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台湾・国民党 朱氏を指名 総統選候補 巻き返し、対中政策カギ
【台北=山下和成】台湾の与党・国民党は17日、台北市内で臨時党大会を開き、来年1月の総統選挙の公認候補に朱立倫・党主席(54)を新たに指名した。従来の候補の洪秀柱・立法院副院長(国会副議長、67)は問題発言などで支持率が低迷しており、異例の交代に踏み切った。エース格の朱氏を投入して対中政策などで論戦を挑むが、残り3カ月で巻き返せるかは不透明だ。
党大会では7月に決めた洪氏の公認を取り消し、朱氏を指名した。朱氏は「足並みをそろえ、再出発しなければならない」と訴えた。洪氏も公認取り消しについて「同意できないが、受け入れざるを得ない」と述べた。当初は徹底抗戦を主張していたが、騒動が長引くことを避けた形だ。
台湾では経済面などで影響力を増す中国への警戒感が高まっている。馬英九政権と対中融和政策を推進してきた国民党は昨年11月の統一地方選で大敗した。朱氏には総統選での挽回が期待されたが、「(兼務している)新北市長の任期を全うしたい」ことを理由に出馬を否定してきた。
この結果、知名度や実力で劣る洪氏が公認候補に指名された。ただ洪氏は中国との統一を連想させるような発言を連発。従来の台湾独立志向を抑え、馬政権の対中融和政策の大枠を引き継ぐ「現状維持」を表明した最大野党・民進党の総統候補の蔡英文主席(59)に大幅なリードを許した。
国民党が残り3カ月の選挙戦でカギを握るとみるのが対中政策だ。朱氏は17日、蔡氏に対し「現状維持とは何かを議論したい」と呼びかけた。
国民党は台湾と中国は不可分という「1つの中国」の原則を認める「92年コンセンサス(合意)」を対中交流の基礎としてきた。一方、民進党はこの合意を認めていない。中国もこれを台湾との経済交流の前提にしており、蔡氏が「現状維持」を訴えても、92年コンセンサスを認めなければ、政権を奪取しても中国との関係が不安定になる可能性がある。
台湾の住民は中国の統一攻勢を警戒しつつも、安定した経済関係は続けたいとの考えが根強い。朱氏は蔡氏の曖昧さを攻撃し、より安定的な中台関係を築けるのは国民党だと訴える戦略だ。政策が近い野党・親民党の総統候補の宋楚瑜主席(73)との選挙協力も模索するとみられる。
朱立倫氏(しゅ・りつりん) 1961年桃園県(現・桃園市)生まれ。台湾大学卒、米ニューヨーク大で会計学の博士課程修了。09年に行政院副院長(副首相)、10年に新北市長、15年1月に国民党主席を兼務。
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民進党・蔡氏リード 残り3カ月
最大野党・民進党の公認候補である蔡英文主席は国民党の「敵失」も手伝い世論調査での支持率でリードを保っている。対中政策については論戦を極力避け、逃げ切りを図りたい考えだ。
台湾のケーブルテレビ大手、TVBSグループが6〜7日に実施した調査では、「蔡氏に投票する」との回答が48%だった。29%の朱氏を大きく引き離している。
蔡氏は対中政策について「多くを語りすぎても少なすぎてもいけない」と話し、「92年コンセンサス」を認めるか態度を明らかにしていない。民進党は17日の朱氏の論戦の呼びかけに「『現状維持』は大多数の人民や国際社会も認めている」と述べるにとどめた。
[日経新聞10月18日朝刊P.5]
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