2. 2015年12月04日 09:00:52
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不動産爆買いと不正資金流入…日本を侵食し始めた中国マネーの怖さ 【第194回】 2015年12月4日 姫田小夏 [ジャーナリスト] 近年、アジアの国・エリアから、日本への不動産投資が増加の一途をたどっている。中でも中国大陸からの投資が目立つ。オフィスビル、ホテル以外にも、我々の生活に身近な住宅への投資もある。 物件によっては、外国人が占める割合が高いところもある。豊洲の某タワーマンションでは、区分所有者のうち2割が中国人だとも言われている。 中国人の不動産爆買いが始まってきた(写真は東京・豊洲のタワーマンション群) 都内の不動産業者は「都心の不動産に対する中国人の関心が非常に高まっている」と明かす。
こうした背景には、中国からの脱出を試みるヒトやカネの動きがある。 中国では、不動産価格上昇の限界がいよいよ見え始めた。中国経済も黄金期が過ぎ去り、不動産の右肩上がりもピークアウトする今、富裕層の資金は世界の不動産市場に向かい移動を始めた。 移民ブームも盛り上がる。中国では、移民国家であるアメリカ、カナダやオーストラリアに移住を希望する人々が後を絶たない。まずは子どもを留学させ、その後「子どものため」と称して不動産を購入、そして自らそこに移り住むというステップは、国外脱出のお決まりのパターンである。 中国からの不透明な資金移転に 警戒感を強める国際社会 移民国家のアメリカ、カナダやオーストラリアなどには、ここ数年、中国からの移民とともに莫大な資金が流れ込み、現地で深刻な問題を生んでいる。 ゴルフ場、ホテル、オフィスビルなどに中国マネーが投下されるカナダでは、これを「重大なリスク」と受け止めている。金融取引を分析する組織The Financial Transactions and Reports Analysis Centre of Canada(FINTRAC)は「海外の資本と個人によるカナダ不動産の購入は重大なリスクである」と断じる。 オーストラリアでも同様の警戒がある。中国人による不動産購入がここ数年で急増し、既存住宅の購入における海外資本の割合は1割に達したという。海外資本における中国マネーの比重は大きい。移民国家の宿命ともいえるが、中国人の「不動産の爆買い」に地元経済は震え上がっている。 一方、これらの国々では、近年に見る中国人の資産逃避を「中国での腐敗撲滅キャンペーンの反動」と分析しており、流出しているのは「不正な所得」であると警戒している。 アメリカでは、国際的な麻薬犯罪を取り締まる組織 Bureau for International Narcotics and Law Enforcement Affairs(BINLEA)が出した2015年の報告書で「中国は不正な資金移転の出所であり、国境を越えたマネーロンダリングを促している」と指摘した。 同じくアメリカの、不正金融の研究組織であるGlobal Financial Integrity(GFI)も「中国は不正な資金を流出させる世界一の国、2003〜2012年の間に1兆ドルにのぼる不正な資金が流出した」と見積もる。 カナダでは「金融業や不動産業などに従事する特定事業者は、1万ドル以上の現金取引や疑わしい取引きがあった場合、当局に届け出を行う」という義務がある。だが、その資金の出所がどこかなのか、その資金が不正所得なのか否かを確認することは困難だ。 また、中国では「個人による年間5万ドル以上の資金の国外持ち出しは違法」としているが、現実には法の網目をかいくぐる多様な手口で、多額の資金移転を可能にしており、その有効な対処ができないことにも手を焼いている。 カナダやオーストラリアで進む中国からの資金移転に、当局は「このままでは“マネーロンダリング天国”というレッテルが貼られてしまう」と危機感を募らせている。 日本への不動産投資が 問題化するのはこれから? 日本では、中国人による本格的な不動産投資は緒に就いたばかりだ。そのため、現段階では取引の現場に上述のような危機感はない。 日本では2007年に「犯罪収益移転防止法」の成立とともに、銀行や保険会社、不動産業などの特定業者が、顧客に「犯罪収益の隠匿」の疑いを持った場合、速やかに行政庁に届け出ることが義務づけられた。しかし、不動産業の取引現場はほとんど徹底されていない。不動産業者からの「疑わしい取引き」の届出についていえば、その受理件数は、2013年にたった1件、2014年も1件にとどまっている。 不動産会社からすれば「客商売という性格上、疑ってかかることはできない」というのが本音だ。都内のある仲介会社は「本人確認と過去に犯罪歴がないかどうかのデータベース検索をかけるのがせいぜい」だという。ましてや、中国からの不正な資金が流れ込んでいるかどうかなど、「裏のとりようがない」(同)。 一方で、中国人による日本の不動産への投資は、今後長期化するだろうという見方がある。不動産調査で知られる(株)東京カンテイ市場調査部の井出武氏は、「中国の投資家は中国での投資だけに満足しなくなった。将来的に資産を守るためにはどうポートフォリオを組むかという思考があり、当然、そこに日本を組み込むことを視野に入れている」と指摘する。 こうした状況が進展すれば、「中国での動きはこれまで以上に、日本に影響を及ぼすようになる」とも警戒する。 ましてや、日本政府が人知れず進める“移民政策”に伴い、永住権を目当てに日本移住を希望する中国人は確実に増える傾向にある。中国経済の連動を深める日本は、今後中国で起こる変動に対し、ますます無縁ではいられなくなる。 不動産の爆売買による市況混乱と 不正資金の流入に警戒を 中国では2000年代からの十数年にわたり、不動産への狂ったような投資が行われてきた。中国語で不動産投資を俗に「炒房」(ChaoFang)というが、日本語でならさしずめ「不動産の爆買い」ということになる。 もともと価格の低かった市場に投機マネーが入り込み、瞬く間にその価格を異常なほどに吊り上げた。相対的に価格が安いとされる日本の不動産市場が、中国の“爆買いと爆売り”で市況を狂わせるシナリオも否定できない。儲かると思う分野に集中し、その市場の健全さを保てなくするのが中国マネーの怖さである。 さらにそこに加わるリスクが「不正資金」の流入である。今年3月、カナダで中国食糧備蓄管理総公司(シノグレイン)の元倉庫主任だった喬建軍とその妻が、米検察により起訴された。喬は同社勤務時代に7億元を横領し、「移民詐欺」「資金移転」「マネーロンダリング」の3つの罪に問われた。彼らは二人の息子を留学させ、不動産にも手を出していた。 「海外逃亡」と「マネロン」、そして現地での「不動産購入」は、重大犯罪が問われる“富裕層”が歩む典型例でもある。中国人の不動産買いには、こうした犯罪要素が絡むケースもある。余裕を失った日本経済、とりわけ不動産業界にとっては千載一遇のチャンスだろうが、迂闊に「千客万来」などとは言えないのが実情だ。 http://diamond.jp/articles/-/82693
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