんね。
ヴォーゲル あまり、進まなかった。でも、もう少しそれをやる。
もうひとつ大事なのは、腐敗問題を、きちんと法律をつくって解決する。みんなが腐敗している。でも、過去のことは過去として、罰することはしない。
けれども将来は、1年か2年以内に法律をつくって、こういうことをしたら腐敗、とはっきりさせる。そして、取り締まりを開始する。
■腐敗政治はなくならない
——ポストケ小平の指導者たちについて、順番に、コメントいただきたいと思います。
ヴォーゲル 江沢民は、'60年代、ソ連に行って、国際的な経験があった。それから、'80年代に貿易の関係の仕事もして、科学についてもよくわかっている。天安門事件のあと、外国とうまくやるために、忍耐力をもって取り組んだ。
残念ながら日本との関係では、ぎくしゃくした。
'92年に日本を訪ねたときはあまり問題がなかったけれども、'90年代後半にかけては関係がちょっと悪くなった。江沢民が、判断を間違った。
残念ですね。日本と中国は、やっぱりぶつかってしまった。
胡錦濤は、日本でたとえるなら、松下政経塾。政治家の親戚もいないし、友達もいない。そこで、共産主義青年団に入り、その道をずっと歩いてきた。
それで、胡錦濤は、ちょっと官僚タイプですね。優秀。
ただ、政治の力はあまりなかった。腐敗問題がどんどんひどくなって、国民もなんとかしてほしいと思ったのに、それほど大胆なことができなかったんですね。
彼は、よくも悪くも、いい官僚的な人間だった、という感じがしますね。
胡錦濤のあと、もう少し指導力のある人が必要だ、とみんな思った。自信のあるひとです。
習近平は、父親(習仲勲元副首相)も改革派。彼は多少、農村のこともわかっている。
地方の経験もあったし、非常に自信満々で、頭がいい。そういうひとなので、胡錦濤よりも、強いことをやれるわけですね。
——いま集団指導制と言っていいですか。それとも習近平の力が、飛び抜けて強くなっていますか。
ヴォーゲル 習近平は、わりあいに強くなった。だけどまだ、集団が決めるんですね。
習近平が、今後、権力を自分の手に集めて、もう少し強い指導者として動く可能性はあるけれども、ほかのひとが反対すれば、やりにくい。権力は、限られているんですね。
——途中で、薄煕来とか周永康とかいろんなひとを抑えていったので、対抗するひとがあまりいないようにも思うんですけれども。
ヴォーゲル それは、まだわからないですね。
——習近平が失敗して、なにか問題を起こすとすれば、いちばん大事な問題はなんでしょうね。
ヴォーゲル 腐敗ですね。みんな、自分の将来を心配しているわけですね。みんなも腐敗をやっているのだから、という言い訳は、これからは通用しないでしょう。
「週刊現代」2015年12月26日より
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